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シャングリラ・フロンティア〜クソゲーハンター、神ゲーに挑まんとす〜 作者:硬梨菜

見上げた空、広がる海、深淵の都市を駆けて

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摩天楼にて流星を、深海にて異形を

更新再開します(唐突)


目を覚ますと、そこはさながら金属の大樹海。空を埋め尽くす摩天楼の密集は太陽の光を受けて堂々たる輝きを放つと同時に、光の届かない影を作る。
俺が今いる場所はそんな摩天楼が作る暗部、画一的な格子模様の地図の中で爪弾きにされたどこにも繋がらない袋小路。

「よいしょ……っと」

素人目から見てもサイケデリックが過ぎるデザインな、後部がそのまま屋台として稼働するトラック……に偽装した輸送車(・・・)から俺は身体を降ろす。ただ一歩踏み出しただけでトラックは頼りなげに揺れ、アスファルトに火花が散る。
ギャリギャリと音を立てて鈍重なこの身は「ケイオースシティ」へと立つ。鈍重なこの身を覆う拘束具の意匠が各部にデザインされた鎧は、宇宙の神的存在である「ギャラクセウス」によって過ぎた力を封じられている。この鎧から解放されるにはギャラクセウスそのものか、その恩寵を受けた者の力を以って破壊するしか方法はない。
であればこそ、この身は流星光る場所に必ず在り、流星と相対する宿命なのだ。

「勝利条件はケイオースキューブの確保、もしくは……」

相手ヒーローの撃破(・・・・・・・・・)
果たして向こうからやってくるただ一人を打倒する事と、広大な街の中からバスケットボールほどのサイズもない箱を探す事のどちらが楽かを考え、この状況で勝つつもりでいる自分に気づいて笑みを浮かべる。

「相手はカッツォに勝ち越してるやつだってのに、勝ちを狙ってしまうのはゲーマーの性かな……よし、やってやるか!!」

ルール上、向こうがこの世界に現れるまで三十秒ある。ヒーローはいつだって悪巧みの先手を取る悪役の後手に回るものだ。
確かこういう時に「この身」はなんと言うのだったか、しばし考え思い出す。

「そうそう思い出した……さぁ、暴君の時間だ!」

誰にでもなくそう言い放ち、俺はトラックに偽装した輸送車に渾身のパンチを叩き込むのだった。


















目を覚ますと、そこはさながら冒涜の大海嘯。深海を埋め尽くす超古代の残影は深淵の力を受けて邪悪なる胎動を放つと同時に、抵抗する者達が走る。
俺は奇声を上げながら錆びついたサーベルを振りかぶるフジツボだらけのゾンビを蹴り倒しつつ、辺りを見回す。

「だぁー畜生! エンカ率ぶっ壊れてるんじゃないの!?」

「エンカとはなんだサンラクよ! 「封将」にたどり着くためにはここを突破しなければならないんだぞ!」

「分かってる! おい、あそこから屋根に登るぞ!」

「ま、待ってくれ! 俺は君のように軽々と跳ね回ることは出来ないぞ!」

「キアイト、コンジョウデ、ヤレ」

俺の言葉にひくりと口の端を引きつらせた相方であるが、自分とは似ても似つかぬ異形の殺到になりふり構っている場合ではないことは理解しているのか、ひぃひぃ言いながら半壊した建物の亀裂に手を掛けて屋根へとよじ登る。一足先に駆け上がっていた俺は相方の手を掴むと、渾身の力でその身体を引っ張り上げる。
数フレームのさで相方のぶら下がっていた場所に幾本ものトライデントが突き刺さり、俺が引っ張り上げなければ不恰好な串刺しになっていたことに気づいた相方の顔が青ざめる。

「おお友よ……またしても君に命を救われたな……この恩は魚人族(マーマーン)の誇りに誓って必ず……!」

「なら今すぐ恩を返してくれ、即物的で悪いが……走れ」

「うおお!? やつら、同胞を踏み台に登ってきているぞ!!」

「だから走れって言ってんだよぉ!!」

数が質量を伴えば力技で大抵のことはなんとかなる。先行く者を踏み台にし、後続く者に踏み台にされながら形成された知性のかけらもない極めて原始的な肉の梯子をよじ登ってきた異形の先発を蹴り落として俺と相方は走り出す。

「くそ、俺よりレベルの低い敵は逃げるんじゃなかったのかよ……」

「奴らは深淵の盟主の眷属だぞ、いかに恐ろしい相手でも盟主にやれと命じられれば神獣にだって噛み付くぞ。奴らはそういう契約を結んでいる」

「リスポンゾンビみてーな思考ルーチンを強制するとか鬼かよ……蛸か」

妖艶な笑みを浮かべて宙を泳いでこちらへと迫る人魚(マーメイド)の顔面に回し蹴りを叩き込み、可愛らしい顔を歪めながら吹っ飛んで行く人魚を尻目に目的地までひた走る。

「君はなんというか……容赦がないな」

「容赦なんてものは後ろにいる魚人もどきにでも食わせりゃいいんだよ、人面魚相手に情けなんぞかけてる暇はない!」

なんだかんだ俺に並走しているサメを擬人化したような相方のような種族と違い、人魚は完全なモンスターである。美しい少女の姿をした上半身は所謂擬態、本体は下半身の魚部分であって人間部分はチョウチンアンコウの提灯と同じ疑似餌だ。
モンスターデザインをしたスタッフは相当意地が悪い、そんな確信を抱きながら今にも歌いださんとする人魚にラリアットを食らわせる。

「あれだ! あの中に封将がいるぞ!」

「よぉぉーし……カチコミだぁぁぁ!!」














爆炎と共に着飾ったマネキンが並ぶショーウィンドウが弾け飛ぶ。破壊の衝撃はガラスとプラスチックを纏って着飾り、グレードアップした殺傷力が辺り一帯に撒き散らされる。

「おっしゃオラァ! 逃げ惑え一般市民共!! 警察と消防への連絡は忘れんなよ!」

無駄に凝ったNPC達が悲鳴を上げ、顔を引きつらせて爆心地から、そして爆発源たる俺から離れようと逃げ惑う。
幾人か携帯電話を耳に当てているMobもいるし、ゲーム的なアレがアレ故に迅速にやって来る装甲車や消防車が来るまでおよそ三十秒。
トラックに偽装したこの身を運ぶ輸送車には、明らかに輸送以外を目的とした武器が搭載されていた。この身の能力は「破壊したものを取り込んで鎧に変える」というもの、所謂初期装備である輸送車纏い状態であるこの身は右手にガトリングを、左手にショットガン。脚には鈍重な機動力を補うタイヤが装着され、背中にくっついたトラックエンジンが唸りを上げて黒煙を吐く。
唸るタイヤが巨体を豪速で走らせ、軽自動車のボンネットに激突した膝蹴りが金属の塊たる乗用車をサッカーボールの如く転がす。ストリートの格子のズレ、直線通路の果てに構えるビルのエントランスに軽自動車が突っ込み、爆ぜる。

「へぇ、私の前にソレ(・・)で来るだけあって、パフォーマンス目的のナメプ(舐めプ)じゃあないようね」

「出たな全米一(ゼンイチ)……!」

振り向いた先、そこには炎を背に腕を組んで立つ一人の影。全体的に白系のスーツの各部に金のアーマー、覆面には特徴的な五芒星の形をしたゴーグルが装着されており、揺らめく炎の光によってこちらからでは影になって尚、全身から輝きを放っていそうな人物が俺を品定めするかのように不躾な視線をぶつけていた。
まぁ無理もない、直前までメンバー登録していないと思えば、土壇場で登録されたのはプロゲーマーですらない謎の二人組だったのだから。そしてその片割れがよりにもよって全米一のプレイヤーが使うキャラのライバルキャラを選ぶ……なんて挑発まがいのことをしたのだから。

「ケイが連れてきた助っ人の力、確かめてあげるわ……この「ボク」、ヒーロー(・・・・)たる「ミーティアス」がね!」

「受けて立つとも、一筋縄の試合になると思うなよ……この「俺様」、ヴィラン(・・・・)たる「カースドプリズン」相手になぁ!」

相手は文字通り全米最強の「ミーティアス」使い、付け焼き刃どころか使い始めたのは昨日から、というセロハンテープで腕に貼り付けただけの即席「カースドプリズン」使いでどこまで食らいつくことができるやら。だがこっちも義理と貸しでこんな場所に立っているんだ、結果がどうであれ仕事は果たす。
ダイアグラム7:3でミーティアス有利というクソみたいな相性関係で全米最強のプレイヤーに突貫しなければならない、思わず浮かび上がった言葉を口に出してしまう。

「──────どうして」











この「深淵盟都ルルイアス」において、世界の理は「反転」する。水中に生きる者たちはこの海底都市にて空を泳ぐ、地上に生きる者たちはこの水没都市において地上が如く振る舞う。水陸両用たる相方は今でこそ「こちら側」に合わせているようだが、その気になれば空中を泳ぐことも可能であるらしい。であればこそ、それはこの都市の四方に鎮座する四体のモンスターもまた同じ道理であり、俺と相方は宙を泳ぐ「天女(バケモノ)」との苛烈な戦いを繰り広げていた。

「アラバ! こっちに追い込め!」

「無茶を言ってくれるな! 一歩間違えれば俺は奴に頭から食われるんだぞ!?」

「食われたくなかったらこっちに寄せろっつってんだよバーカ!」

美しい女性の顔をした頭部が頭頂部から八等分に裂け(・・)、明らかにその質量を増した人の頭部に擬態していた八本の触手が宙を猛スピードで泳ぐアラバへと襲い掛かる。時に回避し、時にその手に持つ刀で切り落とすことで触手に対処する相方ではあるが八つ同時の猛攻に対処できるほどではない。このままでは捕まることを理解したのか、向きを変えて俺の方へと突撃してくるアラバに対し、こちらも双剣を構えて迎撃の準備を整える。

「よーし………追い越せ!」

「ああ!」

猛スピードで泳ぐアラバが俺のすぐ側を通過した瞬間、光を帯びた双剣が閃き触手に斬撃の連打を浴びせかける。一本一本に攻撃を当てていたのでは追いつかない、バックステップで「間」を稼ぎつつ一撃で二本を切り裂く、腰のひねりで勢いをつけて二撃で四本を切り落とし、その勢いを殺すことなくスピンするように身体を回して三撃で六本を切り断つ。一本は既に切り落とされているので残り一本、こちらは割と無茶な挙動のせいであと一撃につなげられない……だがその点に心配はない。

「おおおおお!!」

俺と交差したアラバはただ逃げていたわけではない、本人曰く「直線ならともかく立ち回りであればそこらの魚人族には負けない」と豪語するだけあり、最低限の動きで加速を続けていた鮫人の刃が残る一本の触手ごと天女(クリオネ)型の「封将」の腕を切り落とした。

「─────────!!!」

青みを帯びた黒い血液を撒き散らし、優美なドレスのごとき翼足のついた腕が地面に落ちる。金切り声の絶叫を上げた天女は空に浮かぶ力を失ったかのように腕のあとを追って地面に落ち……恐るべき再生力で復活した頭部が見上げた先には双剣を構えた半裸の鳥頭と、刀を構えた全裸の鮫頭を見る。

「お前のあとに残り三体と大ボスのタコを倒さなきゃならないんだ、疾く迅速に死んでくれ」

「悪いな盟主の眷属よ、俺は見ての通り肉食でな」

「海藻食ってたじゃん……ってかこいつ食べるの?」

「肉(を好んで)食 (べるの)でな……いや食わんぞ!?」

その顔はあくまでも擬態であって、ゲーム上種族的にただの人間である俺と、あきらかに半魚人だが一応「人間」であるらしい相方の顔とはそもそも備わっているものからしてまったく異なる。極論手のひらに顔の落書きを描いているだけのようなもので、それ(・・)に視覚も聴覚も存在しない……だが確かにその顔は恐怖に引きつっていた。

「サンラクまずいぞ! やつらがなだれ込んできた!!」

「ボス戦が終わったからここはボスエリアじゃないですよってか……!? 悪い、上まで引っ張り上げてくれ!」

ドロップアイテムは忘れずに回収し、大至急この場から離脱する。瞬く間にそれなりの広さがあったバトルフィールドがフジツボゾンビと人型の魚共によって埋め尽くされていく光景を眼下に、俺は思わず呟く。

「──────どうして」








「どうしてこうなった!!」
データあぼん対策はした、持ってくれよ書き溜め……!
+注意+
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