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オタクですけど、何か?  作者: TAKAHA
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閑話2-1





皇宮の一角にある宰相執務室にて、いつもより少しラフな格好・・と言うよりは、忙し過ぎて少しヨレッとしていると言う方が正しいだろうか。それでもかっこいいとか我が兄ながらちょーーーっ・・眼福!!







アレだよね!美人系イケメンがアンニュイな感じとかドキドキするよね~!










とか言って、自分の好み的には腹筋割れてるマッチョ系イケメンの方が好きですけど~!





でも、イケメンは種類問わずに観賞用としてはホント最高だよね~。












な~んて、そんなことを思っている間にも、珍しくも鎧を脱いだフォル兄様とサイラス様 ――はとてもラフな格好をしていて、鍛えた体の線が見える所に目が行ってしまいそうだ―― がマティ兄様と共にものすごいスピードで書類を捌いていた。


何故騎士でもある二人が手伝っているかと言えば、宰相補佐様方は別件で出張に行っている人と過労で倒れた人がいるからだと言う。


「・・兄様達、私に嘘をついたの・・?」


忙しそうでさっさと帰ろうかとも思ったのだが、疲れていてもとても嬉しそうにお茶とお菓子を用意してくれた兄様の気遣いにそれを頂いていたのだが・・・。

思わず漏らしてしまったそんな呟きは、はっきりと兄様に届いてしまったみたいなので、あえて不満そうな顔をして口を尖らせてそういえば、慌てた様な様子のマティ兄様とフォル兄様の2人は一瞬顔を見合わせた後にその顔色を変えた。




――――それより、兄様達・・・疲れのせいで脳内処理が間に合わなかったのだろうか。




因みに私がわざとやっていると気が付いたらしいサイラス様は、無表情がデフォルトだけど珍しくちょっと笑っていた。


「一週間前から兄様達が楽しみにしててって言ってたのに・・・」


本来なら今日は前々から約束していた兄様達とのお出かけ ――兄様曰くデート―― の日だった。ローテーションで休みを取っている騎士様と違い、宰相の役職にあるマティアス兄様には休みらしい休みなど殆どない。その上、兄様2人がそろって休みなんてめったにない日だった・・という事で。

前々からずっと兄様2人一緒に遊びに行きたいと言った私の言葉を覚えていてくれた兄様がそれを計画してくれていたらしいのだ。


「兄様と一緒じゃないと街に行っちゃいけないって約束だったから・・・ずっと楽しみにしていたのに・・」


ま、本当の所、兄様達の事情は分かるから内心では“しゃ~ないなぁ”くらいにしか思ってはいないんだけど。

兄様達は皇帝付きの筆頭に位置しているし、前の世界では私もいい年した社会人で、急に入った仕事の為に・・・何度甥っ子に怒られた事か!!





――――――あぁ、今頃どうしているかな・・会いたいなぁ、甥っ子に・・はぁぁ。





「あ、レフィー・・っ!」

「そのな・・えっと・・」


おっと、ちょっと思い出してしんみりしていたら兄様達の顔色がさらに悪くなって狼狽えはじめていた・・・どうしよう。

そう思って部屋を見回していると、殺伐とした室内に疲労のたまった人たちと目が合って苦笑された。サイラス様は ――珍しく微笑んで―― 手を振って書類を持ったまま部屋を出て行ってしまった!OH!助けてほしかったのに、放置された!



うぅ~・・確かに最近は色々とアニス様に関して事件があった上に、アニス様と言うよりは私に対して暴言を吐いた4大白家の一角の伯爵令嬢の件が尾を引いているとヴィーに聞いた気がする。



白の入っている家は皇国からの信用も厚く、皇都を囲むように東西南北の重要な領地を管理している。西には4つの国に跨る広大なオリエントの森があるパパの管理するウェルナール領があり、東にはバスティーア山脈に接する土地全てを管理するガルスのシャルトルーズ領。そして現在のシドラニア皇国にはたった2つしかない公爵の1つが北区の領地を管理していて、南に位置するマルセン伯爵家はぶっちゃけそれほど重要な領地と言うわけではないって聞いたけど、白の一角という事で大変なようだ。


だって南には森と山、それから広大な砂漠が広がっていて、そのままエルの家でもあるポルトゥーナの友好国になっているからね。






―――――――――――・・本当にお疲れ様です。






「レ、レフィー・・」


バァン!!


「マティアス様!それなら僕がレフィール嬢をエスコートしちゃって良かったっすか?!」


静かな部屋に突然勢いよく開いた扉から、マティ兄様が口を開こうとしたときに被せるように登場したのは・・・。


「本日非番のフリエル・グラディウスで~っす!マティアス様とフォルディナートが忙しくってその代わりになれるかなって思って参上しました~!」

「・・・・」

「・・・へぇ」


ものっすごく無邪気にテヘッと舌を出すさまは、キラリンと言う効果音と共に星が見えた気がしたのは私の脳内変換では無いと思う。

殺伐とした中にそんな登場の仕方をしたら怒りを買うのでは?と思ったのだが、周りからはとても生暖かい表情で見守られている。


「ね、レフィール嬢!僕と一緒に街に遊びに行こっかぁ~」

「えっと・・フィル兄様、と?」

「うん!僕と」






―――――仕事の出来る爽やか騎士様って思ってたけど、本性ってこっちなんだ。





そんな風に少し遠い目をしたのは仕方がない事だと思うのだよね。だって、フィル兄様に初めて会ってから・・・たった今までは、お仕事モード中のフィル兄様にしかあったことなかったからね。




こんなにもオンとオフの激しい人も珍しくない?






――――――だけど、そこが良いね!





「どこ行きたい?僕としては黄金の髑髏とか、使い魔の箱庭亭とかがおすすめかなぁ~」

「えー!なんですかそのお店!面白そう!」

「ちょっ・・レフィーをどこに連れて行く気だい?!」


マティ兄様の慌てた声をまるっと無視したフィル兄様は、ソファーに座っている私の視線に合わせるように屈んで悪戯っ子の様ににやりと笑う。

でも、そんなフィル兄様の誘いの言葉にまんまと乗ってしまったのは仕方がないと思うの!

だぁってなんかオタク心を擽るようなお店の名前のラインナップですよ!ちょぉっと某魔法使いの小説とか思い出さない?!私あのアトラクションのある関西のアミューズメントパーク行く予定立てて、行けず仕舞いだったんだよね。


「フィル兄様面白い店って詳しいの?!」

「レフィール嬢と趣味が合うみたいだねぇ~!」

「もぉ、フィル兄様私の事レフィーでいいってば」

「そう?じゃぁ、今日は非番だしレフィーって呼んじゃおっかな」

「うん!」


周りの事をすっかり忘れて2人できゃいきゃいとはしゃいでいると、どこからともなくゾッとするような恐ろしい冷気が・・・。

そろっと振り返ると、おっそろしい顔で ――フィル兄様を―― 睨みつけている人たちと目が合った。



取りあえず、この部屋の中で怒ってそうなのは2人だけ。勿論、マティ兄様とフォル兄様だ。


「・・・フィル・・何言ってんの」

「ん~?」


ゆらりと目の座った表情でフィル兄様を睨みつけて威圧しているフォル兄様だけど、その手は止まることなく羊皮紙に向かって動いている。よく手元を見ずに書けるなぁ~、私だったら絶対無理・・・じゃなくて!

その様子に固まっていると、振動と共にドサッとフィル兄様が私の隣に座った上で、私の肩を抱き寄せた。


あ、フィル兄様ムスク系の香水を付けてるのかな?いい匂い・・あれだ、ちょっと男性的にされてるけど、ホワイトムスクに近い感じ!私あれ好きでよく使ってた!


「え~!だぁって、フォルはかわいいレフィーが悲しむのだけは嫌だって言ってだじゃん?」


フォル兄様に見せつけるようになのか、私をぎゅ~っと抱きしめるフィル兄様。

いつの間にか私はフィル兄様の膝の上に横抱きにされていて・・・やっべ!フィル兄様の鍛えられている腹筋が超ダイレクトに私の腕にっ!!




あぁぁぁぁぁーーーーーー・・・兄様達とは別の意味で、ドッキドキがとまんねぇ!!




「だからって、な・ん・で、お前が俺達のレフィーを連れて行くんだ!!てか、レフィーから離れろ!」

「え、何なに~・・・フォルは今日を楽しみにしていたレフィール嬢を、自分が連れて行きたいって言う感情だけで悲しませるの?」


下級の魔獣なら速攻逃げ出しそうなほどの怒気を撒き散らすフォル兄様だけど、フィル兄様はどこ吹く風って感じでニコニコと微笑んだまま。


「レフィー僕に抱っこされてるの嫌ぁ?」

「ん~ん、フィル兄様の香水いい匂いだし好き!」


イケメンで声もステキで、理想的な細身だけどしっかりした逆三角形の騎士様にポ~っとしたまま思ったことを答えると・・・。


「え・・」

「・・レフィぃ・・」


今まで怒っていたはずなのに、私の言葉にこの世の絶望と言う程の表情をした2人の兄・・・え、マティ兄様も聞いてたの?仕事に集中していて聞いてないと思っていたのに。


はい、そこ!フィル兄様は噴出さない!腹抱えて笑わない!振動が直に伝わってきますよ!!


「ふぃ、フィル、にぃ・・さまっ!振動!」

「ぷふぅぅーーーーっ!ご、ごめんね・・・レフィ・・・あっははっははははっ!!フォルの顔ぉぉーーー!」


爆笑するフィル兄様は支えてくれているけどその振動にフィル兄様の腕にしがみつくと、笑われたことに怒り出すと思っていたフォル兄様が顔色を無くして茫然としていた。


「あ、ああぁぁのね!」


これはやばい・・とか思う前に、何故か私は言い訳じゃないけどフィル兄様の手を外して兄様達に走り寄っていた。

つ、ツンデレってわけじゃないけど、これでも私は兄様達が大好きですからね。



「マティ兄様のウッド系の爽やかな香りも兄様に似合っていてとっても好きだよ!背が高くってかっこよくって、兄様以上に長い髪が似合う人は居ないよ。普段はクールなのに、優しくってすっごく頼りになるし!博識で分かりやすく勉強教えてくれる所なんて尊敬するよ!」

「レフィー」





「フォル兄様もアイリスとハーブのすっきりとした男性的な香りが兄様らしくって好き!乗馬も飛龍も軽々と乗りこなして、いつもは笑顔なのに剣を振っている時とかのきりっとした顔とかもかっこいいよ!兄様のそんなギャップがある感じ魅力的!」

「~~っ!!レフィィ~!」



あわわっとした感じで普段思っている事とか上手く説明できなかったけど二人の間に立って言えば、2人は少しその眼に涙を溜めた様な顔でぎゅぎゅ~~~っっと抱きしめてきた。




―――――ぐ・・ぐるじぃぃ・・。




ふと助けを求めてフィル兄様に視線を送れば、ソファーをバンバン叩きながら大笑いしている姿が視界に移り、開いたドアからは何かを悟ったような生暖かい視線を送るサイラス様の姿が見えた。


そして、周りの人たちも生暖かい目で見てないで助けてくれませんかねぇ!






暫く後。






もう少し早く助けてほしかったが、何とかサイラス様のお蔭で助け出された私は、休憩と言う名の元マティ兄様の膝の上でフォル兄様とフィル兄様の言い合いを見ていた。

言いくるめられている兄様を始めてみた気がするが、不思議そうな顔をしていたらしい私に、そっと寄ってきて説明してくれたサイラス様曰く。


『フリエルはこんな性格で口が達者でな、マティアス様ですら言いくるめられることもあるんだ』

『え、マティ兄様が?』

『ハハハ・・フリエルはフォル共々もう一人の弟って感じだしね。昔からの付き合いだし、公私はしっかり分けているから特にいう事もないしね。私にも遠慮が一切ないと言って』

『それが許されるだけの実力はあるやつですから。フリエルは』







―――――――らしい。







そして、こんな光景はいつもの事らしくもはやこれに突っ込みを入れるような人は城勤めには誰一人としていないってことだ。








次は街に繰り出します!

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