11※表現注意。読み飛ばし可
ちょっと過激な表現を含みます。苦手な方は読み飛ばして下さい。
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キス……されてる。
突然の事に頭が追い付かない。荒々しく押し付けられた唇。何度も何度も角度を変え、酸素を、思考を奪っていく。息苦しくて、耐えきれなくて、口元が緩んだ瞬間。ヴォルフの舌がぬるりと侵入してきた。生ぬ暖かく柔らかな感触。
嘘でしょ!?なんでっ!?やだっ。
抵抗も虚しく、彼は私の中に入ってくる。浅く深く。口の中を這う舌。頭の芯がじんと痺れる。こんな感覚知らない。なにこれ。だめ。このままじゃだめ。
ジタバタと踠き、逃げ出そうとする私の頭を、ヴォルフはぐっと捕まえ離さない。固定されたまま、何度も貪り、唇を噛まれ、舐め取られる。
舌を絡められ、上に下にそれは交わる。息ができない。苦しい。痺れる。ぞわぞわする。はぁはぁと短い呼吸音。ちゅ。くちゅ。ちゅぱっ。耳に脳に痺れをもたらす水音。口の中を何度もなぞられ、奪われるように吸われ、吸い付くされ、与えられ、キスなのに、キスだけなのに……体に力が入らない。拒否したいのに。それができない。
セシル君の時と違う。荒々しく、情熱的なキス。
流されそうになる。身を委ねそうになる。それがとても怖いのに逆らえない。腰砕け、力の入らない身体を、ヴォルフはそのがっしりとした腕で抱き上げ、私の顎に節くれだつ手を添える。
「ふっ」
「はふっ」
「んん」
声にならない声が、口の端から溢れる。
「ヴ……ヴぉ…」
「ヴォル……ふっ」
「やめっ…」
「やめっ……て」
抜ける力を振り絞り、必死で言葉を形にする。
「やめて。お願い」
なんとか口にできた哀願。
その言葉に、ヴォルフは身を硬直させた。
添えていた手の力を緩め、重ねていた唇を離す。
涙に滲んだ私の瞳。それを見つめるヴォルフ。
「お嬢さん……俺っ……なんて事を」
その瞳には、後悔と懺悔の色が浮かんでいた。