悪魔召喚した。そのとき出てきた悪魔が好みでなかった場合の対処法。
ライラナ・ファールは悪魔を呼び出した。本とにらめっこしながら大きな魔法陣を描くことなんと三時間。
月夜美しき地上に現れたそれを見て彼女は言った。
「すみません、チェンジで」
右手をくいっと回転させながらの言であった。
『……は?』
と言ったのは悪魔であった。
人にあらざる存在は言葉で言い表すこと不可能なくらい美しき造形をしていたが、それらが無駄になるような何とも呆けた声だった。
その目の前に立つライラナは恐れる様子はひとつもなく、顔をしかめてもはや悪魔さえも見てはいない。
「好みじゃないわぁ……ここに描いてあるのと全然違う。詐欺? 悪魔ってそんなに複数いるわけ?」
そして、ひとしきりぶつぶつ言ってからぽかんとしている悪魔を見る。
「あーほんとすみません。間違えました心よりお詫び申し上げますなので帰ってください」
『……お前の望みはなんだ』
「いえ、間違えました。呼んでません」
悪魔は我に返り文言を口にしたが、間髪いれずにライラナは手を横にふり首を振り、また本に視線を注いでいる。
『……お前自身の魂を対価とし我に差しだすのであればお前の望みを』
「あ、もしかしてこれ消せばいいのかな」
ざっ、とライラナが足で魔法陣の一部を擦った。
『叶え――』
悪魔は強制送還された。
ライラナは擦った箇所を直して再び悪魔召喚の儀式に入った。