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シャングリラ・フロンティア〜クソゲーハンター、神ゲーに挑まんとす〜 作者:硬梨菜

見上げた空、広がる海、深淵の都市を駆けて

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倶に天を戴いて 其の十八

投稿の方遅れてすいませんでした、実はここまで書き溜め自体はできていたのですが設定を大幅に変えていたことを完全に忘れていたので書き直してました……なんだよ想像態って、当初の予定じゃ普通にタコの形態だったじゃん……
戦術機龍「青龍」は規格外特殊強化装甲【昇滝】一式に対応した戦術機獣である。
刻傷の効果によって刻一刻と破損の危険が迫る中、駆け出した俺は追随する青龍へと命令を下す。

「行くぞ青龍! 合体だっ!!!」

『御了解!!』

うーむ、こうもリアリティの高いゲームで「合体」という浪漫ワードを声高らかに言えるとは感無量。
朱雀のAIと比較するとテンションが高い青龍が吼えると同時、【昇滝(ショウロウ)】のヘルムを装備した俺の視界にいくつもの文章が流れて行く。

流石に後頭部に目は付いていないので何が起きているのかを主観的に認識することはできない。だが気づかぬほど軽くはなく、押し潰されるほど重くはない圧力は青龍が俺に覆い被さっている事を示している。
背中に何かが押し付けられるような感覚、頭全体を包み込むように何かが被さり、肩甲骨の辺りからスライドするように俺の両腕に青龍の腕部がさらなる外殻を形成する。

『各部連結準備完了! コレヨリ当機体ハ合体シークエンスヲ開始ス!』

「あのクソ長ったらしい説明文を読んだんだ、大体把握してる……駆け昇る(・・・・)!!」

青龍は設定上では引力と斥力を操作する能力を持っている、それにより空気中の粒子を固定して斥力でなんたらかんたら……ゲーム的に言うなれば壁や天井を歩けるようになるスキル「ゼログラビティ」と空中を踏むことができるスキル「フリットフロート」が常時発動し続けているようなものだ。

俺の思考をVRシステムが読み取り、それをさらにシャンフロのサーバーが分析し、青龍がヘルム内に俺が望む「道」を表示する。
【昇滝】によって情報が拡張された視界に映る存在しないはずの道に足を踏み込んだ瞬間、なんというか泥を踏んだような雪を踏んだような……真下から足の裏をものすごい勢いで空気が押し上げているようななんとも言えない感触。

足駆天翔(アシガケアマガケ)!』

「おおおお!?」

例えるならめちゃくちゃ高速で動くベルトコンベア、操作不可能な直線スキー、もしくは本来は乗ることが出来ない車の上に乗って吹っ飛ばされた時のような。
慣性が俺の上半身を掴んで後ろへと引き摺り込まんとする、慌てて前傾姿勢を取って前へと向いて……

「ちょっ、ジャンプ台みたいに道が途切れてるんだが!?」

『座標経路ノ常時指定ヲ求ム!』

「余所見運転は認めないってか……っ!」

Flyaway(ファーラウェーイ)!!
途切れた不可視の道から青龍を纏う俺の身体が吹っ飛ぶ。どうやら奴も派手に空を突っ走る青色の金属塊に気づいたらしく、ビルのごとき触手を伸ばして俺を叩き落とさんとする。

「お、わざわざ道を作ってくれてありがとよ」

常に「道」をイメージしていないと不可視の道を維持することができないようだが、既に物質として存在するクターニッドの触手はよそ見しても消えたりはしない。

「てめーの顔面まで直通通路だ!」

ぐむぅ、とゴムのようなスポンジのような肉の塊に着地し、加速する。確か説明文では「空気と自身の間に斥力を発生させて自身を弾いて加速している」んだっけか、つまりは常時ピンボール状態。
食らった血肉を固めて作ったのだろう触手の上を青色の龍機士が滑走する。ゴールは巨大触手の根元、ウィトルウィウス的人体図ポーズで君臨するクターニッドの横っ面だ。

うねり暴れて俺を振り落さんとする触手の上を引力操作による絶対的安定感で滑走しながら、インベントリアを操作する。折角の大盤振る舞いだ、どうせ三分以内で済ませなければならないのだからケチケチするのはなしだ。
ウェザエモンが残した遺産、規格外特殊強化装甲は戦術機獣を電源として稼動する。そして鎧があれば当然武器も存在する。

「規格外武装……折角なら剣と魔法からは脱却しようかぁ!」

双銃型【カストル・ポルクス】を選択、インベントリアからルルイアスへと転送する。
格納空間から喚び出されたそれは一見すると巨大な本のようにも見える直方体の金属塊、少なくとも重機のようには見えない。
だが青龍がヘルム内に表示する案内に従い両手がそれぞれの直方体に触れた瞬間、金属直方体が変形を開始する。
金属の表面を這う直線のラインに従って、折り紙を元の形に戻すように開いた金属が俺の両腕を包むようにしてバレルを形成し、装甲側も変形に伴って何らかのエネルギーラインを接続する。

「ヒューッ、かっこいいねぇ……!」

『接続完了! 装填(チャージ)弾丸数:二十!!』

「それ片方で? それとも両方で?……まぁいい、とりあえず二十発!」

金属の塊が両腕にくっついているにしては驚くほど軽やかな動きで銃口をクターニッドへと突きつける。イメージが視界に存在しない道を作り出す。触手道から跳んだ俺の足は力場の道を踏みしめ、俺だけが歩くことを許されたそのルートはクターニッドの真正面、顔面のすぐ側を通過する。

「墨をブチまけろ!」

電光が飛び散る。変形したカストルとポルクスからスパークを帯びたエネルギーの弾丸が連射され、大雑把な照準とはいえそれらはすべてクターニッドの顔面へと命中し、破壊力をぶちまける。

Voaaaaaaaaaaaaaaaaaaaa!!

ここに来て科学的高火力を顔面に食らったクターニッドが悲鳴をあげる。怯みモーションと共に巨大触手も波打ち、隙を晒すが……駄目だ、浅い(・・)
視線を向けた先、落下軌道上に俺がイメージした滑り台が形成され、その上を滑り降りた俺は地上へと着地する。もっとダメージを叩き込んでもっと大きな隙を晒させなければ、秋津茜の一撃を叩き込む確実性を確保することができない。

「……すごい、とてもすごい、とてもマーベラス……!」

「うおっ、ルストか……」

どうやらルストがいる場所の近くに着地したのか、迫る制限時間に焦りつつも次の手を考えていると頭にエムルを乗せたルストがこちらへと近づいてきた。

「悪いが感想なら終わった後に……」

「……クターニッドの弱点に関していくつか、考察がある」

「二十秒で頼む」

残り時間は二分を切った、一秒すらも惜しい。

「……クターニッドの背中、触手の付け根にある玉が明らかに弱点っぽく光ってる。ヘイトを受け持ってくれれば私が射抜く」

怯みモーションで動きを止めながらも、奴のヘイトは俺へと向いていることは鎧の中で粟立つ肌が如実に示している。後ろに回り込む暇もないのでそれを実際に確かめることはできないが、確かめる必要もない。

「いけるのか?」

「……MP的にも八発が限界だけど、モルドのバフ込みで全部当てれば問題ない」

「っし、囮は任せろ。エムル、秋津茜に俺たちの攻撃が終わったらぶちかませと伝えてこい!」

「はいなっ!」

「よぉーっし! 全員! プランBだ!!」

プランBの「B」とは! 「ぶっ飛ばす」のBであり! 「ぶちのめす」のBであり! 「ボコす」のBである! 即ち作戦最終段階に至るため、秋津茜を除く全員が今持ちうる最大火力を叩き込む!!
クターニッドは喋れるからな、当然その逆も可能なんだろう。下手に口に出して察知されたらたまったものではないので作戦は非常に単純な合言葉に変換している。

正々堂々一対一(・・・・・・・)!!」

やったらめったらに反転させまくるタコが相手なんだ、作戦の言葉と内容を逆にするのはお似合いだろう?
正々堂々(卑怯上等)相手してやる(袋叩きにする)号令と共に全員が動きだす。どうやら俺の攻撃でやつは地面へと降りて攻撃することを選んだらしい、実は腕立て伏せしてるみたいで空中に浮くのは辛かったりするんだろうか? いやまさかな……とはいえ好都合だ。

『エネルギー残量三割! 充電求ム!』

「燃費……じゃねーな、充電がそもそも足りてないか……まぁいい、ゼロまで使い切ってでも動いてもらうぞ!」

カストル・ポルクスをしまい代わりに規格外武装大砲型【レグルス】を展開、一メートルほどの円柱が右腕へとくっつく。規格外武装自体がそういう(・・・・)コンセプトなのか、カストル・ポルクスと同じくバラバラに分離した円柱が変形と合体を経て巨大な砲を形成する。
いつから生きてるのかは知らないが、どうやらクターニッドはレグルスを脅威として正しく認識できているらしく腕を盾のように構えて俺への警戒を高めている。触手で俺を攻撃してもいいんだぜ馬鹿め……

「時にクターニッド、いいことを教えてやる……言葉の意味は裏返し(・・・・・・・・・)だぜ」

「【タケミカヅチ】!!」

「【深海嘯(タイダルディープ)】!!」

正々堂々? 換金したって1マーニにもならんようなもの、ゴブリンにでも食わせてやれ。
俺に注意が向けられている間に背後に回り込んだシークルゥとアラバがクターニッドの膝の裏へと攻撃を叩き込む。膝カックン再び、一つだけ違う点があるとすれば奴の膝裏に叩き込まれた火力が段違いということだ。

「ファイヤーッ!」

そして膝カックンによって重心が崩れたクターニッドへとレグルスが光を放つ。青龍によって反動で吹き飛ぶようなことこそはなかったものの、右腕が軋むような圧力に負けじと力を込める。
放たれた砲撃はクターニッドの鎖骨のあたりに命中し、後ろへと重心が揺れたクターニッドを更に押し込む。

「そんなにひっくり返りたいなら、自分の身体でオセロでもやってな……レイ氏!」

「………!」

後ろへと倒れんとするクターニッド、だが足りない。これでは求める怯みの時間には到底届かない。
だから更に叩き込む、過剰に殺す(オーバーキル)つもりでレイ氏にはさらに札束でぶん殴ってもらう。

「行きます……【巨神の崩撃(ティタノマキア)】!!」

レイ氏が持つ使い捨て魔術媒体(マジックスクロール)の中でも最高額、そして最強の魔法が込められたそれがレイ氏の意思に従い封じ込められた魔法を解き放つ。
土属性に該当するこの魔法は、ある程度の範囲に地面があることが条件であり、つい最近まで海底にあったとはいえもともとルルイアスは「島」だ。俺たちはちゃんと大地の上に立っている、巨神の一撃は発動できる。

大地が鳴動する、まるで巨大な何かが方向を上げながら力を解き放つが如くクターニッドが形成したコロシアムの地面がひび割れる。

「すげぇ、フライパンでホットケーキとかひっくり返したみたいだ」

大地をぶち抜き顕現した巨大な土の拳、ひび割れた拳の奥に赤く光る灼熱を帯びた巨神の一撃が青天井に倒れんとしていたクターニッドの背中を真下から真上へとぶっ飛ばす。信じられるか、クターニッドが浮いてやがるぜ。

「ルスト!!」

さぁ、ネフホロ最強プレイヤーの力を見せてもらおうか!!
クターニッドの巨大触手は「相手への干渉時は質量に見合った重量を示す」が「自身への干渉時は本来の重量を示さない」という使ってるいわゆる本人は重さを感じない「細腕の美少女が大剣を振れるわけがない? うるせぇ! 不思議パワーで本人は重さを感じねーんだよ!」ってやつなんですが逆を言えば「クターニッド自身の物理法則は人型分の重量のみが適用される」ということです、地味にこれ拘束魔法などに関わってくるので攻略には重要……と言う設定です。
決闘者向けに超わかりやすく言うと混沌幻魔アーミタイル



使い捨て魔術媒体(マジックスクロール)
一定以上の条件を満たした「魔法使い」系のプレイヤー・NPCであれば作成することができる。
転移魔法などの汎用性のデメリットなく使用出来る魔法が主流ではあるが攻撃魔法なども封じ込めることは可能。
とはいえ威力は下がる……のだが、「発動によって起きる現象」そのものは変わらないため現状「賢者」のNPCしか作成できない特大オブジェクトを呼び出す【巨神の崩撃(ティタノマキア)】などは超高額で取引される。
ちなみにレイ氏が後先考えずに使いまくってるスクロールはレイ氏の自腹ではなく「クランの資金」で購入し、レイ氏に持たされたもの。その場のノリで「ヤケ使い捨て魔術媒体(マジックスクロール)」して後で激しく後悔するパターン。
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