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シャングリラ・フロンティア〜クソゲーハンター、神ゲーに挑まんとす〜 作者:硬梨菜

旅する狼よ、大志を抱け

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着飾る泥人形に鉄槌を

「クソゲーやりすぎて昨今のゲームの流行に俺が遅れてるだけなのか……? 自己再生エネミー多すぎだろ……」

蠍といい、オメガ箱といい……自己再生エネミーってもっとこう、頻繁に出るようなやつじゃないだろう。
ブロックで雑に人の形を作ったようなやっつけデザインのくせに、AIが中々に優秀なやつだった。まさか腕を自切して囮にしつつ、自己修復を試みるなんて器用な真似をするとは。雑な組み上げ方だからこそ、関節パーツがガバガバになったプラモデルよりも簡単に身体を切り離したり再度くっつけたりするものだから、予想以上に手間取ってしまった。
だがお陰さまで新たに習得した、及び次の段階へと進化したスキルの試しもできたから差し引きプラマイゼロ…………いや、気持ちマイナス寄りかな。
とはいえ、やはりレベル99の力は凄まじい。二十分という時間がかかったのは仮にもレアエネミーであることと、ソロ討伐だったということもあるが、逆に言えば二十分間戦い続けることができるスペックを俺が得たということだ。
二十分間戦ってカスダメ以外ダメージらしいダメージを受けることなく、そもそも戦闘したこと自体がロスであることに目を瞑れば、現状のステータス、スキル、装備の組み合わせにおいて最速で倒せたと自負している。
ドロップしたアイテムはよく分からないパーツ系アイテムだったが、それはビィラックに見せればいいだろう。俺は見上げた先の巨大骨格の末端、様々な残骸が積み上がって道を塞ぐこのエリアの出口へと駆けていく。

「そろそろエリアボスだな……」

オーバドレス・ゴーレム。その特性上身にまとったガラクタや瓦礫を攻防の両方に利用し、ランダムで肉体の特性が変更され、しかもある一点を除いて全身が炸裂装甲(リアクティブアーマー)のような状態であるためにダメージがまともに通らない………だがプレイヤー達に幾度も打倒される中で判明した「弱点」により、アプデ以前までは終盤エリアのボスであったオーバドレス・ゴーレムは今では全てのプレイヤーが一番最初に戦うことになる第一エリアのボス「貪食の大蛇」以下とまで言われてしまっている。
走り抜けた先、去栄の残骸遺道の終点たる巨大骨格の尻の端……何か巨大なものが潰れた(・・・)上で瓦礫が積もったような。そしてその瓦礫の山のど真ん中に空間を作るように丸くぽっかりと開いた円形のフィールド、それこそがオーバドレス・ゴーレムの住処であり、プレイヤーが越えねばならない最後の関門だ。

「他のプレイヤーの姿はなし、運がいいな」

迷うことなくボスエリアへと飛び込み、湖沼の短剣【改二】を構える。俺の方がレベルが上な以上、兎月はその効果を発揮することができない。帝蜂双剣はそのデザイン上「斬る」モーションが得手ではない、煌蠍の籠手(ギルタ・ブリル)はある理由から今は使わない。身軽さと取り回しを加味して斬首剣も除外され、ファイナルアンサーとして湖沼の短剣が選ばれたわけだが……おっと、どうやらボスのお出ました。
見据える先、このエリアの出口を塞いでいた瓦礫の山が突如として崩れ始める。だがしばらく見ていればそれが自然現象の崩落でないことはすぐに分かる。
なんてことはない、それは壁などではない。不躾な侵入者に気づいたこの場所の番人(家主)が起き上がったのだ。土砂崩れではないそれはその下半身が溶けた上半身のみの人型を保つ、泥のような身体に幾重にも纏った瓦礫がそれの動きに連動して蠢動している。
まず最初に感じることは……でかい。リュカオーンや騏驎の大きさをはるかに上回るその巨体は、もはや山を相手しているようにすら感じる。そしてその認識は間違っていない。

これから俺は山登りをするのだ。

「確か記録に残ってる限りじゃ討伐最速タイムは一分らしいが……TA(タイムアタック)がてら、目指してみようか一分切り!」

もはや恒例の開幕スキル盛り盛り。点火(イグニッション)自傷加速(ニトロゲイン)連打、さらに加速クライマックス・ブースト……お約束コンボに加えて新たなスキルを連続で発動していく。
かつてはスキルレベルの上昇が発動可能回数であった「艘跳び」スキルは進化したことによって三十秒間跳躍が強化され続ける「遮那王憑き」を起動。実質的にバフスキルへと変貌したことで発動タイミングや使用方法が大幅に変わった。
重ねて武器を装備している場合に武器による攻撃補正を強化、及び武器の耐久消耗率を軽減する「武頼闘気」起動。修行僧(オイカッツォ)泣かせのスキルだな、ざまぁ。
これ以外にも全体的に立ち回りに用いるスキルばかり保有する(サンラク)の機動力はほぼ俺の理想を実現するところまで到達した。オーバドレス・ゴーレムの至近まで到達した俺は、瓦礫同士が擦れぶつかり合う不協和音を奏でながら俺をボディプレスで圧殺せんとする巨体を見上げて笑う。

「十五秒、まずは背中に回り込む……ここで独自チャートだ!」

致命の術を極めることで奥義は秘奥へと変わった。かつて致命刃術【水鏡の月】の名と、斬撃のみを背後へと飛ばすスキルであったそれは致命秘奥【ウツロウミカガミ】の名を得ると同時に、その性質を真逆へと反転させた。
斬撃(ヘイト)を背後に飛ばすのではなく、斬撃(ヘイト)のみをその場に残す。
すなわち姿なき(デコイ)、俺という本体が背後へと回り込んでいるにもかかわらずオーバドレス・ゴーレムは執拗に俺がいた場所にボディプレスを放ち続ける。本来はヘイト管理をタンクが行い、その間に本命の軽戦士を援護する形なのだろうが……今の俺はそれを単体で達成可能だ。
ラビッツ名誉国民の俺が遮那王憑きの効果で兎のように跳ねながら背後へと回り込んでいるのは皮肉か、因縁か。だが背後へと回り込み、見上げた先にはクレーン、屋根、柱、割れた壁の一部、剣、見たことない形のビークル、何かの砲身、三角木馬ゴーレムと思しきパーツ……ああ、同族も容赦なく身体の一部にしてしまうのか、恐ろしいな。
泥に飲まれ、巨人の一部と化した残骸。これこそが残骸遺道なのかもしれないこれから俺が昇るオーバドレス・ゴーレムの背に視線を巡らせ、ルートを割り出す。

「二十三秒、五秒で登り切る!」

遮那王憑き効果終了まで残り七秒、二秒で必要スキルを発動して五秒(300フレーム)登山の用意を至急整える。
不安定な足場でも快適なムーブを、オフロード起動。地面から足を離した状態での行動で消費するスタミナを軽減します、アクロバット起動。入射角? 屈折角? ガン無視で跳弾します、リコシェット・ステップ起動。足場がない? だったら空を踏めばいいじゃない、スカイウォーカー改めフリットフロートは場合により起動予定。

「二十五秒、レッツゴー!」

スタート……三角木馬の縁を踏みつけ跳躍。一秒経過、割れた窓枠を蹴ってさらに跳躍。二秒経過、柱を滑り剣を踏みしめ、未知のビークルのハンドルを即席の足場に。三秒経過、邪魔な砲身は真横に飛んでフリットフロートで宙を踏み、鋭角な迂回で最短経路を往く。四秒経過、背後へと追い抜いた砲身を踏みつけ跳躍し、湖沼の短剣をわずかに露出したオーバドレス・ゴーレムの地肌に突き立てスキル起動。
登攀時の刺した短剣に補正を付与するに加えて加速を帯びるグレイトオブクライム、それに加えて「昇る場所が険しいほど自重負荷が減少する」というマゾ御用達効果が追加されたトライアルトラバースによって登攀とは思えぬ軽やかな動きで足場のない泥肌をよじ登り、ついに目的座標……クレーンの上へと到着する。

「三十秒、こっからが本番だ……!」

見た目こそ鉄骨を組んだクレーンのようにも見えるが、その先端には巨大なホイールがくっついている。あの、なんだっけか……あのやたらでかい巨大重機。だいたいハリウッド映画で派手に炎上したり爆発したりするあれだ。
この巨大掘削ホイール……数多のプレイヤーの検証によって破壊できることが判明している。そして破壊されたホイールは物理エンジンに従って真下…………すなわちオーバドレス・ゴーレムの脳天に激突する。
なんちゅーアホな弱点と思わなくもないが、登攀スキルと破壊スキルを両立しなければホイールの破壊ができない以上はデザインとしては破綻してはいない。
ホイールは自転車のフロントフォークのようなパーツによって左右から固定されている。この二つのフォークを破壊することでホイールが下に落ちるわけだが、オーバドレス・ゴーレムが前傾姿勢の時しかこの攻略法は意味をなさない。
であればどうすればいい? 簡単だ、起き上がる前にコトを済ませればいい。

「三十三秒、まずは右側からだ……!」

攻撃スキルを重ね、自画自賛したくなるような会心の乱舞を錆びた金属に叩きつける…………!

カカカカカカンッ

「やっべ思ったより硬い!」

チクショウ、強化の足りてない湖沼の短剣じゃ役不足だったか。煌蠍の籠手に切り替えてラッシュを叩き込む。
四十五秒、右側のフォークを破壊する……間に合うか十五秒!? いや、走って左側に回ったんじゃ間に合わない……であるならば!

「【発射せよ(Firing-up)】!!」

オメガ箱との戦いで一通りの性能は把握している。拳を真下に突きつけ叫んだ音声を認識し、左の籠手が起動する。籠手の各部がスライドし、その内側に秘めていた蒼銀に輝く水晶群蠍の水晶が充填された魔力に応えて輝きを増す。
そして直後、人体の拳で例えるならば丁度中指の中手骨から小さな煌めきが足元、かろうじて左側に支えられて崩壊を耐える右フロントフォークの亀裂に突き刺さる。むろんこれで終わるような緩い武器ではない、これは種蒔き(・・・)だ。撒かれた種は自然の摂理に従い、成長する………!

「さぁ……飛ぶぞ。【成長せよ(Growing-up)】!!」

煌蠍の籠手……というよりも、遺機装共通と思しき説明文に曰く。

───神代において、何事において掲げられた理念は「制御」と「活性」であった。旧き武器は用いられた素材の力を御し、その真の力を活性化させることで様々な力を武器という形へと収束させたという。

であるならば、水晶群蠍の力を宿す左拳が持つ力とはすなわち。

「射出した晶弾(クリスタルバレット)を急速成長させて(ピラー)を生成する……!」

左拳が足場を叩く。そして俺自身が嫌という程体験した水晶群蠍の感知能力はこの拳と、水晶に継がれた。
振動を感知した晶弾が一瞬自ら光を放った瞬間。俺の身体は真下から射出された巨大な柱によって打ち上げられ、宙を舞った───!
宙 を 舞 う 変 態


ハリウッドとかで派手に炎上したり爆発する巨大重機、いいですよね……!
ちなみにオーバドレス・ゴーレムが背中にくっつけてるのはバケットホイールエクスカベーターです、いいですか? バケットホイールエクスカベーターです! ゴグマ◯オスっていうのは厳禁の方向でよろしくお願いします!

ちなみにオーバドレス・ゴーレムTAの最速記録は複数人パーティによるものです、一人でやってる主人公は頭がおかしいです。というか挙動がおかしいです。
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