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異世界の神子は、逆ハーを望まない  作者: 一花八華
第一部
15/32

12


「お嬢さん……ごめん。俺……あんたになんて事を」


 ヴォルフが、何か言ってる。謝ってる?謝るって……何を……あぁ。キス。キスをした事?無理やり……あんな風に。酷いキスを……。


 ……謝るくらいなら。謝るくらいなら、はじめからしないでよ!!


 ふつふつと沸き上がる怒り。気付いた時には、ヴォルフの頬に向けて、思い切り手を振り上げていた。ゴンドラが大きく揺れる。背中を向けていた、船頭のおじさんが、目を見開いてこちらを振り返える。


 スローモーション。

 ゆっくりと瞳に空がうつり。水飛沫が虚空を舞う。


 ーザッパーン!!


「うわっ」

「きゃあ!」

「ひえぇっ!」


 三者三用の声をあげ。私達は、水に投げ出された。





◇◇◇




「ごめん」

「ほんとごめん」

「ごめんなさい」

「すみませんでした」


 目の前には、頭を垂れ しょんぼりとしたヴォルフの姿。


「お嬢さんが本気で嫌がる事は、するつもりなかったのに」


 びしょ濡れのまま、道の端で頭を下げ続ける姿に、周りの視線が痛い程突き刺さってくる。


「はぁ」


 項垂れる姿が、なんだか捨てられた仔犬みたい……。


「犬に噛まれたとでも思って忘れる」

「犬!?」

「なに?」

「いや……。別に……。なんでもないです」

「とにかく! 今回は許すけど、二度めはないからね! 二度とこんな事しないで!」


 指を立てて、怒りを告げる。された事は許したくない。けれど、何時までも怒っていても仕方ないし。こんな姿で、人目に晒され続けるのもきつい。


「ああ。わかったよ。許してくれてありがとう」


 ほっとした表情で、こちらを見るヴォルフ。まだ怒ってるんですけど?でも、仕方ないか。許すしかないよね。


「くしゅん」


 くしゃみがでた。私も濡れたままだからか。


「ああ。お嬢さん、大変。早く着替えなきゃ!」


 そういうなり、ヴォルフは私の腕をとり、歩き出す。


「着替えるって言っても……何に……」

「ちゃんとお詫びさせて」


 そういって私をひょいと抱き上げ、足早に街の中を進みはじめた。


「ちょっと! ヴォルフ!」


 いった側からこんな事して……ねぇ。ほんとにちゃんと反省してる?


 羞恥と高鳴る胸で、真っ赤に染まる顔を隠すように、私はソレをヴォルフの逞しい胸元に埋め誤魔化した。



◇◇◇




 ヴォルフに連れられ、とあるお店に入った。



「これとこれとそれ。あとこれも彼女に」


 慣れた手つきで、ヴォルフは服を選んでいく。

 街の中にある、質素でそれでいて高級感漂う佇まいのお店。置かれている調度品は、目利きなんかできない私でも、お高い物だと判断できる。

 なんだか場違いなんじゃ……。

 不安げな表情の私に、ヴォルフは 心配しなくていい。と視線を向ける。


「それと、シャワーを借りれるか?ラッセヌで落ちた」

「ええ。ご用意できますよ。どうぞこちらへ」


 え?シャワー?


「ラッセヌ川に落ちただろ?海水も混ざっているから、ベタベタしてるはず。ちゃんと洗い流した方がいい」


 ヴォルフに言われて、ベタつく肌に気付く。 確かにこのまま過ごすのは、気持ち悪いかも。


「それじゃ、また後で。何も心配しなくて大丈夫だから」


 くしゃっと頭を撫でられる。なんていうか、色々慣れてるよね。ほんと。きっとこうやって色んな女性を口説き落としてきたんでしょうね。なぜだろう。なんだか面白くない……。


「そんな顔しなさんなって」


 困った表情を浮かべ、笑うヴォルフ。

 なら、こんな顔させないでよ。


 そう不満を口にしそうになり、私は慌てて顔を背けた。



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