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シャングリラ・フロンティア〜クソゲーハンター、神ゲーに挑まんとす〜 作者:硬梨菜

見上げた空、広がる海、深淵の都市を駆けて

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季節外れのカボチャとくっ殺しない女騎士

「…………じゃあ行ってくるよ」

時刻は朝七時、俺たちよりも先に開始されるRwH6の世界大会へと向け出発するためカッツォは先に離脱することになる。何か言いたげな……しかしそれを必死になって嚥下して、かろうじて心の中に留めたのだろうカッツォはこちらへとエナジードリンクの缶を投げる。

「もともと向こうが無理を通してきたんだからね、これくらいは融通させた」

「エナドリ一本の融通……ってオイこれ」

「例のメーカーの新作だよ、当然米国産」

オイオイ、噂には聞いてたけど実物を用意するとは……やるなカッツォ。俺が英語表記のエナジードリンクに対して戦々恐々という態度で眺めていると、ペンシルゴンはイマイチピンとこないのか眉をひそめつつ俺たちに問いかけてきた。

「日本のと何が違うの?」

「日本のがカフェインキマる(・・・)くらいだとしたら、こいつはこれ一本でガンギマる(・・・・・)

「……合法、だよね?」

「ユーザーもそれちょっと心配してるんだけど、一応法に触れるようなあれこれはないらしいよ」

「ちょうど一週間前に発売されたばかりの「ライオットブラッド・トゥナイト」……実物を用意するとはやるじゃんカッツォ」

飲めば二日は眠れなくなる、という本当に合法として売る気があるのか疑わしくなるキャッチコピーで、全世界数億のエナドリユーザーを激震させた怪物エナジードリンク。つーかトゥナイトと二徹(トゥーナイト)でダジャレかよと言いたくなるが、瞬間ガンギマリ率は過去最高クラスであることは明白。プロゲーマー相手に勝負を挑む現状においてこれ以上ないブースターだ。

「一応全員分用意してるけど」

「なんか眠気と一緒にお肌のツヤも持ってかれそうだから私はふつーのでいいかなー」

「わ、私は貰おうかしら……」

飲むのはもう少し後にしておこう、なんというか勿体無い。カシャコンと開いていたマスクを閉じ、エナジードリンクをホルスターに無理やり突っ込む。そんな俺の姿をひっっっっっっじょーーーーーに何か言いたげな表情で見つめていたカッツォであったが、何を言っても無駄と判断したのか、ヒラヒラと手を振ると会場の方へとタクシーに乗って向かって行ったのだった。

「全く、言いたいことがあるならはっきり言えばいいのにな」

「本当、その通りだねぇ」

「口では何も言ってないけど目が全てを物語っていたように私には見えたけど……?」

「夏目ちゃん、私らのシマ(・・)じゃ発言しなきゃノーカンだから」

如何に目で語っていようが、言われなければそれは問題ないということなのだ。口を開け、物を申せ、故にこそ俺たちは互いに互いを煽るのだ! 黙っていると勝手に物事を進められかねないからな!!
ヴィィィィ……と静かに響く駆動音の中、カッツォを見送った俺とペンシルゴンと夏目氏はしばらく沈黙を続ける。それは俺とペンシルゴンにとっては「何か言いたいことがあるならどうぞ」という待ちの静寂であり、夏目氏はもごもごと口を動かすが……それを開くまでには至らなかった。

「流石に今から追加の仮装を用意するのは難しいかなぁ」

「私は! 着ません! から!!」

さいでっか。カシャコン、カシャコン……ヴォン。















「なぁペンシルゴンさんや、ここでクイズです」

「よっしゃどんとこい、私の灰色の脳細胞が黄金に輝くよ」

「それ既に黄金色では……まあいいや、さて問題です。今我々は周囲からなんだと思われているでしょうか」

「愉快なコスプレ集団」

「あっはっは、せめてボケろよ畜生」

「あ、こっち銃構えてもらえますかー?」

「ほらほらオーダー来てるよー? レイヤーたるものちゃーんと応えないと。はいはいそこローアングルならもっと右よってねー!」

カッツォが会場入りしてからおよそ一時間後、俺達もまた会場へと向かった。向かったのだが、格好が格好故にカメラを持った来場者に「写真いいですか」と言われたのが運の尽き。かれこれ十数分間ほど俺は銃を構えたりよく分からないポーズをしたり……俺は一体何をしているんだ。というかノリノリで写真撮影を快諾するバカがいるから俺も巻き添えを食らったわけで、俺はヘルメット越しに恨めしげな視線を隣でポーズを決める「女騎士」に向けるが、仮面をつけた外道はそんな視線などどこ吹く風といった様子である。

(確か……なんだっけなー、どっかで見た気がするんだけどなんのゲームキャラだったか……)

こういう時偏食の代償が痛いな、今俺がしている格好のキャラも、ペンシルゴンがしているキャラも見たことはあるんだがどんなゲームのキャラだったか思い出せない。少なくとも奴はファンタジー畑のキャラでこっちはSF畑……それもFPS関連のキャラであろうことはわかるんだが。

「…………で、いつまでここで撮影会やるわけ?」

「んー? ほら職業的に撮影には快諾しちゃう性質(タチ)だからね、うっかりうっかり。すいませーん! ちょっと行くとこあるんで撮影会はお開きってことでー!!」

こういう時はっきりズケズケとものを言えるあたり、やはりモデルという視線を浴びる職業故の強さなのだろうか。完全に顔が隠れているとはいえ、自身の写真を何枚も撮られるという経験は初めてだったので貴重な体験といえばそうなのかもしれないが、俺個人としてはこういう経験はあまりしたくないなぁ。

「んっふふー、どうよサンラク君。これから全世界規模でオーディエンスに見られながらゲームするわけだし、予行練習がてら撮影会してみたけど、パフォーマンスは維持できそう?」

「…………ヤンキーが猫を拾うといい奴に見える現象を狙ったか、策士め……っ!」

「あっれぇー結構私善意でやったんだけどなー……?」

善意が全て良い結果になるとは限らない、悪意で良い結果を掴み取る奴がそれをやるとなおさら疑ってかかってしまう。つまりは……

「日頃の行い」

「どストレートな正論やめよっか、私が言い返せない」

ちなみに夏目氏はさっさとGGC会場……国際展示場をゲーム一色に染めたその場所へと行ってしまった。人としてどうかとは思うが残念ながら俺たちへの対処法としては満点と言わざるをえないな。

「それじゃ、いこっかカボチャ君?」

「なあ、これ季節外れって言われないかな」

「コスプレに季節なんてものは関係ないのさ、冬でも水着みたいなコスをしてポーズをする。それがコスプレイヤーってものだよ」

「さいですか」

俺は頭全体を覆うフルフェイスヘルメットを二、三度撫でて……カボチャのお化けジャック・オー・ランタンを模したマスクを顔部分に装着した奇妙な兵士のコスチュームと、Rが18に指定される方のそれではない肌の露出を限界までなくし、陶磁器のような無機質な仮面をつけた女騎士のコスチュームが白熱するコンペティションの会場へと足を踏み入れたのだった。
めちゃくちゃメタいこと言うとアイア○マンのマスク部分をジャックオーランタンっぽくした奴と暗銀の残滅と黄金の残光をくれるあの人でイメージしたいただければ
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