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砕球!! 改稿6回目  作者: 河越横町
15/49

順位は関係ないでしょ!

更新遅くなりましたぁあああああ

すみませぇええええん汗


 遺跡フィールド。

 

 森林地帯の各所に大小無数の遺跡が存在するステージ。

 

 遺跡内部には様々な仕掛けがあり、拠点を使っての攻防が得意なチーム鵣憧せきしょうにとっては願ってもない展開だったが……。


(これ選んだの絶対耀じゃないわ! 耀はこんな性格悪いこと絶対しない!)


 蓮剛羽……あいつの仕業か! と、怒りながら。


 チーム鵣憧キャプテンの鵣憧猫夢理は、笑銃たちと合流を目指し、先を見通せないくらい密生する木々の間を縫いながら駆け抜ける。


(耀、楽しめてるのかな……?)


 このステージを選んだのはチーム鵣憧を嵌めるため。耀が拠点に向かっていることから、自分たちから点を稼いだ後は拠点に立て籠もるつもりだろう。


 こっちが眩しく感じるくらいキラキラした笑顔でプレーしている少女が、こんな勝ちに拘るような作戦を立案するはずがない。


 きっと、砕球エリートのあの少年に無理矢理従わされているのだろう。


 約1週間前、電話越しであんなに活き活きとしていたのに。

 

 今日だって、あんなに笑顔だったのに。


 全部、無理をしていたのだろうかと疑ってしまう。


【笑銃、もうちょい待ってて! すぐ行くわ】


 と、言ったところで、


「あら。あらあらあら! 誰かと思えば、デスわ!」


「……ちっ」


 神経をこれ以上ないくらい逆撫でする声に、猫夢理は鬱陶しそうに舌打ちし、視界に現れた金茶髪の少女を睨む。


「エイツ……ヴォルフ!」


 対する、アリスは周囲に球を浮遊させたまま立ち止まり、くすりと笑った。


 球操手が1人でいるというのに余裕すら感じさせる。


「セキショウさんじゃないデスか。そう言えば聞きマシたわ、3学期の期末テスト、2位だったんデスわよね? おめでとうございマスわ」


「…………は? なにそれ、嫌味?」


「まあ! 嫌デスわ~。他人の称賛を素直に受け取れないなんて心が貧しい証拠デス。ワタクシ、同じ猫好きとして、セキショウさんとは仲良くしたいと思っているんデスけれど……考え直す必要がありマスわね」


「同じぃ? 猫好きぃ?」


 聞き捨てならないと、猫夢理は表情を歪めながらアリスの髪型を指差す。


 猫の耳を模したような、頭に乗っかる2つの円錐形のお団子に言及する。


「だったらまず、その猫を侮辱した髪型をやめろ」


「あら野蛮。やめろ、だなんて口汚いデスわ」


「黙りなさいよ! いくら真似したって、あんたは猫になれないのよ!」


「なん!? 2位の分際で、ワタクシに説教するつもりデスか!?」


「順位は関係ないでしょ!」


 怒鳴られたアリスは涙目になりながら、ぷんすか怒り出す。


「ずるい、ずるい、ずるいデスわ! 猫さんへの気持ちなら、ワタクシだって負けてないはずなのに!」


「……ふふ。そうやって喚いてるほうがお似合いよ、王女様?」


 猫夢理は挑発するような笑みを浮かべる。


「てか、あんた、いつまでそのキャラ続けるつもり?」


「ハイ? ワタクシ、何か変なことしマシたか?」


「その『ワタクシ』とか『デスわ』とかよ。なに、その口調? どこの不思議の国から来たわけ?」


「学年2位の分際でキャロルを語りマスか!?」


「だから順位は関係ないでしょ!」


【ねこ、醜い口論してる場合ちゃうで! はよ、こっち来てやあ!】


【言われなくても今行くわよ!】


 転身した猫夢理はアリスをかわして、笑銃たちの元に走り出そうとする。が、瞬間、足元に銃弾が撒き散らされ、その場に釘付けにされてしまう。


 割り込んできたのは、チームエイツヴォルフの3人の選手だ。


「皆さん、ご苦労さまデスわ。それじゃ、あとはよろしくお願いしマスわ」


「「「はいですわ!」」」


 チームメイト3人に猫夢理を足止めさせたアリスは、その表情を鋭いものにして駆け出す。


(あの方向って……!?)


 アリスの向かう場所に気付き、猫夢理は目を見張った。




「まったく、ねこ先輩はなに油売ってるんすか!」


「まあまあ、アリスが相手やから」


 笑銃たちを乗せたオフロードカーが、森林地帯を逞しく走る。


 後部座席では、笑銃の錬成した屈強な軍人人形4体が背後から迫る剛羽に応射していた。


「見たか、蓮ジュニア! これが笑銃先輩の実力っすよ!」


「なんでてこが偉そうにしとんねん」


 笑銃は苦笑しながら、オペレーターと連絡を取る。


操子あやこ、合流地点このへんやんなぁ?】


【はい。風歌ふうかたちもすぐそこまで来てます】


「ほんと逃げ足だけは速いんやから……」


 と、笑銃が呆れたところで、少女たちのかしましい声があちこちから届いてくる。


「もう! 笑銃ちゃん遅~い!」


「我らは戦略的に切られたのかと思ったぞ!」


「これが味方に裏切られる気持ちかーって、なってましたよ!」


「文句ばっか言っとると、ほんまに捨てるで!」


「「「守矢先輩、助けにきてくれてありがとうございま~す!」」」


「まったく、どいつもこいつも、こういうときだけ調子いいっすね」


「そりゃお前もや、てこ!」


 笑銃は蛇行運転しながら、風歌、地球児と順に拾っていく。が、


【守矢先輩!】


 最後の一人である球操手の作家を拾おうとしたところで、白色の弾丸が飛来した。


 軍人人形たちは撃ち落とそうと射撃するが、突如加速した白色の弾丸に掻い潜られ――


「「「「「ミックぅううううう!?」」」」」


 日本人顔の軍人人形ミックが胸部を撃ち抜かれて爆砕した……!?


 他の3体に射撃を任せ、後部座席から飛び降り、身を挺して作家を守ったのだ。


「これで全員やな? 一先ず逃げるで!」


「首洗って待ってるっすよ、蓮ジュニア! 吹っ飛ばしてやるっすから!」


「拠点取れたら風歌たち最強なんだからね!」


「我らの真の力をとくと見よ!」


「これが逆転できると昂る選手の気持ち!」


 近場の拠点を目指して加速するオフロードカーの後部座席からは、それはもう威勢よく反撃の言葉が上がる。


 オフロードカーは、まるで鎚子たちの調子とシンクロするかのようにスピードに乗り、剛羽を突き離していく。


 しつこく銃撃されて進路を変更させられたが、もう追い付かれることはないだろう。


 巻いた。逃走成功だ。


 そのはずだった。


「うし、追い込めた」【勇美、頼む!】


【了解です!】


 狙われていた。


 逃走経路を、少女の前に誘導されていた。


ゲイ――」


【守矢先輩!】


【ッ、嘘やろ!?】


 オペレーターが気付いたときにはもう遅かった。


 オフロードカーのほぼ真横にて、おかっぱ頭の几帳面そうな少女――竜胆勇美が、だんと力強く一歩踏み出す。


 そして、半身になって引き絞っていた右手の槍を、50メートル以上離れた車に――視界にはっきりと捉えた的に、思い切り突き出した。


刺突ボルグ!」


 槍刺突。その意味は必中!


 槍先からまるで槍が伸びたかのように紫色の弓矢が発射され、オフロードカーを容赦なく貫き、爆砕させた。


「あかん!?」

「これ、まずくないっすかぁ!?」

「マジ意味分かんない!?」

「飛行能力を手に入れたぞ!?」

「気持ちぃ~」


 宙を泳ぐ笑銃たち。


 剛羽はその隙を逃さず、無防備な少女たち――鎚子と地球児を斬り捨てる。


「あなや!?」「ジーザス!?」


 ――チーム神動、2得点(内訳:敵選手2人撃破=1点×2)合計得点2点


『先制したのは意外にもチーム神動だぁ! このまま一気に――』


『いや』


『ラッシュ妹』


 2人落とした剛羽が、残り3人に斬り掛かろうとしたところで――


「蓮、たくさん降ってくる!」「ッ!?」


【こうくん、上から来るよ!】


 何発ものミサイルが雨のように降り注いだ。


 剛羽は加速して範囲外に逃げ出すが、その隙に後方から何者かがもの凄い勢いで駆け上がって来る。


 果たして、身を低くして地を舐めるように走る黒瓢の正体は、転身したウェイン・ラッシュフォードだ。


「達花、ブロック!」


「了――ッ!?」


 了解と応える暇もなく、侍恩はウェインに真横をすり抜けられ、置き去りにされてしまう。

 易々と。その辺の木をかわすように。


 何もできなかった。


 侍恩の表情に深い絶望が降りる。


「……くそっ」 


 抜き去られる直前、侍恩は確かに聞いていた。


 ウェインが「お前は後回しだ」と囁くのを。


【達花、追うぞ!】


【り、了解!】


 我に返った侍恩は、ウェインを追い掛けて走り出す。


 しかし、その足取りはどこまでも重たかった。


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