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オタクですけど、何か?  作者: TAKAHA
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6話

表示されていませんが、第二章の始まりです。





『マコ、どうした。風邪ひくぞ』





呼ばれた気がしてそっと私が目を開けると、20年以上暮らした懐かしい実家のリビングだった。寝ぼけ眼の私に、目の前にいる人物はその大きな手を私の頭に載せてわしゃわしゃと頭を撫でた。

何故か周りの景色ははっきりと見えるのだが、目の前にいるはずの人の顔が見えない上に声はノイズが入ったかのように不鮮明だ。

でも、何故か私にはわかった。暖かい気持ちが体中に流れてくる。




あぁ、父さんだ。私、家に帰ってきたんだ・・。




私も妹も20をとっくに過ぎていても、未だに父さんやじいちゃんに抱きついたりとじゃれ付くくらい家族仲はいい。母さんと一緒に買い物し、体の弱いばあちゃんと一緒に散歩する。見た目も性格も真逆だけど、仲のいい私たちは姉妹で良く遊びにいったりもしていた。

涙がこみ上げてきそうになりそのまま頭を撫でられていたが、不意にその頭を撫でていた手がなくなって、次に背中から衝撃が来た。



『ねぇちゃぁん!あそぼー!』

『こら!雪弥ゆきやおねぇが痛い痛いでしょ!』



可愛い甥っ子と大切な妹だ。甥っ子はママである妹が私を姉と呼ぶから同じように呼んでいる。その後ろには母さんを始め、じいちゃんとばあちゃんがいるように見える。

顔がはっきりと見えないのだけど、みんながやさしく微笑んでこっちを見ているように感じる。




『おねぇ、何やってんの?みんな心配してんだよ』





あぁ、ごめんねリリ・・・






どっちが姉か分からないような妹の言葉に苦笑しながら謝る。しかし、鮮明には見えていないが妹の顔色が暗くなった気がした。



『おねぇ・・今、どこにいるの』



え?と思う暇もなく、懐かしい景色と大切な家族が徐々に遠のいていく。

影がかかったような妹の顔から、一筋光が落ちた。



『まって!リリナ!!私も家に帰りたいっ』



そこまで叫び、私はハッとする。そうだ、これはいつもの・・・







――――――――夢だ







「ぅう~~・・・」


眩しい光が当たった気がして目を開けた。そしてきょろきょろとあたりを見回すと、寝てしまう前にいたティールームのサロンの1室だった。

時折見る元の世界の夢は、目が覚めるとほとんど覚えて居ないのだが、言いようの無い喪失感だけは中々消えてくれない。


この世界に来てすでに10年がたっていた。言いたくないけど…39歳になりましたが、姿は子供のままです。元の世界の十年と比べると、あっという間で小学校の1学年が過ぎた様な感じと例えておこうと思う。

大切だった家族の姿ももはや朧気で、私は図太い神経していると自覚しているが・・・薄情ではなかったはずとちょっと落ち込む。


そして子供という事もあるのだろうが、一日が36時間という事もあってこうしてうっかりとお昼寝という名の寝落ちをしてしまうのだ。


「あれ、いまなんじ・・・げぇ!」


寝ぼけ眼を擦りながら時計に目をやると、もうすぐで18ひるになるところ・・・思わず出た声に口を押えて辺りを見回して、周りに誰もいない事に心からほっとする。寝ていたソファーから降りて少し皺になったスカートを直した。

ふと、ソファーを見ると私が寝ていたところには薄手の毛布がある。きっと誰かがかけてくれたのだろう。


最後に時計を見た記憶にあるのは14時ごろだった気がするので、4時間は寝ていたことになる。何ともややこしいのだが元の世界の昼がこの世界では大体朝に相当する・・・そして今日は早朝の8時に起きて朝ご飯を食べたきりなので、そりゃお腹がすいているわけだ。

食事は3食で、軽食おやつが2回ほどあるのは元の世界と似て非なるものだろう。


「やっぱりドレスはきなれないなぁ」


ポツリとつぶやいて壁にかかっている鏡を目にすると、深い蒼色の艶やかな髪の少したれ目だが、気の強そうな少女が苦笑しながらこちらを見ている。美少女の部類に入るだろうその少女は、本当に・・本当に信じられないのだが、これがこの世界の私である。



はい、ありきたりな設定来た~!とか言わない!!自分自身が疑ってんだから。



何故ドレスを着ているかと言えば、これまたお約束なダンスのレッスンがあったのです。

ティオノーラという名前の父方の親戚の娘が私のダンスの先生で、ダンスに関しては鬼とも呼べるほどスパルタ教師だ。えぇ、スパルタ教育のおかげで私のダンス技術は素晴らしいと思いますよ。


あれだけ自分に自信のなかった私が、自画自賛出来るほどに!!踊れないものなど無い!!子供の姿万歳!!


ノーラは普段は金髪碧眼でほんわかしていて、まさに貴族のお嬢様!って感じで最初は見惚れたのだけどね・・ホント、最初は。


「うぅ~~ん・・・ほんっとに、いつみてもみなれないなぁ・・」


元の自分の容姿はみじんもない。唯一残っているのは少したれ目という事くらいじゃないだろうか・・・あぁ、この腰まで伸ばされた髪の毛をバッサリと髪を切ってしまいたい!


怒られるから勝手なことはできないんだけど・・。


この世界で父と母になってくれた両親も美男美女であって、私がこの家族の中に入るのは異質すぎると持っていたのだが、美形の血を分け与えられて今は違和感なく実の家族であると納得できる容姿をしている。


この世界の服装はそれほど華美じゃないにしろ、女性はロングヘアーとドレスが定着している。しかも、素足は曝さないと来たもんだ。動き辛いったらありゃしない!


でも、私がこの世界に来てここ10年で少し改革があった。というか、改革をした。

何を改革したかと言えば、主に服全般だ。

レイヤー魂を出して色々な服を思い出して描きましたとも。それに、元々絵をかくのが好きで色々な画集とかを漁っては自分風に直して描いていし、デザインすることは楽勝だった。

そうそう、デザイン画だけはね。裁縫は ―――出来ない訳じゃないけど――― 大の苦手!特に型紙制作に型貫なんて・・・ムリ!超ムリ!!


「あぁ、やっば!せっかくかいたデザインがぐしゃぐしゃ・・のばせれるかな」


うわっ、折角上手く描けたデザイン画が・・寝潰してたみたいでぐしゃぐしゃのヨレヨレ。ま、まぁよだれの跡がないだけいいかな!





コンコン





「失礼します。あら、起きられていたのですね。呼んでくださればいいのに」


ノックをして入ってきたのは私の侍女のリーシャだ。

そう、カイさんの末娘さんのリーシャが無事に成人の儀を終え、何とありがたい事に私付きの侍女にと申し出てくださりました。


「お嬢様、試作の服が出来上がりましたわ」

「・・おじょーさまとはよばないでよ」

「申し訳ありません、レフィールさ・・・レフィー」


リーシャはカイさん似の長身美女で、髪の毛はミーヤさんと同じくせ毛のモーヴピンクというんだっけ?落ち着いたピンク色をしている。

畏まったような主従関係は嫌だったので、私にはそういうのはなしでと最初に御願いしていた。その為言いたい事は言い合うきさくに話せるような関係でいてくれる。


で、私がデザインした服をリーシャが作るという事を細々としていたらいつの間にか貴族間に広まっていた。勿論私の名前は伏せられている。

最初のきっかけはどうしても、ど~~してもパジャマにネグリジェを着るのが嫌だったのから始まった。

代わりに浴衣を作って貰った。ガウンやバスローブではなく、浴衣を。


「おはよぅ、おこしてくれればよかったのに・・・あ、これリーシャ?」


直ぐにお食事お持ちしますと出て行こうとするリーシャに問いかけた私に、リーシャはただにっこりとほほ笑んで返した。

いつみても、あの笑顔を見ると落ち着くなぁと考えながら私はリーシャに向き直る。


「・・いつもありがとう」

「レフィーの為なら何でもしますわ」


出て行こうとしてドアノブに掛けていた手を外して、私に向き直ったリーシャはいつもの笑みを抑えて真剣な声でいう。

いつも何か言えばそう言うリーシャに、私はもはや苦笑しか返せなくなっていた。でも、そこまで私を思ってくれるのがものすごく心強い。私が、ため息交じりにもうと吐き出すと、楽しそうな笑みを浮かべて食事をお持ちしますと今度こそ部屋を出て行った。



+++




「どー?やっぱりはしたないっておもう?」


あの後少し遅めの昼食をリーシャと一緒に取り、私たちは新しく作った服を試着していた。

貴族令嬢の普段の装いは、デコルテや肩は出ていても何ともないのだが、背中や腕や足は絶対に出てはいけないという決まりがあるらしい。

私が今着ているのは、ハイネックノースリーブに袖口が広がっている薄手の上着、そしてショートパンツという格好だ。勿論、その上には巻きスカートを付ける。



今は。



「いいえ!とても斬新ですわ。ただ、この装いは抜け出すためですね?」

「へやぎだってば・・そうそう、これはどうおもぅ?あたらしくデザインしてみたんだ」

「また斬新ですわね・・・こちらが夜会ドレス、こちらは乗馬用かしら?」


数枚のデザイン画をリーシャに渡すと、職人魂が刺激されたのか目が輝いていた。

裁縫が不得意な私と比べ、リーシャは病床にいた時の趣味が裁縫だった為に腕はそこいらの店よりもすごいと思う。

とりあえず元の世界の服を何枚も描き、色々と組み合わせながらデザインを描いている。一番多いのは自分の好きなシンプルな服だけど、さすがにそれだけだとつまらないから老若男女問わず色々とデザインしている。


因みに、一番人気は着物風のドレスや服だ。あくまでも、着物“風”であって着物ではない。


「とりあえず、そのつぎの・・そう、それ!ワイバーンにのるためのやつ、いそいでつくれる?」

「まぁ、これは・・・フォルディナート様用でしょうか?」

「そー!こんどえんしゅーじあいがあるっていってたじゃない?オニキスのいしをたくさんつけて!」

「はい!腕が鳴りますね」


リーシャがデザイン画に釘付けの間に私は巻きスカートを取り払い、ニーソブーツを履くと近くに置いておいたウェストポーチを腰に巻いてそっと窓から抜け出した。



元女騎士の母の教えで、剣術はかじった程度だが馬術は完璧なまでに叩き込まれた。

そしてそして!色々出来るようになった上に、この世界になじんだ私がじっとしているわけがない。というより、この世界には私の興味をそそる読み物が少なく・・・要するに、引き籠るための興味対象がないのだ。

外に出た方が面白いので、必然的に乗れるようになった馬や、この世界の貴族間では常識の乗り物の翼竜ワイバーンを乗り回す方がよっぽど楽しいのだ。特にワイバーンは絶叫マシンみたいで楽しい。


「ふふ、あ~たのしい!しきちないならウマにのっても、ワイバーンにのったっていいってゆるしだってもらってるんだから」


父母がそうだから、使用人も過保護すぎて困りもの・・・なんだけど、まだいい。父と母はまだ理解があるので結構自由にさせてくれる。足を出す格好や腕を出すことは家族間ならとじわじわと貴族間で広まっているし。






問題なのは・・・。




「レフィー、ここですが・・・あぁ、また抜け出されて」


一通りデザイン画を見ながらイメージを固めたリーシャが顔を上げると、捨て置かれたような小さな靴と無造作に放置された巻きスカートが目に付いた。

抜け出すことが一種の遊びであるかのような小さな主人に、リーシャは苦笑を浮かべてデザイン画をテーブルに置いて巻きスカートを手に取り窓に顔を向ける。


「私が黙っていても、あのお2人が気づかない筈はありませんわ・・・」


リーシャの小さな主人を目に入れても痛くない、それどころか砂糖菓子でできたお城にでも閉じ込めそうな人物を思い浮かべると重々しいため息が出る。

だがしかし、リーシャが何を言おうとあの小さな主人は猪突猛進に行動し、後々後悔するという事をこれまでに何度もやっているのだ。


「マティアス様とフォルディナート様が黙っていないことは、ご理解なさっているはずですのに」



レフィール曰く、『なぜかよくわからなけど、これっていじめ?!え・・なに、あらてのいじめっすか!?』と叫んでいたのを何人かの使用人たちは聞いている。




リーシャに出来るのはただそっと祈る事だけ。




「どうか・・・厄介なことを持ち込まれませんように」





レフィールの絶叫が響くまであと暫くの事。







まだちょっと説明チックですみません。

第二章のプロローグです。


レフィーの子供ってところをどう出そうかと悩んだ挙句の、セリフは平仮名・・・。

読みずらいですよね!ごめんなさい、よくわかっていますがこれ以外方法が思いつかなかったんです。

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