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オタクですけど、何か?  作者: TAKAHA
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8話(蒼騎士視点)




今、我ら色騎士と呼ばれる4人は各々各部隊から数人を選りすぐって神域にもされているバスティーア山脈が麓の街、グランチェーニに滞在していた。


理由は単純明快。前皇帝陛下の代に隣国の先々代国王が些細なことから逆恨みをし、喧嘩を仕掛けてきたのだ。

その理由が実に下らない。山向こうの国は我らの国の国土の三分の一ほどなのだが、四方を山と海に囲まれてはいたが豊かな国であった。が、四方を囲まれているという事は他国との交易が少ないも同然。

それに対し、島国を除き世界に2つある大陸の一つに我らの国はあるが、すべての国を見ても我が国は1番広い。そして、多各国と交友関係を築き数々の交易で収益を齎してきた。



つまりはそういうわけである。



口にするのもおこがましいが、彼の国の今代国王は我らの敬愛すべき皇帝下の類稀なる人望や容姿までをも妬み、この度の侵略になったそうだ。

もはや陛下はあきれ果て、今までは侵略を抑えていただけで彼の国に何もしてこなかったのだが、その温情すらも理解しないあのバカ王にとうとう引導を渡すことを決められた。

我らにとってはあの山脈を越える事はそれほど苦にはならぬのだが、敵は苦労しているらしい。少しでも国境を越えたら迎え撃ち、隣国に攻め入る体制をグランチェーニでゆっくり待っている。

そして、私は敵が国境のすぐそこまで来ており越えたらすぐに行動に移すという報告をしにシドラニア皇宮に戻り、またグランチェーニに帰ったはずだったのだが・・・。




ここは一体どこだ。




目的地には確かに近くに緑はあったが、拓けている農業や酪農の栄えている地域であり、ここまで深い森など無かったはずだ。

進めど進めど泉が目の前に広がる・・・ここは泉が多い森なのだろうか?何度目かになる泉を前にしたときにようやく理解した。迷ってしまったようだ。


取りあえずどこかの森で迷ったので帰りが遅くなるという事だけ仲間に伝書を送ったところでふと気配を感じて上を見上げた時だった。



「のあ~~~!!」

「き、きゃあぁぁぁぁぁぁぁ!!!」



突然現れた何かに腰を抜かすほど驚いた。気配を何も感じなかった、それほど静かな森だと思っていただけに・・・く、屈辱。


動揺を隠しながらもよくよく見ればとてもかわいらしい女の子。深い蒼色の髪と、不思議な緑色の瞳をしている。ふと、その眼を見て誰かを思い出すような気がするが・・・。


誰だったか・・。


いや、しかし・・・何故木に逆さまにぶら下がっているのだ?しかもなんだその恰好は!見たこともないような服装で、肩や太ももが出ているうえに腕が透けているではないか!!




それからは、その少女を木から引きずりおろしてその場に正座させた。







「あの・・・ごめんなしゃい。そろそろかんべんしてくだしゃい」

「駄目だ。大体その恰好は何だ!足を出すとははしたない!!女ならもっと慎みを持ってだな」


どのくらい少女に対し説教してしまったか分からないが、しゅんとしてそういう少女の声はまだあどけない可愛らしいモノだった。



見目可愛いと声も可愛いのだな。



などと関している場合ではない。




「おい、聞いているのか?!」


私の言葉に返事もせずに明後日の方を向いていた少女に大人気もなく凄んでしまったのだが、泣かせてしまったかと思った少女は全く違った反応を見せた。


「・・・だれもこんなもりでまよってるひとがいるとはおもわないじゃないっすか」

「!!」


俯いた顔は泣いていたわけではなく、困惑したようなもの。ため息をつくようにその小さな口から発せられたのは、呆れを含んだもの・・。

思わず絶句してしまった私をじっと見上げ、何かを考えるそぶりをした少女はおずおずとまた口を開いた。


「ひがしにいくはずが、まちがえてにしにきたんでしゅか?」


この国の民たちは今回の侵略についてすでに情報が言っているが、誰しもが一切の危機感を感じていない。それはそうだ、色騎士1部隊でも余裕で片付くものを、全部隊が動いているのだから。

その為、この少女が知っていても不思議ではないし私の事もそうだ。簡易な騎士服を着ていてもこれを身に付けられるのは誰かを国民全員が知っている。



いや、それよりも今この少女は何と言った?



「は?!ここはグランチェーニではないのか?!」

「ここはオリエントのもりでしゅ」


私の問いに、少女は左右に首を振ると困惑した表情を浮かべて言い切る。オリエントの森と言えば・・・。


「西方のウェルナール候領だと?!」


私の叫びにハイと縦に首を動かす少女を凝視し、私は思わずその場に崩れ落ちた。

何という事だ!あれだけ方位を確認して出たはずだったのに・・・陛下にもあれだけ言われていたのに真逆に来てしまったというのか・・・。

グランチェーニの近くだとばかり思っていたのにっ。


「・・・・」


“お前が迷う事くらい予想していた。部隊の指揮は取ってやる、とりあえずどこでもいい。教会についたら連絡しろ、迎えをやる。いいか、くれぐれも一人で動くな”


“・・・はぁ。相変わらずだね、君も。この僕が迎えに行ってあ・げ・るから。これ以上ややこしくしないでくれる”


“予想通りのことしてくれるねぇ!予想通り過ぎて賭けにならなかったよ”




そんなときに届いた仲間からの伝書・・・。


チクショウ!!分かっていた、分かっていたとも!だけど、どいつもこいつも人を馬鹿にして・・・でも、自分が悪いから何も言えない!!!

思わず握りしめた拳を地面にたたきつけるが、あぁ・・空しい。



+++++



あれから案内を申し出くれた少女に手を引かれて森を抜けた。


「あの・・てを、つないでいいでしゅか?」


可愛い事をいうなぁ。と思ったが、確実にこれは私が逸れない為の処置だろう。


そう、私が・・・|||Orn


こ、こんな少女にまで心配されるとは・・・土に埋まりたい。


見目からして良家の子だろうとは思っていてが、少女はワイバーンを持っていた。しかも、珍しい加護付きだ。少女のワイバーンに載せてもらってシュタインヴェルタの教会まで連れてきてもらった。


「・・・・・・ぜったいひとりでいかないでくだしゃいね」


礼を言って別れ際に言われた輝かんばかりの笑顔付きの言葉に、嫌な影を見たような気がした。


「・・・・分かっている」


引きつりながらも、それだけ返して伝書を飛ばしながら教会内に入ってしばらくすると。




色騎士仲間が一人迎えに来た。




「まったくさ、君はその方向音痴の事を理解してから行動しようか」

「うぐ・・・す、すまん」

「まったく、オリエントの森に来てるだなんて・・・そこは予想外だったよ」


陛下の一人勝ちじゃないかと呟くは赤い髪に不思議な瞳の彼は実力が2位の紅騎士。――――ちょっと待て、よく人を賭けの対象にするが・・陛下もそんなことをしていたと?!



――――――・・うぅ、ショックだ・・。



紅騎士であるこいつはクールに見える割には穏やかな口調だが、そのままよく毒を吐くので一番怖い性格だと思っている。

ワイバーンに同乗させてもらいつつ、ふと思い出した事があった。


「そういや、森で不思議な少女にあった・・・思わずあの森には妖精族の村が在ったたっけかと思ったぞ」

「・・・あの森に?妖精はいたけど村はない、はずだが??」


キョトンとしたような顔を向けた彼の瞳とあの少女の瞳が重なって見えた。あぁ、どこかで見たことあるような親近感があったのはこれだったのか、とどこか納得してしまった。


「綺麗な青い髪でな、お前と似た様な不思議な緑の瞳をしていた!立ち振る舞いもどこか洗練されていて良家の子女かと思ったな。それにしては服装が露出し過ぎじゃないかと思わず説教してしまった」

「・・・へぇ」


それで?と妙に寒々しい笑みを浮かべた顔を向けて来たが、どうかしたのだろうか。


「他には何か?」

「え、あ・・あぁ、漆黒のワイバーンが加護付きでな。珍しいと思ったものだが・・・?」


それがどうした?と困惑したまま顔を向けると今まで見たことない笑みを返された。


「いいえ、とてもいい情報をありがとう」


微笑んでいる・・・目が笑っていないけど、とても穏やかに微笑んでいる。




な、何だろうか・・悪寒が止まらない。





それからのことは一瞬で片が付いた。





ワイバンーンの最高時速でグランチェーニまで飛び、待機していた部隊を全て国境へと向かわせた。

司令塔としてではなく紅騎士が自らも第一線に立って王宮の周りを一瞬で火の海に変えた。私ら3人は各々の部隊を予定通りに動かしただけで、彼の気迫に圧倒されて手足出すことが出来ぬまま、本当に何もせぬまま片付いた。


腐敗した王族を全て捕らえ、貴族も一掃し・・・信用の置ける新たな王を据え、不可侵条約を結ぶ。

後日、落ち着いたら陛下がお見えになり新しい王国として認証式を行うそうだ。そして、それに伴って民を虐げていた腐敗した王侯貴族の処刑が行われる。


「それじゃあ、俺は宰相殿にこれを提出してくるね。ここはサイラスに任せるよ」

「あぁ、分かった。他国への伝令はすでに始まっている」

「うんうん。君の部隊は本当に早いね」


今回の報告書を持って今は新王と会談をしている陛下の代理でこちらにお見えの宰相殿の所に持って行った。なんとそこまでが、あれから半日足らずで片付いたのだ。

この調子なら陛下に謁見して家に帰ったとしても、明日の昼には身体を休められることだろう。





だが・・。





「・・・リアン、あいつに何があった?」

「え~っと・・リーヴェトゥーネ、君は原因知っている?」


一体どうしたというのか。いつも冷静なサイラスも目を瞬かせ、リアンに至っては苦笑している。

2人が私の方に困惑した顔を向けるが、私だって知る由もない。頭を振って唯一した雑談だけが原因のような気がするが、それをあいつが気にするとは思えない。


「私は良く分からない。オリエントの森で出会った不思議な少女の話をしてからあの調子だ」

「それだけか?」


訳も分からない私ら3人を置いて風のように去っていった彼の姿に、私たちは首を傾げるだけだった。









「「「何があった(んだ)??」」」














前の話の蒼騎士ことリーヴェトゥーネ視点ver

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