表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

重石と軽石と王様と賢者

作者: 苦労人な子

気にいってくれたらうれしいです

むかしむかし、ある国に立派な王様がいました。

王様の世界には「軽石」と「重石」という、二つの石の伝説がありました。

なんでも、その二つの石を手にいれると、大空に手がとどき、大地と友達になれるというのです。

王様は、軽石と重石を手に入れたくてしかたがありません。

しかし、軽石は軽すぎて空高くに浮いています。誰も触ることができません。重石は重すぎて地面の底に沈んでいます。誰も近づくことができません。

そこで王様は、国中の賢者を呼び寄せました。彼らに重石と軽石を取ってくるように命令したのです。

見事に石を取ってきたものには、たくさんのお宝をわたす約束もしました。

賢者たちは、はりきって軽石と重石を探しに行きました。

しかし、いままで誰も触れるどころか、近づくこともできなかった軽石と重石、そう簡単にはいきません。


ある賢者が自信満々で言いました。

「大きな虫取りアミで、軽石を捕まえよう」

賢者の言葉に国民が動きました。みんなで手分けしてアミをぬうことにしたのです。

三日三晩かけ、大きな虫取りアミが完成しました。

「よいこらせっ!よいこらせっ!」

 

重くて誰にも持ち上げられませんでした。


違う賢者がつぶやきました。

「重石なら、ツナで引っ張り上げればいいんだ」

賢者の言葉に国民が動きました。

七日七晩、みんなで手分けして長い長いツナをあみました。

さあ、ツナ引き大会の始まりです。大きなツナを国民全員で引っ張ったのです。

「えいやっ!えいやっ!」

 

ツナの先には、重石がついていませんでした。

国民は疲れました。


赤の賢者と呼ばれる大賢者が言いました。

「伝説の石と呼ばれる軽石と重石に力勝負を挑んではいけない。心を捕まえるんだ。みんなで情熱的な言葉を紡げば、二つの石が手に入るはずだ」

王様と国民は感動しました。

みんながそれぞれに、軽石と重石に愛の言葉をおくりました。

「きみはバラの花より美しい!」

「世界はきみを愛している!」

「おいで、僕の天使!」

 

何組みかの夫婦がケンカをしましたが、軽石と重石はびくりともしませんでした。


困り果てた賢者が言いました。

「そうだ、パーティーをしよう!」

王様と賢者と国民は、おいしいご馳走を用意して、美しいダンスをおどり、お酒をたくさん飲んで、大騒ぎしました。

みんな大変満足しました。


賢者達の作戦は失敗続きでした。


ついには、「できないことをできないと認められる私たちは賢い」と、賢者らしい言い訳を始めるしまつです。


そんなとき、賢者ではなく、貧しい少年が城にやってきました。彼は小さな包みを持っていました。

「王様、僕にまかせてください。僕は軽石も重石も、簡単に手に入る方法を知っています」

「そんな馬鹿な。この薄汚い少年を追い出せ!」

王様と賢者たちは少年を馬鹿にして追いかえそうとしました。

「僕の話を聞いてください!」

「早くしろ!」

邪魔者あつかいされた少年は、怒って手に持っていた包みを開けました。

中からは、何の変哲も無い石が出てきました。

しかし、

「ひっつけ軽石!」

その言葉で、城の天井を破って、何かが降ってきました。何かは石に引っ付きました。おそらく軽石です。賢者たちはたまげました。

「ひっつけ重石!」

というと、今度は城の床を破って、何かが石に引っ付きました。おそらく重石です。国民もたまげました。

少年は城の天井に開いた穴を指さしました。

「これで、大空に手が届きますね」

それから、床に開いた穴を見つめました。

「大地とも友達になれますね」

それだけ言い残して、少年は城を去って行きました。

空から降ってきた軽石も、地面から沸いてでてきた重石も、普通の石と同じでした。

城の天井と床を直すのに、たくさんのお金がかかりました。これには王様もたまげました。

しかし、一つだけ良かったことがあります。

軽石、重石そう動のあと、王様と賢者と国民は仲良くなり、みんなで集まってパーティーをするようになりました。

これにはみんな大満足でした。


最後まで読んでいただきありがとうございました。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ