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異世界の神子は、逆ハーを望まない  作者: 一花八華
第一部
4/32

3




「ヴォルフ……あまり ベタベタと触らないでくれる?穢れるから」


 どうも、絶賛毒舌モードの私です。


 何故って?護衛の1人である隻眼の騎士であるヴォルフが、やたらめったら私に触れてくるので、口撃が止まらないのです。


「その衣装、神子専用だろ?俺が触ったくらいで汚れたりしないから大丈夫だって。自動で綺麗になる筈だぜ?それ」


 ー違う、私が言ってるのはそういう意味での汚れじゃない。


「貴方に触られたくないの。やめてって言ってるでしょ! 」

「ん? でも歩き疲れてきてるだろ? 歩き方変だし、少し甘えなって」


 言葉の刺をスルリと躱し、さりげなく腰を抱き、引き寄せる隻眼男。


 すごいね!そのテクニック!女慣れしてるよね!私、真逆だから!異性に慣れてないから!言葉とは逆に怖くてぷるぷる震えちゃうよ!恐怖と混乱で更に毒を吐きそう……


「ん? 何? お嬢さん もしかして 男慣れしてない?」


 そんな私の真横で、その様子を面白そうに見つめてくるヴォルフ。


 その視線に居心地の悪さを感じる。


 どんなに邪険に扱い言葉のナイフを浴びせても、まったく意に関せず迫ってくる。すごいとしか言いようがない。


 というか、神子に迫る護衛兵士って……国的にこれ大丈夫なの?


「俺、出会いって大事にしたいんだよね。お嬢さんの艶やかな黒い髪も、闇夜のような黒い瞳も、陶器のような滑る白い肌もすげぇ魅惑的」


 いい顔でそう告げる誑し騎士。


 この人、息を吐くように 口説いてますよー?

 こんな剣士が代表で大丈夫ですかー!?国民のみなさーん!!



「お嬢さん。なんの香水つけてんの?」

「は? そんなものつけるわけないでしょ」


 男に対する恐怖心を隠し、キッと睨み返す。大丈夫。私は大丈夫。怖くないし平気。男なんて平気だから……


 睨みあげる私の様子を気にも止めず。ヴォルフは、髪を一房すくい上げ そっとくちづけてきた。


「へぇ。何もつけてなくて、こんな香り振り撒くなんて……」


「……悪い女だな」


 ニヤリと口角をあげ、挑発的な視線を向けられる。





ーーーーー

 思考が停止しかけた。

 思考どころか、呼吸が……心臓が止まりかけた……。




 なんなのこの人!?

 私、男性恐怖症なんですよ!?男慣れしてないどころじゃないんですよ!?


 怖い通り越して 頭パニックだよ! どうすればいいの?これ!?


「うううっ」


 ダメだ。キャパオーバー。手に終えません。全面降伏。泣きそう。誰か助けて。




「ヴォルフ……いい加減にしないか。神子殿が困っている」


  対処に困っていると、低音ボイスが頭から落ちてくる。


「流石に目に余るぞ……」

「へいへい。わかりましたよ。大人しく引き下がりますって。ルドルフの旦那」


 ヴォルフと私のやり取りを見かねて、もう1人の護衛騎士であるルドルフさんが、間に入ってくれた。


 良かった。ヴォルフ(チャラ男)もやっと離れてくれる。


 ほんと、心臓に悪いよ。ありがとう!ルドルフさん!心の中で、強面怖い!って思っててごめん!


 強面でガタイの良すぎるルドルフさん……視線合わす事もできず、心の中でお礼を告げる私を許して下さい。


「あーほんと見苦しい。何処でも見境なく盛っちゃって。恥ずかしくないの?万年発情狼」


 後方で、魔術師の少年。セシル君が毒を吐く。


「なんで、そんな女に盛るのかよくわからないよ。黒髪黒目なだけじゃん。魔力が高いからってただそれだけ。それを活かせるわけでもない、垂れ流しの能無し女なのに」


 最年少の彼は、私に負けずとっても毒舌だ。そしてそんな彼は、何故か事あるごとに私を貶してくる。なんでだろ。何か気に触らない事でもしちゃったのかな。


 一緒に旅してるんだから、できれば仲良くしたいんだけど。


 まだあどけない少年で、女の子みたいな外見のセシル君は、この中で 唯一 緊張せずに接する事のできる、貴重な人材なのに……。


「お子様には、お嬢さんの良さがわからないんだな。可哀想に」


 やれやれと言った風に首を振るヴォルフ。


「は?僕を子ども扱いするな!これでも僕は、魔族のきゅうて……」

「……セシル」


 カッとなって噛みつくセシル君を、ヴォルフが 一睨みする。その底冷えするような低い声に、私も思わず身が竦む。


「セシル。お前も神子殿への口のきき方を改めろ」


 ルドルフさんが、窘めるように告げる。




「……口がすぎた。……悪かったよ……」


 渋々とセシル君が謝罪する。その顔は不満がいっぱいだ。


 私だって不満と不安でいっぱいなのに。


 口を開く度に毒舌を吐く、私とセシル君。息を吐くように口説き、やたらと触れてくるセクハラ男。無口で、その大きな存在が怖い寡黙騎士。



 こんなんで、魔王城に無事到着できるのかな。元の世界に戻る為とはいえ、前途多難だよ。





ーはぁ。神様。せめて心穏やかに旅がしたいです。



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