挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
シャングリラ・フロンティア〜クソゲーハンター、神ゲーに挑まんとす〜 作者:硬梨菜

見上げた空、広がる海、深淵の都市を駆けて

しおりの位置情報を変更しました
エラーが発生しました

ブックマークしました。

設定

更新通知 0/400

設定を保存しました
エラーが発生しました

カテゴリ

ブックマークへ

以下のブックマークを解除します。
よろしければ[解除]を押してください。

ブックマークを解除しました。

216/238

道は違えど心は同じ

永久に運動し続けるものは存在しない。ホームランでかっとばされたボールもいつかは落ちるし、それは船であっても同じだ。

「落ぢでるでずわぁぁぁ! これは死んだでずわぁぁぁ!!」

「はいはい俺が抑えてるから少なくとも吹っ飛んで死ぬこたねーよ!!」

「アタシを掴んでるサンラクサンが問題なんですわぁぁぁ!!」

ただ今わたくし、マストに張られたロープに足を引っ掛けている状態であります。まぁ確かにこの引っ掛けている足が外れた瞬間落下気道に入った船から放り出されて海面に叩きつけられることになるわけだが、なせばなるって。

「ほら着地くるぞぉ……今っ!」

豪快な水飛沫と共に帆船が深く深く海面に食い込む。物理的に無理やり潜行しかけた帆船であったが、表面張力と浮力が気合で船艇を持ち上げ、風呂桶を無理やり湯船に沈めたような沈没にはならなかった。

「よっ、ほっ」

フリットフロートを挟んで着地、ぶん投げられた船の中でシェイクされていた他の面子もなんとか生きているようだ。

「いやー……とりあえず皆、ユニークシナリオEXお疲れ様です」

七日間というプレイヤーのリアルなど捨ててしまえと喧嘩を売るような内容ではあったが、色々な意味で実りのある七日間であった。

「これは快挙だ、俺達はこのゲームを誰よりも早くプレイし、クリアした。俺達が一番乗りだ」

まぁ実際はリリース前のテストプレイやらで先にクリアしたやつがいるんだろうが、流石にそれをカウントしてたらゲームなんてどれも誰かのクリア済みだ。

「この船どこに向かってんの?」

「この方向なら多分、フィフティシアに迎える。帰れるんだ!」

「くれぐれも調子に乗って迷うとかするなよー」

スチューデに航路を聞きつつ、全てが終わったことを実感した俺はようやっと全身から力を抜く。

「つっっっっっ……かれたぁ……」

この一週間、いろんな意味で駆け抜けてたからなぁ……明日はとりあえず寝る、寝尽くす。

このままフィフティシアに戻るまで寝転がっていてもいいが、どうせなら戦利品を漁るとしますか。
まずは八つの中から選んだ二つの杯……青色の聖杯と藍色の聖杯。
効果は青色が性別反転で藍色がステータス反転だ。
正直結構迷ったのだが、青色と藍色は色々と汎用性が高いと判断した。

これが男の時と同じような体格で性別が変わっていたら多分選ばなかったと思うが二、三十センチ規模で体格が変わるとなればそれはもう立派な武器だ。
性別によるステータスの差異は多少あるものの、性別が反転してもステータスはそのままだ。サイズを変更しての奇襲は対人、対エネミーの両方で有効活用できるだろう。
まぁ使ってて面白そう、という理由も六割くらいあるんだが。

むしろ本命は藍色の聖杯だ。こいつはヤバい、何がヤバいって現状オンリーワンな性能をしているのが何よりヤバい。
魔法無効化や物理無効化、遠近無効化ってのは要するに防御だ。タンクであれば原理は別物だが最終的な結果として同じことをするのは難しくないだろう。
視界反転も極論目くらましでしかないわけで、ある程度派手な魔法で代用できないこともない。
ダメージ反転は強く心を惹かれたが、それを使わなければならないほどグダるような戦闘は負け色の方が濃厚だろう。

だが藍色は違う、ステータスそのものを入れ替えるという能力はヤバい。俺を例にしても幸運をVITと入れ替えるだけでタンクになれるし、MPを大幅に上昇させて魔法使いになる事すら可能だ。
ステータスの振り直しではなく反転ってところがヤバい、つまり元々のステ構築を維持した状態で別のスタイルに切り替えられるということだ。

「そういや、聖杯何選んだ?」

ふと気になったので他のメンバーにも聞いてみたところ……

レイ氏:青、紫

ルスト:緑、赤

モルド:黄、紫

秋津茜:青、紫

アラバ:赤、黄

ガチ勢廃人たるレイ氏が青色を選んだのは意外であったが、ガチ勢になる程このゲームが好きならキャラメイクにも手を抜かないのは不思議ではないか。
だがなぜ藍色を取らずに紫を……そうか、藍色のステータス反転はある程度他の職業をこなせるやつじゃなければその真価は発揮できない。
レイ氏は重装甲火力という役割を突き詰めるためにあえて紫を選んだのか。被弾が死に直結する俺とは違い、レイ氏はある程度の被弾前提で前に出る。であれば突っ立って殴られるだけでも体力が回復する紫色のダメージ反転はタンクとしての側面も持つレイ氏と相性がいい。
流石はガチ勢、ソロ性能を高めつつもメインはパーティ戦闘を見据えているとは。

他の奴らのも気になるっちゃ気になるが、他人のプレイスタイルにまで口を出すこともないだろう。
むしろ問題はこっちだ。



・深淵の警鐘
それは深き淵より送られた警鐘、迫る危機を感知し告げる海色の鈴。
[ワールドクエスト四段階目で解放]に反応して持ち主に危機を告げる。
かつての人々は失敗した、次はお前達だ。




すごいだろ、やばいことしか書かれてねぇ。どう考えても物語中盤で襲来する謎の生命体とかそういうアレですよこれ。
ワールドクエスト、ウェザエモンを倒しクターニッドを満足させたことで二つのユニークシナリオがクリアされ、それによって二度ワールドクエストなるものが進行されている。つまり現段階でワールドクエストは第三段階に入っているということだ。
ウェザエモンが倒された時に結構な数の質問が飛んだのか、公式が答えていたがワールドクエストとは世界そのものが次のステップに進行した状態、なんだそうだ。

例えば「木に実ったリンゴを収穫する」がプレイヤー全体の目的であるグランドクエストだとする。ユニークシナリオは「リンゴを回収するまでに繰り広げられる農家の青春スペクタクル」で、ワールドクエストは「収穫されるリンゴに起きる変化」ということだ。自分でも何言ってるかわかんねーや、要するに季節が変わるようなモンだろう。
そしてこのアイテムの説明文から、三体目のユニークモンスターが倒された時点で……ワールドクエストが四段階目になった時点で何かが起きる。そしてそれは警報が必要になるような代物ということだ。
スローライフをしているプレイヤーは憤死案件だな、幸い俺は作物にジョウロで水をまいて虹を作るよりもモンスターの血飛沫で虹を幻視するタイプなのでそこまで困ることもない。だがこればっかりは流石に少人数で秘匿するべき情報ではないか、エセ魔法少女案件だな。

ただ俺にはある予感がある。
ただの警報がユニークモンスター撃破の報酬とは考えにくい、現実としてこの鈴には警報以上の効果はなく一見すればたいして価値のないアイテムに見える………逆転の発想だ、第四段階で現れるであろうその何らかを「むしろプレイヤーが探し求める」ような存在であったなら? 警報はそのまま探知機(レーダー)へと様変わりする。

「アイテム掘りの匂いがするぜ……」

「潮風の匂いしかしませんよ?」

「そだなー、秋津茜ステイなー」

ガキでも海賊、さらに言えば船乗りであるスチューデの操舵により帆船はフィフティシアへと向かっている。
はてさて、戻ったら何をしようか………いや、まぁまずはエムルやシークルゥを引き連れてルルイアスに行ったことをヴァッシュに詫びる必要があるか………ケジメ案件になりかねないが、こうなんとか工面と工夫をして指詰めくらいでご勘弁してもらうしか。

「……ンラク、サンラク!」

「んおっ、なんだよアラバ」

「いや、俺はそろそろ故郷へ帰ろうと思ってな」

だからフィフティシアに向かってんだろ……と考えてそういえばアラバは種族レベルでなんか違うしフィフティシアは別に拠点でも故郷でもないことにふと気づく。

「ああそうか、そういやそうか………まぁいいや、アラバお前のおかげで色々助かった、感謝するぜ」

「何を言う友よ、俺もネレイスもお前がいなければとっくにあの都市でクターニッドの眷属と成り果てていたぞ」

実際アラバに助けられた場面は多い、アトランティクス・レプノルカ戦ではあいつの機動力がなかったらシャチの餌になっていただろうし、クターニッド戦でもある種のSTR偏重魔法戦士としての戦力は頼りになった。

「もし……お前たちが鉱人族(ドワーフ)の「ガンダック」に会う事があれば俺の名を出すといい。あいつは腕のいい鍛冶師だからな、きっと力を貸してくれるぞ」

「はっ、何を今生の別れみたいな(ツラ)してんだか」

「そりゃあそうだろう、俺は基本的に海の中に生きる魚人族(マーマーン)だ。大地に生きるお前たちと会うことは難しいだろう」

チッチッチ、と指を振り俺は笑みと共に言い放つ。

「俺たちはそこに未知があるなら、世界の果てでも突っ走る開拓者だぜ。海の底くらい気合と根性でなんとかするさ」

魚人族(マーマーン)というNPCの存在、海底でエンカウントする固有のモンスター。どう考えても深海へ進出するなんらかの手段があるってことだろう。確たる根拠があるわけではないが、少なくとも再会は不可能じゃない。
俺の言葉に目を丸くしていたアラバであったが、ふっと笑みを浮かべると俺へと手を差し出す。
それを握り返して握手するとアラバは俺に抱きつき背中をバシバシと叩く。知ってるぞ、これハリウッド映画とかでよくやる別れの挨拶だ、実際にこれをやる日が来るとは……なんか地味に感動してるぞ。

「友よ、そして共に戦った心強い仲間たちよ! また会える日を楽しみにしているぞ!」

「ミンナ、ゲンキでね」

器用に太刀から上半身だけ現出させて手を振るネレイスとアラバは船の縁に立ち、最後にスチューデへと視線を向ける。

「小さな海賊よ、君が強く成長することを祈っているぞ!」

「お……おう! 当然だろ! 僕は偉大な海賊の息子なんだからなっ!」

なにかNPC間でイベントがあったのかは知らないが、アラバは最後にニッとやけに鋭い歯並びを見せる笑みを浮かべて海へと飛び込んで行った。
なんというか……ここにきて一気にハンサム度を上げまくって去っていったなあいつ………

「さて……とりあえず現地解散でいいとして……このあとどうする?」

「……寝る、とりあえず寝る」

「そうだね……流石にちょっと、疲れたよ……」

まぁ、戻ってすぐ行動とはいかないな。リソース的にもプレイヤーの体力的にも消耗しまくった激闘だった。何か行動するにしても明日か、明後日だろう。

「んじゃあ、明日……いや、明後日くらいにウチのクランの(カシラ)と会わせるよ。いろいろ話は通してあるし……」

「あ、あの!」

「ん?」

レイ氏が俺の話を中断するように声を挟む。いったい何事かと振り向いた俺は、この後ユニークシナリオを抱える以上に厄介な問題を背負うことになる。

「その………折り入って、お願いが……あります」











晴れやかな晴天の航路を行くサンラク達、だが一方のフィフティシアでは……否、プレイヤー達の間には嵐が吹き荒れていた。
もうちょっとだけ続くんじゃよ(思ったより開示情報が多い)(次の章へのつなぎも書かないと)(文章圧縮できない未熟者)(設定量で差をつけろ)


ぶっちゃけルート分岐で主人公パーティ全員新大陸にランダム転移でも面白そうだったんですがよくよく考えたらエムルがいる限り普通にラビッツに帰還できると気付いたので無事脱出ルートに分岐しました。
このどこでもドア兎め……
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ