盲目の少女
コチコチと、僕の背中にある柱時計が動いている。
「今、何時ですか?」
目の前の少女はそう言う。
「私、目が見えないんです」
なるほど、理解した。
僕の後ろにある柱時計を見ればいいのに、と思ったが。そういうことなら了解だ。
僕は立ち上がり、後ろの柱時計を見た。
「………夜中の2時を過ぎたところだよ」
「………そうですか。夜中……なんですね」
彼女は手に持った杖をギュッと握り締めながら不安そうに呟く。
夜中。確かに重要なキーワードだ。
何故なら、夜中になるとドール達は凶暴な性格になるからだ。
だが、この僕と盲目の少女が居る小屋はガレキに埋もれて外からは残骸にしか見えないはずだ。
「君、もう寝たほうがいいよ」
「そう、ですね。でもあなたは?」
「僕は君を守る任務がある。だから僕は起きてるよ」
すると、少女は少し不服そうな顔をしたが素直に体を木の床に寝かせた。
「…………不完全なドールは狂いたいけど狂えないか」
僕はふと、ある人物を思い浮かべようとする。
しかしその人物を思い浮かべようとすると軽い頭痛が起こる。
「お嬢様って………どんなお顔だったろう」
僕は窓を見る。ガレキの隙間から若干だが、月明かりに照らされる外を見る。
『アハハハッ♪彼に会いたいわぁっ!!何処にいるのかしらぁ?ここかしらぁ?』
やはり外には凶暴性を爆発させ、狂喜している。
あのドールは過去に誰かを無くしたのをきっかけなのだろうか。
周りのガレキと化した家々を探っている。
と、なるとここも時間の問題か。
戦闘になるかもしれない。少女を逃がすか?いいや、駄目だ。ここは先手を打つしかない。
僕は柱時計のそばの机に立て掛けていた黒い長方形を脇に抱える。
「……………少し待っていてくれ。すぐに戻る」
僕は床で静かに寝ている少女にそう告げて、扉を開く。