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シャングリラ・フロンティア〜クソゲーハンター、神ゲーに挑まんとす〜 作者:硬梨菜

見上げた空、広がる海、深淵の都市を駆けて

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匿名(馬鹿)野郎Aチーム、そして風雲急

アトランティクス・レプノルカ戦におけるリザルト

・冥王鯱の照鏡骨
・冥王鯱の凝触羽
・冥王鯱の扇薙鰭
・冥王鯱の重頭殻
・冥王鯱の剛耐皮
・ムキになって攻略した事で大量に消費した回復アイテム
・薬にも毒にもならない経験値
・状態異常:寝不足
・時計を見たら早朝四時の絶望
・時計を見たら朝十時の絶望
・外道二人からの嫌味
・ある事実を思い出したことで新たに噴出した問題




「畜生……何よりも現実こそクソゲーってそれ一番言われてるから……」

「重役出勤のヒヅトメさんちーっす!」

「ブランチのお味はどうだったかなー? みんなを待たせて食べるブランチの味はさぁー??」

「言い返せないという事実が何よりも痛い、これが罪悪感……?」

後で知ったがこの二人も大概寝坊していたらしい、こいつらその上であれだけの煽りを俺にしてやがったのか。



場所は変わって電脳世界、それぞれの直前まで使っていたキャラをアバター代わりに、今現在エントランスの円卓を囲むようにして座っている。

「会場は今現在進行形でGGCの一日目が開催中だが、生憎だけど俺達はここで対スターレイン戦の対策会議です」

「カッツォ君一応聞くけどあのシルヴィアちゃん以外のマッチョ三人……どれくらい強いの?」

「他の奴らも前作で世界ランキングトップ20に名前を連ねるランカーだよ」

「もうさ、試合前に下剤盛った方がよくない?」

「サラッと外道発言はやめてもらえるかなぁ!?」

わいのわいのと騒ぐチームメイトをよそに、俺はある問題に頭を悩ませる。

(そうなんだよなぁ……この二人にクターニッドのこと、そしてルスト&モルドの事を言わなきゃいけないんだよなぁ……)

そもそも、俺が今クターニッドに挑んでいるのは元を辿ればネフィリム・ホロウでであった二人のプレイヤーとの契約によるものだ。実際にクターニッドにつながるシナリオであった以上、俺はその対価としてロボ……戦術機装の使用権を二人に提供しなければならない。
そしてその為にはこの二人を説得しなければならないのだ、よりにもよってこの二人をユニーク攻略からハブったこの現状でだ!

「無理ゲーじゃねぇかな……」

「サンラクくんが弱音吐くレベルだよ?」

「おいおい今からボケたこと言わないでよサンラク」

なにやら外野が騒いでいるがそれどころではないのだ。この二人を説得するならば一番手っ取り早いのは今挑戦中のEXシナリオを失敗で終わらせて再チャレンジすることだ、これなら新たに二人を加えてEXシナリオに参加できるから交渉の難易度は確かに下がる。
だがそれはNPC達がどうなるか分からない、ということでもある。どうもアラバの話を聞くにクターニッド相手に善戦できないと生還自体できない気配がするし、やはりここはプランBか?
逆にEXシナリオを成功させることで、その成果を交渉材料とする。言うなればユニーク的アイテムを

「人質にして脅迫……」

「ねぇケイこの老侍物騒なこと言いだしたんだけど!?」

「サンラク気を確かにして! 外道芸はペンシルゴンの十八番でしょうが!」

「まず君に下剤を盛るべきなのかなー? んー??」

ええいうるさいうるさい、しゃらーっぷ。
だが全ての事を上手く運ぶのならばやはりその方法しかない。ユニークモンスター「深淵のクターニッド」を打倒し、それによって得られるアイテムでペンシルゴンを交渉の場に出す。カッツォはどうとでも言いくるめられる、ペンシルゴンさえ説得できればいいのだ。つまり今の俺に要求されるものは

「不条理を踏み躙る、圧倒的な力……!!」

「あー、もしかしてサンラク……話聞いてない?」

「は? なんの話だよユニーク自発できないマン」

「プロゲーマーチョップ!」

「ごふう!?」





「さて頭がユニークなことになってるマン、君から見たスターレインの印象を教えてもらおうか」

「……ぶっちゃけ、この三人相手なら上手くいけばペンシルゴンでハメ殺せるでしょ」

ガンガンと痛む頭を抑えつつ、俺は対戦チームのエース以外の評価をスパッと断言する。

「この三人、なんか格闘技やってないか?」

「やってるな、こいつとかボクシングのヘヴィ級ライセンス持ちだったと思う」

「なぜボクサーの道に進まないんだ……まぁいいや、基本的に格闘技やってるタイプのプレイヤーってファイトスタイルがどうしてもそっちに引っ張られるんだよ」

通常それは弱点とは言わない、この現代において極めてアナログな戦いの術を知っている人種というものはやはり格ゲーにおいて大きなアドバンテージを持っている。それが利点となることはあっても弱点となることは稀だ。
だからこそ、此度の戦いにおいて本来は弱点にはなり得ない筈のそれがウィークポイントになるのだ。

「簡単に言うと?」

「ボクシングはリングでグローブだけ使ってするもの」

素晴らしく邪悪な笑顔を浮かべるカリスマモデル殿に夏目氏がなんとも言えない表情でそれを見て……と、ここでふと気になったので件の本人に聞いてみることに。

「なぁ、ペンシルゴンって顔それで出るの?」

「いやいやまさか、ちゃんと顔は隠して出るよ? 世のティーンにはちょーっと刺激が強すぎるだろうからね」

「あ、それで思い出した。二人とも、なんて名前でエントリーしとく? 特に要望がないならサンラク、鉛筆戦士で登録しとくけど」

ああそうか、仮にも大会に出る以上は名義がいるのか。正直、サンラクという名前で目立ちたいわけでもないし……

「匿名希望アルファとかで宜しく」

「あ、じゃあ私は匿名希望オメガで」

むっ。

「……いや、やっぱり匿名希望零式とかにしようかな」

「じゃあ私は……匿名希望非存在番号(ゴーストナンバー)とかにしよっかなぁ……」

むむっ。



五分後。



「はぁ……じゃあサンラクは「彼方より解き放たれし宿痾の匿名希望」でペンシルゴンが「†気高き匿名希望の淑女(ミスティック・レディ)†」で良いんだね?」

「「やっぱなしで」」

それで呼ばれたら死ねる、いろんな意味で。

「……もう謎の助っ人一号二号でいいんじゃないかしら?」

それはそれでなんだかなぁ、と感じてしまうのが人の心と言いますかね夏目氏。

「よし、もうこの際プロゲーマー様直々に名前を決めてあげよう」

「ほう」

「サンラクが「ガンボール」でペンシルゴンが「ブラックカーテン」で」

「誰が「鉄砲玉」だコラァ!?」

「今回の「黒幕」はむしろそっちじゃーん!!」

「ええい黙れ現役厨二病共、昼までに決めないといけないんだぞ!」



さらに三十分経過。



「……はい、というわけで厳正な殴り合いの結果名前が決定しました」

そう、サンラクとはあくまでもプライベートな名前でしかない。我が公式大会用の「真名」は……っ!!


とりあえずカッツォは絶対に許さん。








『なぁシルヴィ、ケイんとこのチームにこんな名前のメンバーいたっけか?』

『んー? 誰か新入りでも入れたのかしら……って何これ、「顔隠し(ノーフェイス)」と「名前隠し(ノーネーム)」?』










「くそー……「意地でも顔バレしたくないやつと名前バレしたくないやつなんだからそれで上等だろ」とか……」

割と言い返せないから腹が立つ。あとシンプルでちょっとかっこいいとか思ってない、思ってないぞ。
今思えばしょうもない理由で騒いでいたなとは思うが、過ぎたことを蒸し返しても意味がない。

時間は正午少し前、カッツォの奴はエントリーの申請と何やら呼び出されたとのことで離席、夏目氏は無理なスケジュール調整の反動でかかってきたらしい電話の対応、ペンシルゴンはなにやら悪巧み……もとい、何か宅配を頼んでいたのでその受け取りに行った。
そして俺はといえば、特にやることもないのでホテルのレストランへと来ていた。流石にガスマスクはつけて公共の場に出るわけにもいかないので素顔である。もし他の面子に見られたら……別に特に困らないか。

「つってもさっき飯食ったばかりだし軽食を、いや甘いもの食べたい」

デザートデザート……あれ、値段が書いてない。まさか宿泊費に食事代も込みなのか? マジかよ。

「そうだな、このレアチーズケーキ〜真夏の果実スプラッシュを添えて〜とかちょっと興味が……」

「ステーキ900グラム、四人前。ミディアム一人、レア二人、ウェルダン一人、レア一ツトウェルダンニハガーリック多メデ」

なんだその聞くだけで人を胸焼けにするようは呪文は。
俺はこの場に一人で来た、であるからしてその注文は赤の他人が従業員へとオーダーしたもの。だが俺は好奇心のままに振り返り……顔を引きつらせてフリーズする。


「……嘘だろおい」


マッチョ、マッチョ、一人飛んでマッチョ。
こいつらがいるだけでこのホテルにテロリストが乗り込んでくるんじゃないか、謎の秘密結社との銃撃戦が始まるんじゃないか、というかトラックがエントランスに突っ込んでくるんじゃないかと思えるようなマッチョの群れが、そこにはいた。
そしてマッチョ三人の中で一人だけノットマッチョな……だからこそ際立っているようにすら見える金髪の女性が一人。ハリウッド映画の中から出て来たのかと言いたくなるようなこう、凄くアメリカンな四人組がペラペラと英語で何かを話している。

「……日本人必修技能、気配遮断」

俺が座っている場所のすぐ後ろに、スターレインとやらの一軍メンバーがいる。ゆっくりと振り返った首を元に戻し、私はモブです景色の一パーツですとその気配を薄めることを試みる。
突然のリアル邂逅に対し、俺は国語教師に指名される確率を極限まで軽減させるジャパニーズ隠密技能を全力で行使するのだった。












「………は?」

自身へと告げられた言葉が理解できない。(けい)は思わず間の抜けた声でその「命令」に対してのリアクションをとる。もしや英語か何かで話しているのだろうか? それ(・・)が日本語であると抜かすのであるなら、言葉の意味が理解できない。

「…………冗談、っすよね?」

「冗談ではないんだ魚臣、これは電脳大隊(サイバーバタリオン)の……ひいては「スポンサー」からの命令(オーダー)だ」

「ふっざ……! それがどういう意味が分かってて言ってるのか!?」

タブレットを地面に叩きつけて慧は目の前の、役職上は自身の上司に当たる人物へと吠える。
だがしかし、世間では好青年で通っている慧の怒りの咆哮にすら眉ひとつ動かすことなく、男は再度その言葉を……言い聞かせるかのようにはっきりと宣告する。



「プロゲーマー魚臣(うおみ) (けい)、君には明日のGGCで「ルインズ・ウォー・ハウンズ6世界大会」の決勝戦に「強襲中隊(アサルトカンパニー)」のメンバーとして出場してもらう。フルタイムでだ、手を抜くことは認められない」

風と雲が急いて動く。
世のティーンズ達の理想とする天音 永遠「女の子はどこまでだって輝ける! 私みたいにネ!!」
夏目氏が目撃したアーサー・ペンシルゴン「もうさ、盤外戦術でスターレイン闇討ちしたほうがよくない?」

夏目氏「えぇ……」
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