挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
シャングリラ・フロンティア〜クソゲーハンター、神ゲーに挑まんとす〜 作者:硬梨菜

竜災未だ止まず、狼は吠える

しおりの位置情報を変更しました
エラーが発生しました

ブックマークしました。

設定

更新通知 0/400

設定を保存しました
エラーが発生しました

カテゴリ

ブックマークへ

以下のブックマークを解除します。
よろしければ[解除]を押してください。

ブックマークを解除しました。

225/238

放置した傷は膿み、呪う

「……っ、かぁぁぁぁぁあ〜…………」

俺とエムルによる「なんだかんだあってクターニッド殴り飛ばしてきたよ!」という報告を受けたビィラック、渾身の溜息であった。

「ワリャら、バカじゃバカじゃたぁ思うとったが……はぁぁぁぁぁあぁ………」

「んなこと言ったってなぁエムル」

「はいな、ルルイアスでもサンラクサンはいつも通りだったけど流石にこれは事故ですわ」

「……で? わちんとこ来たんなら、まぁた派手にぶっ壊したんじゃろ。見しぃや」

「七日間ぶっ通しだったからな……傑剣への憧刃(デュクスラム)以外はボロボロだ」

傑剣への憧刃は確かに俺と極めて相性のいい武器ではあるが、それにしたって100%クリティカルを出せるわけじゃない。延々とゾンビゲーのごとく半魚人や人魚を切っていればクリティカルを損なうこともあるし、リュウグウノツカイやらシャチやらアンコウやらの激戦も潜り抜けてきた。
傑剣への憧刃とクターニッド戦で派手にぶっ壊れた煌蠍の籠手(ギルタ・ブリル)以外は今にも壊れそうなぐらいに消耗している。ウィンドウを操作して俺が提示した武器を検分していたビィラックであったが、やはりというか「破損」状態になった煌蠍の籠手で盛大に顔をしかめた。

「……まぁ、あんクターニッド相手に喧嘩売ったんじゃ、死闘じゃったこたぁ分かるが、また派手に壊したのう」

「というかシステム……設計的に壊れること前提だろこれ」

「壊れるほどの出力を出すなっちゅーことじゃたわけ!」

いやいや、男なら黙って100%……いや、120%で動かしたくなるものだろう。浪漫だよ浪漫、人間の三割はそれで出来ているんだ。じゃなきゃこの世にギャンブルやゲームは存在しねぇ。

「あとは新規で武器を作って欲しい、素材なら大量にあるぞ……いやもう、本当大量に」

「ふん……そりゃ構わんが、金はあるんか?」

「この人、ルルイアスの金銀財宝根こそぎかっぱらってきたんですわ……」

「凄いぞ、城が建てれそうなくらいある」

エルクには言わないほうがいいな、しれっとボッたくられそうだ。
俺はインベントリアから素材を取り出す、素材を取り出す、素材を取り出す、素材を取り出す、素材を取り出す、素材を取り出す、素材を取り出す、素材を取り出す、素材を取り出す、素材を取り出す、そざざざざざざざざ「待て待て待て待てぇ!!」

「おどりゃ待たんかい!」

「まだあるぞ」

「どんだけ戦っとるんじゃワリャは……」

人間には……いや、生き物には「不安になる数」がある。具体的に言うとモンスターの素材とかで「これで武器や防具作りたいけど数足りるかな? もっと集めたほうがいいかな?」となるアレだ。コレクター精神とも違う、ハクスラというカテゴリにおける宿命、製作時に定められた全武具を作成するために必要な数を「最低限」として、それを集めるまでプレイヤーはスローターと同義だ。
例えば売却時の値段が美味しい素材を落とす敵がいたなら、おそらくゲームを棚に並べて気がむくまで再び開かないその時まで乱獲され続けるだろう。そして、七日間しかいられない場所で手に入る素材があるのならば全力で稼ぐ……それがゲーマーの(サガ)なのだ。

「こがいな時は手順を逆にするんじゃ。ワリャはどがいな武器が欲しい? 言うてみぃ」

「どんな……か」

とりあえず頭防具と腰防具を更新するとして……また双剣を作るのも悪くはない。悪くはないがどうせなら別武器を使ってみたくもある。とはいえスキル的に今からハンマーや槍を使ってもしょうもないし……そうだな。

「頭と腰の防具と……拳武器、片手剣、そして……盾。」

「盾?」

なるほど、今の俺の武器のほとんどを作ったビィラックからすれば不思議かもしれないな。(サンラク)というキャラクターのステータスは今や完全回避特化、なにせクターニッド戦までガードしても死ぬような状態だったからな。ステータス反転アイテムを手に入れたことで条件付きで耐久力を得ることができるようにもなったが、そんなものは結局のところ大した意味はない。
このゲームが「スキル」と「魔法」という二つのシステムを備えている時点で、装備品で着飾りプレイヤースキルで補ったところでスキルや魔法にまで妥協しなかった本職には遠く及ばない。

例えばSF-Zooにいた機動力を完全に犠牲にするという代償の代わりに、リュカオーン相手に後衛を守りきったタンクのプレイヤー達……あれこそがタンクの鑑だ。万能型とは聞こえこそいいがそれは敵に対して圧倒的に上位の強さがあってこその呼び方、同等かそれ以下なら世間一般ではそれを器用貧乏と言う。
であれば回避と立ち回りに特化した俺が盾を持つことは妥協ではないのか? どちらにせよ半裸なのに無理に盾を持つ必要があるのか?

うるせーばか、使いたいから使うんだよ。

というか何もタワーシールドが欲しいわけじゃない、最近はやけにデカいモンスターとばかり戦っていたせいで回避ばかりに特化していたが、俺は別にパリィが苦手というわけではないのだ。片手で構えて剣や槍を弾ける程度の大きさの盾であれば(サンラク)とは矛盾しない、斬らない剣(・・・・・)として成立する。
世の中にはタワーシールドを二つ持って絶対防御! と遊ぶやつだっている。具体的には別ゲーで暇を持て余した俺だったりするが盾は盾で使ってて楽しいのだ。こう、持ち方を少し変えれば鉄板型の拳になるし……

「わぁったわぁった、ワリャのツラ見りゃ大体言いたいことは分かるわ」

「え、何も言ってないんだけど」

「「うだうだ言うな、使いこなせるけぇ早う作ってくれ」と顔が言うちょるわ」

いや、ね。NPC武器屋がぐちぐち言うなよとはちょっと思いました、はい。

「ん、兜に腰帯……拳帯、片手剣、盾か。じゃったらこれと、これ、これ……あとこれじゃな」

ひょいひょいと山盛りの素材の中からいくつかを持ち出していくビィラックであったが、ふととあるアイテムを見て動きを止める。

「……ははぁ、「盾が欲しい」たぁこがいなことか」

「……バレたか」

「ここまで見事な素材を見りゃあ、わちだって盾を作りとうなるわ」

冥王鯱の照鏡骨……アトランティクス・レプノルカがビームを撃つ際にレンズとして用いる透明な円盤型をした頭蓋の一部、この素材を武器防具にするならば盾以外に選択肢はないだろう。

金晶独蠍ゴールディ・スコーピオンと同等の強い力を感じるけぇ……」

「だろうな、友達が助けてくれなきゃ俺も食われてた」

「あの魚臭い人ですわ?」

「アラバな」

ルルイアスにおいて空中を泳げるアタッカーという時点でクソ強かった……生息圏が噛み合わないがいつかこのゲームを引退する前にもう一度会っておきたいもんだ。だがどうにも「改宗(コンバージョン)」というシステムがそこらへんに絡んできそうなんだが、そうだった場合問題があるんだよなぁ。

「やはりリュカオーンを倒さずして俺は前へ進めないのか……」

やつに刻まれた「刻傷」、それまでの「呪い(マーキング)」の発展系とも言える厄介さを持つがここにきて最初確認した時に後回しにしていた制限が効いてきた。

───「改宗(コンバーション)」の封印。京ティメットを見る限り、改宗とは後天的なキャラメイクだ。
恐らく「人族」とつく種族にアバターを変更することができる。京ティメットの言い方だと獣系だと単純な筋力増強が見込めるんだろう。だが刻傷はそれを封じやがった。
つまり俺はリュカオーンを張っ倒して呪いを解かなければ種族変更することができない。上等じゃねえかあの犬畜生、必要性がなくても制限されると無性に気になる性質(タチ)なんだよ俺は。

「どれくらいで完成しそうだ?」

「明日ん夜来や、そん頃には完成させとくけぇの」

「そうか」

「じゃが」

ん?
ビィラックはポンポンとそれを……ひび割れ、本来の力を失った籠手を叩く。

「こいつの修理は骨が折れる、向こう一週間は無理じゃ」

「んー、まぁしゃーない。治るってだけでも朗報だ」

さて、さっそく暇になってしまったが何をしようか。
ジョブ「鍛冶師」は武器を強化することは当然として、無論武器を制作することも可能である。
だが武器作成においては二種類存在し、システムが登録した武器を作成する場合と完全なオリジナル……すなわちユニークウェポンを作成する場合がある。
前者の場合は突出した能力を持つ武器防具こそ作れないものの、百回繰り返して百本同じ剣を作ることができる。
後者の場合はステータスやレベルに応じてユニーク性能の武器が作成できるものの、百回繰り返して二本同じ性能の剣を作ることすら稀。
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ