重石と軽石と王様と賢者
気にいってくれたらうれしいです
むかしむかし、ある国に立派な王様がいました。
王様の世界には「軽石」と「重石」という、二つの石の伝説がありました。
なんでも、その二つの石を手にいれると、大空に手がとどき、大地と友達になれるというのです。
王様は、軽石と重石を手に入れたくてしかたがありません。
しかし、軽石は軽すぎて空高くに浮いています。誰も触ることができません。重石は重すぎて地面の底に沈んでいます。誰も近づくことができません。
そこで王様は、国中の賢者を呼び寄せました。彼らに重石と軽石を取ってくるように命令したのです。
見事に石を取ってきたものには、たくさんのお宝をわたす約束もしました。
賢者たちは、はりきって軽石と重石を探しに行きました。
しかし、いままで誰も触れるどころか、近づくこともできなかった軽石と重石、そう簡単にはいきません。
ある賢者が自信満々で言いました。
「大きな虫取りアミで、軽石を捕まえよう」
賢者の言葉に国民が動きました。みんなで手分けしてアミをぬうことにしたのです。
三日三晩かけ、大きな虫取りアミが完成しました。
「よいこらせっ!よいこらせっ!」
重くて誰にも持ち上げられませんでした。
違う賢者がつぶやきました。
「重石なら、ツナで引っ張り上げればいいんだ」
賢者の言葉に国民が動きました。
七日七晩、みんなで手分けして長い長いツナをあみました。
さあ、ツナ引き大会の始まりです。大きなツナを国民全員で引っ張ったのです。
「えいやっ!えいやっ!」
ツナの先には、重石がついていませんでした。
国民は疲れました。
赤の賢者と呼ばれる大賢者が言いました。
「伝説の石と呼ばれる軽石と重石に力勝負を挑んではいけない。心を捕まえるんだ。みんなで情熱的な言葉を紡げば、二つの石が手に入るはずだ」
王様と国民は感動しました。
みんながそれぞれに、軽石と重石に愛の言葉をおくりました。
「きみはバラの花より美しい!」
「世界はきみを愛している!」
「おいで、僕の天使!」
何組みかの夫婦がケンカをしましたが、軽石と重石はびくりともしませんでした。
困り果てた賢者が言いました。
「そうだ、パーティーをしよう!」
王様と賢者と国民は、おいしいご馳走を用意して、美しいダンスをおどり、お酒をたくさん飲んで、大騒ぎしました。
みんな大変満足しました。
賢者達の作戦は失敗続きでした。
ついには、「できないことをできないと認められる私たちは賢い」と、賢者らしい言い訳を始めるしまつです。
そんなとき、賢者ではなく、貧しい少年が城にやってきました。彼は小さな包みを持っていました。
「王様、僕にまかせてください。僕は軽石も重石も、簡単に手に入る方法を知っています」
「そんな馬鹿な。この薄汚い少年を追い出せ!」
王様と賢者たちは少年を馬鹿にして追いかえそうとしました。
「僕の話を聞いてください!」
「早くしろ!」
邪魔者あつかいされた少年は、怒って手に持っていた包みを開けました。
中からは、何の変哲も無い石が出てきました。
しかし、
「ひっつけ軽石!」
その言葉で、城の天井を破って、何かが降ってきました。何かは石に引っ付きました。おそらく軽石です。賢者たちはたまげました。
「ひっつけ重石!」
というと、今度は城の床を破って、何かが石に引っ付きました。おそらく重石です。国民もたまげました。
少年は城の天井に開いた穴を指さしました。
「これで、大空に手が届きますね」
それから、床に開いた穴を見つめました。
「大地とも友達になれますね」
それだけ言い残して、少年は城を去って行きました。
空から降ってきた軽石も、地面から沸いてでてきた重石も、普通の石と同じでした。
城の天井と床を直すのに、たくさんのお金がかかりました。これには王様もたまげました。
しかし、一つだけ良かったことがあります。
軽石、重石そう動のあと、王様と賢者と国民は仲良くなり、みんなで集まってパーティーをするようになりました。
これにはみんな大満足でした。
最後まで読んでいただきありがとうございました。