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シャングリラ・フロンティア〜クソゲーハンター、神ゲーに挑まんとす〜 作者:硬梨菜

旅する狼よ、大志を抱け

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米の代わりにライスを食べる的な

「…………………あー」

金蠍こと金晶独蠍ゴールディ・スコーピオンとの激闘、そして衝撃的な絶望に打ちひしがれた俺はとりあえずシャンフロから逃亡することにした。
時計を見れば時間は午前五時……うん、まぁ、早起きは健康だから……不眠は不健康だが。

「はぁー…………」

自棄酒ならぬ自棄エナドリをキメ、ゾンビのような足取りで部屋を出て台所へと降りていく。

「あれ、おにーちゃん起きるの早いね? 駄目人間謳歌してるくせに」

「うっせ、青春の半分をバイトに捧げてるやつに言われたかないよ」

「もう半分が綺羅星の如く輝いてるから差し引きプラスだね、人生最高!」

我が妹ながら強いなぁ。
とはいえほぼ毎日ゲームにログインしている様は確かに駄目人間かもしれない、オイカッツォのようにゲームを仕事にするならともなく。

「ていうかどしたの? 露骨にしょぼくれてるけど」

「いやー……なんというかなぁ、お前的に言うならめっちゃデザインの気に入った服を必死にお金貯めて買ったら実は赤ん坊用の服だった、的な……」

「大丈夫? 葉緑素足りてないんじゃない? 日光浴したら?」

「ゲームやり過ぎて根が張ってるってか、はっはっは……誰が植物だ」

べしりと瑠美の頭にチョップを入れつつ、俺はあの瞬間の絶望を思い出す。










なんてことはない、薄々と嫌な予感はしていたのだ。ただそれが見事的中しただけのこと。
パワード「スーツ」である以上、規格外特殊強化装甲が頭、胴体、腰、足の四パーツから構成される「防具」である以上、リュカオーンの呪いが適用された……ただそれだけのことを失念していた俺のポカミスだ。

「ただやっぱりなぁ……」

必死こいて修理に奔走して、結果俺だけパワードスーツ着れません。は中々に堪えた。さらに言えば規格外武装の殆どが「強化装甲を装備することを前提」とした装備であったことが判明したのは泣きっ面に蜂、起き上がりにハメ技である。
唯一の救いは戦術機獣達は普通に起動できるということだが、マイナス2にプラス1を足してもマイナス1なのだ、しばらくシャンフロにログインする気力は無かった。

だが一番悔しいのは、リアクターが修理されたことで俺はパワードスーツを着る事が出来ないのに、あの外道共は普通に着る事ができると言う事実が何より腹が立つ。その事実に気づいてしまった事で、いっそしばらくログインせずにいる事であいつらもパワードスーツを着れなくなってしまえ……なんてことも考えたが解決にはなっていない。
もう一つ衝撃的事実があったのだが、そちらの方はまだどうにかなりそうなのでそこまでのダメージはない。

「たまには気分転換も必要かぁ……」

「そうだよおにーちゃん、失敗したなら何かで埋め合わせればいいんだよ。さっきのよくわかんない例え話なら似たようなデザインの服で着飾ってみたりとか、ねっ」

「代用……気分転換……成る程、参考になった。ありがとな瑠美」

少しだけ晴れた心に、俺は瑠美に感謝の言葉を投げかけつつ、自室へと戻ったのだった。



「…………いや、結局ゲームじゃん」











「ふぅむ……そういやこれがあったな」

シャングリラ・フロンティアのゲームチップを本体から抜き、パッケージにしまってゲーム棚に置きつつ、俺は一本のゲームのパッケージをしげしげと眺める。
基本的にシャンフロ以前はクソゲーばかりやっていた偏食家(ゲーマー)であった俺だが、実は購入したゲームの中には別にクソゲーではないものがあったりする。
そんな数少ないクソではないゲームのうちの一つがこれ……

「ネフィリム・ホロウ……」

カテゴリとしてはロボットアクションゲーム。
舞台は「突如空から巨人が落ちてきて、なんだかんだあって文明が半壊したパラレルな地球」というもの。
プレイヤー達はかつて空から堕ちてきた巨人を乗りこなし、三勢力と時に争い時に協力する……というどちらかというと硝煙臭いタイプの個人的評価としては良ゲー(・・・)だ。
であれば何故俺がこのゲームを持っているのか、それはこのゲームが過疎っていることと関係している。

このゲーム、操作が難しいことこの上ない。操作性が悪い、ではなく操作が複雑なのだ。
オイカッツォやペンシルゴンほど親交があるわけではないが、それでも会えば挨拶を交わす程度のクソゲー仲間から「一人でボーカル、ギター、ベース、キーボード、ドラムをこなすような操作性のゲームがある」と紹介され、購入したのがこのゲーム。
確かにその例えはあながち間違いではなかった。作中におけるロボこと、目を閉じた巨人と融合することで操作する機衣人(ネフィリム)搭乗席(コクピット)に乗り込んで操作するタイプではなく、文字通り機体と融合一体化するタイプなのだが、それが原因で兎にも角にも操作が忙しすぎるのだ。

例えば両肩と両腕にガトリングを装備していたとしよう。これが搭乗席(コクピット)タイプであればレバーを引くなり、ボタンを押すなり、タッチパネルを操作するなりでガトリングを起動するわけだ。
だが機衣人(ネフィリム)は一体化型、要するにゲーム内でロボットというアバターにログインするようなもので、四門のガトリングをまさしく自分の身体のように扱わなければならない。
即ち、プレイヤーは自分の脳みそでロボの機動、行動、武装展開などのあらゆる行動を同時に制御しなければならない。
CPUに頼ってオートで武装を動かすこともできるが、代償は対人戦の勝率である。
少なくともゲーム内ランキング戦で上を狙うのならばマニュアル操作で高速機動しながら偏差射撃で当てるくらいの技量が必須であり、成る程確かにゲーム評価サイトで見かけた「多重人格者向けゲーム」というのもむべなるかな。一人乗りのくせに注意を向けるべき事が多すぎるのだ。

「とはいえ慣れたプレイヤーなら問題なく操作できるし、ストーリーもゲームバランスも普通に良いからなぁ」

総評を言うのなら、プレイヤーとして参加するハードルが娯楽(ゲーム)とは思えないほど高いものの、見ている分には楽しい良ゲーと言える。
そう、言うなれば過疎ゲーにおける暗黒面(ダークサイド)のベルセルク・オンライン・パッション、光明面(ライトサイド)のネフィリム・ホロウ……便秘での知り合い故、薦めてきた理由は分かるが俺から言わせれば、ネフィリム・ドールにはプレイヤーに唾を吐き捨てるような邪悪さが足りない。
便秘を見てみろ、運営が手綱(修正)を諦めたせいで暴れ馬が名状しがたい何かにトランスフォームしてるんだぞ。

とはいえ、瑠美の言葉からロボに飢えた俺の無聊を慰めるには、やはりロボに乗るのが一番。
もう一本、ロボットアクションゲーはあるのだがそっちは色々と難ありのクソゲーなので今は除外する。

「このゲームなんのキャラでプレイしてたんだったか……まぁいいや、見りゃ分かるか」

久しぶりにゲームをプレイする時の感覚はニューゲームとはまた違うワクワク感があるな。









「あー、そうだそうだ、カワセミマンだったなそういえば」

ログインし、久しぶりにネフィリム・ホロウに於ける「サンラク」となった俺は、自身の機衣人(ネフィリム)が格納された倉庫を訪れていた。
シャンフロ程に狂った現実再現度のゲームではない故にそんなものはないが、しばらくの間やってないゲームだったから、機体にも埃が積もっていそうだ。

「久しぶり、「キングフィッシャー」……うん、いつ見ても奇跡的にマッチした初期カラーの組み合わせだ」

それは俺がこのゲームをプレイしていた当時、ふと「加速全ブッパにして武装も一撃で大ダメージを与えられるものを最低限にすれば楽しいのでは?」と最高に頭の悪い理論で組んだ機衣人(ネフィリム)こそがキングフィッシャーだ。
天から堕ちた巨人、ネフィリムの中でもその身体を折りたたむ事が可能な可変型骨格をベースに装甲を極限まで絞ることで得た最速の翼は、巨人の姿から翡翠の姿へと変形したならば、なんと初速の時点で下手な中量級機衣人の最高速を超え、およそ五秒あれば超高速の世界へと無理やり突っ込む。
その性質上、ワンゲーム五分を持ちこたえられない稼働時間三分という極めて悪い燃費と、たった一つのパーツでも破損すると機動力が大幅にダウンするという弱点を抱えたロケット花火みたいな機体ではあるのだが、つまり三分以内にノーダメージで相手を倒せばいいのだ。

「よくよく考えたらパワードスーツとロボットって微妙にと言うか全然違う気がするが……まぁ気分転換だからなんでもいいか」

大事なのは気分転換、傷心のメンタルを別の事で発散するのだ。根本的に転換してない気がするがそこはご愛嬌という事で。
そんなわけで、俺は早速対人環境……ゲーム内に於ける所属組織「ネフィリム・カンパニー」のエントランスへと向かうのだった。













「旋回が甘い、リココンが雑、フェイントがシンプルすぎる……ふぅ、やっぱ鈍ってるなぁ」

遠距離特化という、ともすればヘイト対象になりかねないような対戦相手を撃墜した俺は、今の試合を振り返って自身の動きが鈍っていることにため息をつく。
最後にプレイしたのは確か数ヶ月前、あの時はランキング戦で一気にトップを目指すぜ! 的なハイテンションで暴れ回ったものだが、過疎ゲーとはいえやはりにわか仕込みで頂点を取れるほど甘くはなかったらしく、ランキング一位のプレイヤーを越えることはできなかった。

「確かあのプレイヤーの名前は……」

操り手(パイロット)「ルスト」が貴方に決闘(デュエル)を申し込みました。受諾しますか?』

「そうそう確かルスト…………噂をすれば影ってか」


叩きつけられた挑戦状に書かれたルストの文字、それはかつてのランキング戦であと一歩及ばず引き分けたランキング一位のプレイヤーのもの。
あのわざとアシンメトリーに配置した追加ブースターによって、宙を舞う枯れ葉のような動きを可能とする赤い機体に俺はあと一歩及ばなかった。結果としては引き分けだったが、体感敗北のようなものだ。
あの時期、大作シリーズ最新作がクソゲーと判明して大炎上していなければこのゲームをもう少し続けていたかもしれないくらいには今もなお悔しさが残っている。

「もう少しリハビリしたいところだったが……一期一会に千載一遇、断るわけにはいかないだろう……!」

俺は迷うことなく承諾する。そして暫くして、あの日見た赤い鳥が俺の前に姿を現わす。
あの日見た時と比べて、塗装が派手になっている事といくつか武装が違う事を除けば、そのデザインは間違いなくランキング一位プレイヤールストの機体「緋翼連理(ヒヨクレンリ)」だ。
不死鳥の如き赤い炎の塗装が施された緋翼連理(ヒヨクレンリ)に対するは初期カラーの翡翠(キングフィッシャー)、というのも中々にドラマティックだが、俺もルストも求めているのは雰囲気ではない。

「よっし……カップ麺が出来上がるより速く倒してやるぜ!」

荒廃した都市に、赤と青の鳥が飛翔する。
ルストが二度目の防衛戦を行なった時のランキング戦ですが、はぐれメタル並に攻撃が当たらない超高速変形機体が辻斬り&スナイプをかましてくる、という最速初見殺しで当時の環境トップであった「重装甲クアトロキャノン」はカワセミに入れ食いされまくりました。
ほぼにわか仕込みの主人公が全勝無敗でルストと対戦できたのはそれが理由です。
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