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ベストフレンド・モアイ  作者: ザクロ
3/3

その別れは、突然だった

その別れは、突然だった


木曜日はやってきた。普通にやってきた

「石田、モアイと遊んでくるのか」

佐上は帰る前に、俺に聞いた

「あぁ、モアイが言うには、信頼作りだとさ」

「ふーん、お前は、モアイのこと嫌いなの」

「いやぁ・・・・だって、なんだか信用できないっていうか・・・・」

すると佐上は、大声で俺を笑った

「信用だけじゃないよ。大事なのは、短い時間、あいつとどれだけ楽しめるかだ。俺だって、あいつをまだ、地球侵略のライバルだと思って疑わねぇ。でも、あいつといると楽しいんだ。楽しい時は、楽しまないと」

「そうか・・・・ありがとな、佐上」

俺はお礼だけいって、教室を出た

でも、確かに、佐上の言うとおり、俺はあいつを見たとき、思わず笑ってしまう。それに素直に行けってことか・・・・

じゃあ、あいつで遊べるだけ遊んでおくか・・・・!俺の変なスイッチが押された


「モアイ、スピニングダンスして」

「いいですよ」

公園に来て、俺はテキトーにモアイに言ってみた。スピニングダンスって、今作った言葉だけど、わかるの?

すると、モアイは突然、さっきまであったはずの人間に近い石の胴体をしまって、写真でよく見るモアイの姿になった

そして、高速スピンを始めた

ギュルギュルギュルギュル・・・・・!

竜巻のような風が起こり、砂埃が巻き上がる

「モアイすごーい!」

そこの幼稚園児よ、そんな事を言っている場合じゃない、元凶は俺だ、早く逃げろぉぉぉぉぉ!!

しばらくしていると、モアイが止まって、またさっきの人型に戻った

「次、なにします?」

平然としてやがる・・・・!なんだか疲れきった俺は、とりあえず言った

「この街、UFO飛ぶんだよ」

「え?」

「俺、ちょっと疲れたから休もう。で、夜から、星を見よう」

「いえ、それまで遊びましょう」

え・・・・

俺はその後、公園、ショッピングモール、この街を、とにかくモアイに引きずり回された

人は俺を見て、指をさし、笑った。笑いたいのはこっちのほうだよ!俺の恥ずかしさを自分で笑いたいよ!

・・・・そして、夜になった。確かに、この街はUFOの目撃例が多い。星も街にしてはよく見える方だった

「素敵ですねぇ、街の中なのにこんなに星が見えるとは」

「満天の星空とは言えねぇけどな」

モアイは空を見上げた

「僕は幸せでした。楽しかったですよ、石田君と一緒に、この街を歩けて」

「そうか、俺は疲れたけどなぁ・・・・まぁ、楽しかったらよかったよ」

するとモアイは、そういった俺を見て、手を差し出した

「僕と石田君は、友達、ですよね?」

俺は、その手を握ろうかためらった。だが、佐上の言葉が頭によぎった

「短い時間、あいつとどれだけ楽しめるかだ」

そうだな、俺は自分のスイッチを押したじゃないか。固定観念を捨てるスイッチを

相手がどうであれ、差別をしてはいけない。相手がどうであれ、一緒にいて、楽しいことに変わりはない

俺は差し伸べられた手を、握った。石の手から伝わるはずのない、温もりを感じた

「あぁ、友達に決まってるだろ。あと残りの時間、日本で楽しんでいけよ」

「いえ、もう明日、帰ります」

「へ?」

「この学校の全員と友達になるのに、1週間もかからなかったようです。全員と友達になることが目標だった僕は、もう、達成したので、結果報告に、イースター島に帰ります」

モアイは空を指さした。すると、空に金属の大きなモアイが緑色の光を放ち、やってきた

「はっ・・・ははっ・・・・この街で多くのUFO情報が飛び交ってたけど、まさかお前らだったとはなぁ・・・・」

「石田君」

力なく笑う俺に、またモアイは手を差し伸べた

「短い間、ありがとうございました。佐上くんにも言っておいてください」

「あぁ。俺たちは友達だから、お礼はいらねぇよ」

「じゃあ、次は


日本侵略の時に会いましょう。では」


「えぇぇ?!ちょ、まっ、えっ?!」

俺が驚いている間に、モアイは大きなモアイのUFOに乗って、飛んでいってしまった

モアイ、ってか、イースター島、最先端だな

「やれやれ、本当の侵略者の友達が出来ちまったなぁ・・・・」

俺は、空を流星のように飛ぶ、モアイUFOを見上げた。でも、不思議と、怖い意味には感じなかった

「じゃあ、また会おうな、ベストフレンド・モアイ」


ベストフレンド・モアイ


END

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