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オタクですけど、何か?  作者: TAKAHA
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13話(ガルディス)







僕の住むシドラニア皇国はこの世界にある2大大陸の一つに存在する古い歴史と広大な土地を有する大国だ。2つある大陸には互いにその大陸をまとめると言う中立皇家が存在し、ヴィーストヴァンダレン大陸と我が国があるモントヴィウェルズ大陸に分かれる。勿論2大陸の周りにも多数の島国や小国がいくつも点在しているが、大半の国がどちらかの大陸に属してはいる。


ヴィーストヴァンダレンの中立国皇帝は獣人でそこに住む民は獣人が多く、彼らは一様に身体能力が高くて特殊能力を持つ者が多い。対してモントヴィウェルズに住む我らは獣人よりも身体能力は劣るが多くの魔力を有し、それを使う事が出来るものが多く存在する。






うん、まぁ向こうの事は今言わなくたっていいよね。







そして、僕の住むこの国の皇家の紋は翼をもつ白馬と一角獣と言われる美しい角を持つ神馬がかたどっており、皇家の色の純白の鉱石でもあるクロイツで象られている。

皇家以外に白を家紋に持つ家はわずかで、その数は現在4家と特例の1人しかない。勿論僕の家はその4つのうちの一つで、畏れ多くもティータタンという薄桃色の鳥と位の高い白き薔薇を賜っている。

あと、特例と言うのは一代限りの紋であってよく言うのはナイトの称号だ。そう、その紋は色騎士に所属する白騎士にのみ与えられるものであり、理由はその人物が皇家縁の人物だから他ならない。皇家縁の人物は殆どが文官になるので武官には珍しく、前皇帝陛下の色騎士には白騎士になりうる人物は居なく、4色の内白騎士に代わって黄騎士が存在する。

勿論、現在の特例は白騎士のリューリアル・アレス・ドル・ユースティア・・・の名を捨てられたリアン様。彼は先々代の皇弟の孫に当たり、現在は白を抜かれた公爵家―――皇家から臣下に下った皇族の血を引く2代目までは家紋に白を与えられる―――を実家に持っている。それと、彼は僕の父の従弟である為に実は私的の付き合いの中ではリアル兄上と慕っている。



ん~と、そうそう。どの王家にも共通して言えるが、どれほどただ一人と相思相愛だといえ国の為には多くの側室を迎えるのが慣例だ。王族にはその血脈をとだえさせてはいけないと言う使命があるからに他ならない。これはまぁ、貴族にも当てはまることだけどさ。

それでも、その中で愛を育める者ももちろんいる。それが仲間意識だろうとまごうことない愛情だろうと、心通わせられるのならば良いに越したことはない。前皇帝陛下にも最愛の皇妃様の他に2人の側室がいたが・・・僕の生まれる前の話だし、不確かなことだから今この場では言えないかな。

しかし、現在のヴァドル皇帝陛下には相思相愛の皇妃様ただおひとり。それで陛下自身も納得と満足されており、側室を取るつもりはないと常々口にされておられる。しかし、その裏では隣国や貴族連中の中から娘を側室にとの声は多いらしいが、一向にそういった話が出てはいない。


その実は、類まれなる美貌と神々しさの陛下の隣に立つことを、特に野心の強い女どもがこぞって拒否しているとのこと。普通は逆な気がするが、自尊心の強い者ほど自分の立場と同等に見目も気にするためだろう。確かに、並大抵の者ならば我らが陛下の隣に立つだけで霞むだろう。皇妃様も陛下と並び称されるほど美しいお方なため、そうやって身を引いているのは賢明だと思う。






―――――・・・あぁ、うん・・なんで僕がこんなことを説明するかのようにしているのかは、ちょっと現実逃避したくなったから。


目の前の光景に、僕は今現在頭痛と眩暈がしている―――何も・・いや、目の前にいる人物の事を考えなければ、ただ単に面白い光景で終わらせられるんだけどなぁ~。







事の起こりは今朝の事。







「ねぇ、ガルス!ガルスは楽しい事好き?」


4日前初めて出会い、その日の内に―――珍しく――僕が心から友人と言えるほど仲良くなれた侯爵家令嬢のレフィール。とある事件から発展した隣国の問題に、未成年でもある僕らが陛下から直々に仕事を賜ったために、――彼女の兄達と少々揉めていたが――彼女が我が家に滞在している。


その“仕事”が始まるのはもう暫くたってからで、僕らは沢山の課題を与えられていてそれを淡々とこなしていた。僕はちょうど昨日そのすべてを終わらせたので、今日はレフィーを見てあげようか、少し気晴らしに街に行ってこようかと考えていた。


「うん、楽しい事は好きだよ」


レフィーの問いに僕は笑顔で答えて、焼き立てのパンを手に取った。確かこのパンはクロワッサンと言ったっけ?レフィーがこの世界に持ち込んだ食べ物の一つで最近の僕のお気に入りだ。





今朝の朝食の席でのレフィーの問いはまだ続く。





「それは“見る”こと?それとも“やる”こと?」


使用人たちに聞こえないように少し身を乗り出して小声で言うレフィーの顔は何かを思いついたと言わんばかりにニヤリとしている。

僕はそれほどでもなかったけど、レフィーに与えられている宿題は多くて彼女はずっとおとなしくそれと格闘していたが・・・終わったという事なのだろうか?

しかし、“楽しい事”がどんなものか取りあえず分からないが、見るのも好きだが・・・。


「勿論、見る事も・・・やることも、大好きだけど?」


サクサクの表面が食欲をそそるクロワッサンを千切って口に入れつつそう目を細め答えると、レフィーが満足そうに笑って椅子に座りなおした。

そして、スープを一口飲みながら辺りに視線を這わせてから僕に向き直った。


「あのねあのね、私ね?こっちに来たばかりの時、すっごく綺麗な湖を見たんだ~。周りもとっても自然が豊かでね、珍しいモノが沢山あって楽しかったの!また行きたいなぁ~って思ってたんだけど、お兄様たちが危ないって連れて行ってくれないの。つまんな~い」


先ほどの小声とは打って変わって無邪気に話し出したレフィーに少し首を傾げたが、すぐに意味が分かり僕も口角が上がるのがわかった。


「レフィーの兄上はお二人とも強いのに、それはつまらないね。でも、それだけレフィーの事を心配しているってことじゃない?」

「むぅ~・・・お守りだってあるんだから大丈夫なのに」

「そうだね。でもそれがあの噂のレフィーの兄上だからね」

「なんか・・私の知らない所ですんごい噂になってない?これもすべて兄様達が婚約者すら決めないせいじゃないの?」


不貞腐れながら自分の手についている魔石をいじるレフィーに、僕も自分の右手を見る。そこにキラキラと輝くのは、昨日レフィーからプレゼントされた綺麗な黄色の魔石を中心に薄い蒼から濃い蒼が見事に配置された腕輪だ。異世界から持ち込まれたその上級魔石は、力の使い方さえわかっていれば誰にだって間違いなく使えるほどの物。


「まぁまぁ、取りあえず早くご飯を食べちゃおうよ。それから部屋に行ってこれからの事話そうか」

「うん、そうだね。ふふ、一緒に遊べる人がいるって楽しいな~」

「あ~・・レフィーって学校にも行かせてもらってなかったんだよね。夜会とかには?」

「夜会に連れて行ってもらえると思う?」

「ん、はっきり言えばないね」

「わかってんじゃん・・・唯一は身内のみでのパーティーだったけど、一番年が近い人でももう成人とっくに過ぎてたし、友達と言うよりはお姉ちゃんとかお兄ちゃんだよ」


先ほどのレフィーの台詞から“こっちに来たばかりの時”とは彼女がこの世界に渡った事だろう。“綺麗な湖がある自然豊かな所”=“オリエントの森”にまた行きたい。それを僕に言うという事は、『今ならあの兄の干渉もなくあの森に遊びに行けるから一緒に行こう』とのことだろうと僕は理解した。



確かに子供のころから色々な本を読んで書かれていたことに興味を持っていたので、あの森には一度でいいから行ってみたいと思っていたんだよね。

この世界の3つの神域の内2つもがこの大陸にあるのだけど。シャルトルーズ領と隣国の境にある神山は“どこの国にも属さず汚してはいけない山”と言うよりは、そんなことができる者がいないと言った方がいいだろう。神山と神海は気象の条件が厳しく、神事やよっぽどの自信がなければまず立ち入らない。





うかつに入れば自殺行為だからだ。





3つの中で一番安全なのがオリエントの森。ただし、安全と言ってもその森の動物たちは気性が荒いので出くわしたら死ぬかもしれないと言うのはあるし、広大で迷ったら最悪抜け出せない事もあるらしい。

未成年でもある僕らは魔力が安定しておらず、蝋燭に灯をともすやコップ一杯の水を出す程度の事しかやってはいけない。それ以上に魔力の高い者は、感情の起伏で暴走する危険もあるため成人になるまではその力を封じられる。現在この国にてその魔力を封じられている子供は僕を含めて7人いる。


「ガルスの領もまだ物珍しいモノいっぱいで見て回りたいな~って思って!」(領内を見て回るってことで護衛を巻こうぜ!)

「そうだね。僕も今日はやることなくなっちゃってたし、レフィーは何が見たいのか教えてよ」(了解!僕も興味あるから連れて行ってあげるよ、森の案内はよろしく)

「ホント?!ぅわ~い」(ゃっり~!楽しみ)


僕らの会話を聞き、控えていた執事を始め侍女が微笑ましそうに僕らを見ている。領が平和だろうと隣国の問題が解決していても、護衛は必ずついてくるので護衛長はその指揮の為に部屋を出て行っていった。




う~ん・・どう巻いたらいいかな?今は考えてもろくに思いつかないな。まぁさっさと食事を終えて、一度僕の私室に一緒に戻って、人払いをしてレフィーと話そうかな。




そう思い直して、少し食事を急ぐとレフィーも気が付いたのか僕に合わせるように食べだした。うん、食後のお茶だけは部屋に運んでもらおう。


「森に行くのはいいんだけど・・何をするの?森の精霊は夕暮れくらいじゃないと行動はしないんじゃないかなぁ?」


お茶と果物を持ってきた侍女を下がらせ、扉が閉まってから僕はレフィーに向き直って口を開いた。


「あ~うん、それは確かに・・でも、ガルス遺跡好きだよね?森の奥に見つけたんだ。ルクスレインも生えてて、そこには動物たちって近寄ってこないんだよ」

「へぇ、何か神聖な場所なのかな。いいね、そういうの好きだよ。ま、問題はどうやって抜け出すか、だね。僕はいつもの事だからいいんだけど・・・」

「兄様達がくれぐれもってここの使用人の人たちに念を押してたもんね。私いっつも監視付き!もう窮屈!!」


レフィーのストレスも溜まっていそうだなぁ。確かに、あの過保護な2人は陛下のご命令の今回の仕事についての条件として、我が家に滞在するレフィーの監視としてうちの使用人たちにとてつもない念を押していった。勿論うちの使用人たちはレフィーの事を哀れに思って必要最低限の事のみの報告だけにしている。


「ま、今回は街に行って美味しいお菓子でも食べようよ。僕がよくいく穴場的なところあるんだ。街には良くお忍びで行っているからね、護衛なくても大丈夫だよ」

「うん。私も大通り沿いのお店をちょっとしか覗いてないからそれでもいいや!」


レフィーもそれで納得してくれたみたいなので、呼び鈴を鳴らして執事を呼んだ。


「失礼いたします、坊ちゃま。お呼びでしょうか」

「うん、今日はこれから街に行こうと思う。馬車を用意してくれる?それと、街だし護衛はいらないから」

「畏まりました。そのように手配いたします」



と、いう事で。



ワイバーンさえいればすぐに行けるのだが、生憎僕のワイバーンを今日は兄上に貸してしまっているし、レフィーのワイバーンは心配性のお兄様方に取り上げられている為にオリエントの森は断念。また次回ってことで、レフィーとは計画を立てた。


「ごめんね、レフィー。でも、街だったらみんな黙認してくれるから大丈夫だよ」

「うん、ありがと。楽しみだな~」


「取りあえず今日は無理そうだからまた行こうね」そうレフィーと話をしながら屋敷を出た僕らは、屋敷に横付けされている馬車に乗るために階段を下りているところだった。





+++++++





「よぉ、ガルス!!ちょっと付き合え」








「えっ・・・なんで、君っ」

「ぅひぇっ!なになになになになにぃぃーーー??!」


急に僕らの上に影が差し、そんな言葉が掛かったと思った瞬間に僕とレフィーは上空に持ち上げられていた。突然の出来事にレフィーは僕に抱きついて顔面蒼白になっている。




―――あっぶなぁ~。レフィーの事をエスコートしていて良かった・・じゃないって!!




レフィーには驚かして悪い事をしたと思うが、こいつはいつもこうなので僕と仲が良いという事は、これからこいつとも付き合うという事になる。これからも僕の側にいたいと思うなら慣れなければやっていけないぞ?


「なにっ・・どうなってんの?ガルス~っ絶対に放さないでぇぇ」

「大丈夫大丈夫、落とさないから」

「めっずらし・・お前が女連れ?」

「いいからいつものとこに行って早く下ろせ!」

「お~」


僕らを掴んでいるのは鉤爪が見えるのであの怪鳥だろう。ぐんぐん上がる高度の中で僕がそう叫ぶと、間延びした声が聞こえ、その後の掛け声ひとつで領の郊外まで飛んだ。


「おい!分かってると思うが何時もよりも慎重にしろよ!」

「あぁ、勿論!俺がこいつの操縦を間違うわけねぇーだろ」


こいつが操るのは山岳近くに生息するワイバーンではなく、海に面する切り立った崖側に生息するティータックスという海に潜り空を飛ぶ大型の鳥で最大種は6ルールラ(メートル)にもなる。その生態は非常に仲間意識が強くて狂暴なため、手懐けるのはとても難しい・・・が、あいつの一族はそれが出来て一人前とされるのでその術を知っている。


「おい、お前――・・一体何回言えば分る?」

「プッ・・ハハハハ!わ~りぃわりぃ」


地面に下ろされた僕はつかつかと側により、胸ぐらを掴んでそう言うが・・・こいつは全く気にせずにただ笑っているだけだ。


「いつもよりも慎重だったろ?」

「そうじゃないだろう?!お前分かってて来たんだろ?考えろよ!」

「お前が認めたんだろ?だったら大丈夫だ」


下ろされた場所は僕らの秘密基地――と、僕らが呼んでいる――の領の郊外にある山の麓で、ここを知っているのは僕とこいつとあと2人。取りあえずみんなにレフィーの事を仲間に入れたいと手紙を書いておいたのだが・・・それで来たのだろうな、こいつは。


「もういい・・で、何で来た?」


深くため息をついて手を放すと、こいつはニヤリと口角をあげて初めて見るティータックスにもたれ掛った。

その視線は僕の後ろに行っていて、視線を追うように後ろを振り向くとレフィーが四つん這いになって何かブツブツ言っていた。あぁ、怖い思いをさせて悪かったな・・。


「手紙読んで気になったから来た。あぁ、大丈夫大丈夫!父さんは快く送り出してくれた」

「“父さんは”ってことはまた!・・・はぁ。まぁったく、その思い立ったら即行動ってやめてくれないか?」

「プハッ!それこそ今更じゃねぇ?前はかってに来たから・・・まぁ、怒られたけど。今日は違うからな、大丈夫だ」


笑っているこいつを置いておいて、僕はレフィーの側に歩み寄って片膝をつく。そっと顔を覗き込むと、心なしか顔が青い・・そりゃそうだ。『ガードなしとか・・・コードレスバンジー・・』とかちょっと分からない事を呟いていたけど、大丈夫だろうか。


「レフィー・・大丈夫かい?立てる?」

「ぅえっ!あ、うん、ありがとう・・・・・って、ひぎゃーーっ!何あれぇぇ」


僕が手を貸して立ち上がったレフィーは・・・うん、案の定僕らをここまで運んできたティータックスに驚いて僕の背に隠れるように抱きついてきた。そろ~っと僕の背から目の前にいる3ルールラほどのティータックスを怖いもの見たさで見ているのだろうか、背後から『何あれ・・ワイバーンとは違う・・ペンギンっぽい。鳥?鳥なの?!』と言う声が聞こえる。


「ちょっ・・大丈夫?あれ大丈夫?!あれに食われないぃ?」

「大丈夫、食べられないから落ち着いて」

「お~、お前が認めただけあって普通・・令嬢・・じゃなさそうだな」

「うるさい、お前は黙ってろ」


ティータックスはワイバーンと同じく色は様々いる。が、ティータックスは色の濃いモノは魔力が強く気性が荒い。そして、目の前にいるのは濃い紅色でちょっと興奮しているのかその嘴から少し炎がちらついている。ワイバーンでは加護種と呼ばれている精霊付きがいるが、ティータックスは魔種と呼ばれる魔力を使うモノがいる。このティータックスは炎を使うようだ。


見た目は海に見もぐれるように羽と言うよりは毛に近く、触るとその艶々な見目通りにすべすべした毛並だ。尾は長く装飾品としても人気がある。


「はいはい、怒んなよガルス」

「怒らすようなことをするな」


楽しそうにヘラヘラと笑うこいつは置いといて、僕は取り乱しているレフィーを何とか宥めた。何とか落ち着いたレフィーを連れて、僕らは漸く今まで放置していた彼と向き合った。


「ごめん、取りあえず挨拶かな」

「ん、怖がらして悪いな。俺は隣国の、南の隣国のエルスガルド・バックス・ゴーク・ポルトゥーナだ。ポルトゥーナ国の王太子の地位にいる。趣味はいえを抜けだして遊ぶこと。こいつは最近手懐けたばかりで名はフィール・・ガルスにも初めてだったな、ドルーゴの息子だ」

「ドルーゴの?まぁ、確かに野生っぽくないとは思った。レフィー、大丈夫だから出ておいで・・・あいつには前にもあったことあるだろ?」

「前?」


僕の言葉に訝しそうな顔をしたエルは寄り掛かっていたティータックスのフィールから背をはなし、僕の背にいるレフィーを覗き込んだ。

あ、ちなみにドルーゴはエルが初めて捕獲して手懐けたティータックスで、その時の群れのボスだった。


「会ったこと・・・あるか?」

「僕も最初は気が付かなかったし、驚いたよ」

「え~と、会ったことあったっけ?」


ワイバーンの方が見た目怖いと思うのだが、ティータックスに脅えているレフィーもおずおずと言ったように僕の背から出てきてエルに向き合った。でも、その両手は未だに僕の上着を握りしめている。


「おはようございます。レフィール・ウェルナールともうします。よろしくお願いいたします・・・“エース”様」

「!・・・あぁ、ヴィーの城の不思議なちびっこ。へぇ、ウェルナールの噂の末姫か!」


大きく深呼吸してからあいさつし、ニヤリと不敵な笑みを浮かべて一言付け足した。


「え、ちょ・・う、噂って何?!」

「「末姫が気に入らなければ、ウェルナールの一員にはなれない」」

「はいぃぃ?!なにそれっ」

「後は、機嫌を損ねたら家から潰される?」

「でも、幻の末姫だから会うのが大変?」

「私の知らない間にすんごい事に!幻って、私はユーマか!!!」


暫く変な掛け合いみたいな会話か続いてしまったが、それが逆によかったみたいで二人はすぐに仲良くなった。

そして、僕の事を見上げて『言っても大丈夫?』と目で聞いてくるレフィーに笑顔で1つ頷いた僕に、エルが今度は不思議そうな表情を浮かべた。


「ん、よし!じゃあエルに私の秘密を話します。他言無用でお願いしまっす」

「お・・何?」

「もしも他言した場合・・・兄2人が国をつぶします!」

「おぉ、いわねぇよ!こぇーよ」


そんな前置きをしてからエルにさらに自分が“客人”だという事も告げて、ヴィーの天敵とエルに呼ばれたことを楽しそうに笑みを浮かべている。レフィーに驚いたあとなるほど、と頷いてからエルは未だチラチラとティータックスを見ているレフィーと握手している。






そして、僕は今目の前の光景に頭痛のする頭の米神を少し揉みながら耐えている。





あぁ、さっきからため息しか出ないよ。




「レフィー!そっちだ、行け!」

「おぅよ!」


現在僕らがいるのはオリエントの森だ。エルにさらわれる様に連れられるのは――僕にとっては――いつもの事だが、レフィーも一緒という事で今頃屋敷では大慌てかもしれないという事は置いといて、狂暴と言われているオリエントのブルドウに自ら突っ込んでいくのだけはやめてくれないかな、2人共!!



特にレフィー・・君は少しでも怪我したら僕の領が危ないって理解してる?



「あぁ~~!ごめん、エル!逃げたぁぁ」

「大丈夫、任せろ!」


護衛もなく、エルも一度は行ってみたいという事でじゃあ折角だし遊びに行こうと言ってきたまでは良かったが・・・だめだ、いい意味でも悪い意味でもこの二人は同類かもしれない。


「・・・はぁ・・もう少し状況が違えばなぁ」


この世界に来たばかりのころは魔石の魔力を自在に操っていたみたいだけど、この世界に登録されてその上今は自身に移った魔力封じられているよね、レフィー?

エルも・・君が魔力に頼らずとも強いのは知っているし、今はレフィーからもらった上魔石を試したいのは分かるけど、君は隣国ポルトゥーナの唯一の王位継承者って理解しているよね?!




「「イェーイ!!」」






あぁ・・倒したんだ。






『見てみてガルス~』と叫びながら数ルールラ先ではしゃいでいる2人はとても楽しそうだ。いや、どっちかと言うと僕も混ざりたいとは思うけど・・今は事情が事情だし、ただたんにこの森に遊びに来たと思っていただけに、動物たちに向かっていくなよ。うん、喜んでないで一先ず落ち着こうか。


「エルすっごーい!さっすがぁ~」

「いいなこの森!まぁ、1ロルくらいの子供なら程々だな・・・よし、他に居ないのか?!」







――――・・・・うん、よしっ。







取りあえず一呼吸おいて何かが切れたような音がした僕は、その仕留めたブルドウを置いて次の獲物を探しに行こうとした二人に近寄った。

そして、徐に二人の頭をわしづかみにし・・。




ゴンッ  ゴンッ




「イデッ!」

「イタッ!」

「・・・・」


僕が殴った頭を押さえながら何か言おうと涙目で見上げてくる二人を見下ろすと、僕が何も言っていないのに青い顔をしてその場に正座した。うん、偉いね二人とも。


「僕が・・何言いたいのか、分かる、よね?」

「「・・・っ」」


取りあえず笑みを浮かべておいたつもりだったけど、2人がさらに顔を青く染めたのは良く分からないが、今後の為に説教だけはさせてもらおうかな。










なんか、また説明文みたいな話で申し訳ありません。


楽しんでくだされば幸いです。

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