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オタクですけど、何か?  作者: TAKAHA
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閑話1-3





「ふふ・・・折角の俺たちの休日をつぶした根性腐りやがった王侯貴族を血祭りにあげてやりましょう兄上。一思いにさくっと行くと思ったら大間違いですv」


―――外面だけは―――黒さの欠片もないとても無邪気で純粋そうな笑顔と声色で言い放つフォルディナートは、持っていた剣を―――鞘から抜いて―――玩びながらマティアスと向かい合っている。


「オリエントの森で、加護付きのワイバーンに乗った、青い髪の、妖精のように可憐な少女が、例の服を着て、居たそうなんですよ~」

「・・・」


何故か一言一言を強調して話すフォルディナートの言葉を聞くたびに室温が変化していくのがわかり、サイラス達の3人は青ざめた顔をして、その上逃げ腰でドア近くの壁に背中を押し付けていた。

国最強を謳う色騎士が出来るものなら意識を飛ばしたいと思うほど、その一室は寒々しく、窓に至っては真白く霜が張っていて外の景色が見えなくなっている。


「―――なので、兄上」

「・・・」

「俺もうあの国潰したい♪」


それはそれは無邪気に言うフォルディナートの笑顔は輝かんばかりだ。


その上、ニコニコとほほ笑んでいるが始終無言のマティアスにキャハvとでも効果音が付きそうな顔で言い放ったフォルディナートの物騒な言葉に3人は心の中で叫んだ。





『『『何を言い出すか、この野郎―――っ!!!』』』





と。









「・・・フォル」


だがしかし、そんな3人の心の叫びもどこ吹く風。


、国を潰しちゃ駄目だよ。あぁ・・ついでに城もね、フォル。王侯貴族ならつぶさ・・残しておかなきゃいけないから、潰していいのは目だけだよ。1歩譲って両足と両腕くらいはもぎ取ってもいいけど、殺しちゃいけないよ」


(((いいの?!しかも100歩じゃなくてたったの1歩?!!!)))


「あ、そっか!そうですよね、すみません兄上。あの趣味の悪い城でも売れる物は多いから民の為に残しとかないといけませんね。それに見せしめも必要ですもんね」


(((見せしめ?!!)))


「ハハハ、そうだよ。あぁ、リアンと代わってフォルがワイバーン部隊を連れてラガスに行きリオラグド様と彼を慕っている貴族全てもお連れしなさい」

「はい。あ、途中で進行中の部隊見つけたら生き埋めに・・いや、やっぱり燃やしていいですか?」


(((燃やしちゃ駄目((だ)ろう)?!!!)))


声色だけ聞いていれば実に和やかな会話だ。内容は決して聞いてはいけない―――怖すぎる。そして、雰囲気だけを、聞くべし。物騒すぎる事はこの上ないが、何か喋っているなぁくらいだったらダメージは受けない。

漸く口を開いてフォルディナートを戒めてくれる!と思ったマティアスから発せられた言葉に、サイラスは深くため息をつき、リアンは硬直し、リーヴェトゥーネに至っては気絶しそうなほどだ。


「城は私がつ・・・いや、赴こうかな。皆は周りを囲みなさい・・・ノワールとブロンは勿論、私の持っている力を極限まで活用しますので、城から1キラル(㎞)は離れておきなさい」

「はい、兄上。お手を煩わせて申し訳ないです」

「「「はい、マティアス様・・・(((今、潰すって言いかけた・・)))」」」


ニコニコとほほ笑みながら会話をし続ける兄弟に、色騎士3人は心の中で突っ込み過ぎてぐったりとしていた。




+++++++




金銀宝飾品の飾られた目にとても悪い城には多数の魔石が埋め込まれており、まるで御伽のお城のようだ。渡り廊下にはキラキラと輝く水のシャワーが降り注ぎ、噴水からはシャボンが生まれていい香りがはじけ飛ぶ。長い廊下は全自動で動き、左右の壁の明かりは炎が舞うように辺りを照らしている。


「――――・・・技術を無駄に使っているな」


遠目から見ても美しく輝く王宮は税の限りを尽くされた事が一目でわかるが、一歩でも城下に下りると王侯貴族だけが優先される悪政に苦しむ国民たちが目も当てられないように生気を亡くしたような顔でその日その日を暮らしているという・・―――。


嫌悪も露わに歩を進めるのは、そんな王宮に負けず劣らない容姿を持つマティアス。一歩また一歩と進むたびにそんなあり得ない状況に腹が立ってくる。ブロンとノワールに隅々まで探らせたマティアスは、すでにこの場内には上は王族から使用人に至るまで王太子派・・・・が一人も残っていないのを確認している。


「・・・・城を破壊しない程度に加減は無用。他精霊の力を使うのは久々ですね」


フフフと黒い笑みを浮かべ、夜会用に使われる大ホールのこれまた趣味の悪い扉の前に立ってマティアスはその右手を前に掲げた。



「始めましょう・・・恐怖さいご宴会うたげを」



その言葉と共に放たれた赤い光に扉は派手な音を立てて吹っ飛び、そしてそこを起点に左右へと炎の壁が天井高く燃え上がった。運よくと言ってもいいのだろうか、扉の近くには誰もいなかったらしく巻き込まれた者は居なかっが、中に居た者達は一瞬唖然としたのち驚愕と悲鳴の声が聞こえてきた。



「きゃーーーーーっ!!!」



予想通り、趣味の悪さの極みともいうべき部屋で行われていた舞踏会には、豪華な色とりどりの衣装を身に纏った貴族たちが犇めき合い、若き王の思い付きで始まったこの度の戦の事が成功することを前提に話されていた。


「だ、誰かっ・・た、たた助けてくれぇぇっ!!」

「ぐふぅっ・・や、やめろ・・・っ!!?」

「何が起こった。これは何だ?!!」


数分前の和やかな雰囲気から一転し、同じ部屋であるそのホール内では阿鼻絶叫・・・人々は恐怖し逃げ惑うが、辺り一面は火の海になっており、ホール内を行き来するだけで逃げ場などどこにもない。


「俺様に群がるな鬱陶しい!!おい!どういうことだ、報告しろ!!」


逃げ場のない状況に国王である自分に縋りついてくる人々をかき分けて、アスファルドは憤慨してまわりに居る側近たちに怒鳴り散らす―――が、誰にも状況が呑み込めずにただ首を振るだけだった。


「誰の仕業だ!!俺様に対して随分とでかい態度をっ・・・」

「―――愚かな王だな」

「!・・何?誰だ!!俺様に向かってそんな口を利くとは処刑だ!!」


そう叫び辺りを見回したアスファルドの目の前に現れた人物は、燃え盛る炎の壁を物ともせずに微笑を浮かべながら歩いてくる銀糸の髪の美麗な男が一人・・・。


「魔力もなく、加護もない唯無能な糞餓鬼が大きな口を叩くだけとは・・・何とも情けない国になったものですね」

「何だと貴様!!」

「我らが偉大な国王、アスファルド様に向かって何という口を!!」

「恥を知れ!!どこの馬の骨だ!!」


まるで悪魔か、はたまた魔王か、そんな言葉が似合うその男性に一瞬見惚れるも、その口から出る蔑みの言葉にカッとなって叫ぶアスファルドに続き、周りの側近や貴族たちも口々に囃し立てた。


聞くに堪えない言葉ばかりだが、マティアスは炎の壁を背に唯微笑を携えて佇んでいる。そして、彼らが口を開くたびに徐々に変わっていく炎の色に比例して降下していくマティアスの機嫌も最大値に達しそうになっていた。

赤かった炎は現在青く変化し、石作りのバルコニーが若干溶けかけている。そして、マティアスから漂ってくる冷気に誰もが気が付かずに愚かな面々は自身の身を危険にさらした。


『黙れっ!愚かな屑虫共が!!』

『一言でも口を開いたらその首を食いちぎってやるぞ!!』



「「「「「「「「「「「「「「 ひ、ひぃぃぃっ 」」」」」」」」」」」」」」



と、そんな彼らを黙らせたのは突如現れた大きな白と黒の虎。優に3メートルはありそうなその2匹は一体どこから現れたのか見当もつかないが、グリアフォールの者どもに一括を浴びせると、グルグルと喉を鳴らしてマティアスにすり寄っていった。

その光景に、彼らは青かった顔を白にまで血の気を引かし、ある者はその場で腰を抜かし、またある者は隣に居た者と抱き合っている。


『マティ、言われた通り城の兵は捕まえた。あと、あいつらも引きずってきた』

『すごい?すごいか?ノワールもブロンもすごいだろ?なぁなぁ、マティ!』

「あぁ、2人とも偉いぞ。よくやったな」


穏やかな口調と輝かしい笑みで2匹を褒めて撫でてやり、血の気も引き覇気の無くなった王を含めた貴族共を蔑み、マティアスは指を鳴らして周りの炎の壁を消し去った。


「白虎と黒虎・・・2頭の聖獣・・・はっ、ま、まさか貴方はっ!!?」


団子状になっているアスファルドのいる一団の誰が言ったか分からないが、その言葉に――― 一部を除いた―――殆どの者がハッとしてマティアスを見上げた。


「おや・・・失礼。こんな国でも私の事を知っているものが一応・・いらっしゃったのですね」


ハハハ、驚きですね~と、一切思っていないような棒読みと乾いた笑いを浮かべ、マティアスは未だに自分の事を敵視しているような視線で睨みつけてくる愚王に視線を向けた。

頭空っぽな貴族や女はただ王と共に睨みつけてくるかポカンと間抜けな顔をしているが、事態の深刻さに気が付いた数人は泡を吹いて気絶するか真っ青な顔で後ずさっていくものも見られる。


皇国にいる“神の矛”の異名を持つ異例な力を持つ者、マティアス・クライン・ウェルナールは1体と契約するのでも珍しい事なのに、2体の聖獣―――しかも、上位聖獣―――と契約を結んだ上に、光・水・風・雷と異常なほどに精霊までにも愛され、加護を持つ者として名を轟かせている。ただ、表に出る事があまりないのでその姿を見る者は―――他国には―――殆ど居ない。

しかも、その弟であるフォルディナート・バーミリオン・ウェルナールは世の騎士の憧れであるグリフォンの王であるゴールドグリフォンと契約しており、こちらも火・土と多精霊な上にどちらも精霊王と契約していることで有名だ。


そして、現場に赴くことはない影の指揮者のマティアスが目の前にいるという事実に恐怖を抱くほど賢い者が一応グリアフォール国内に居たらしい。


「神の国シドラニア皇国皇帝の使いで来た。愚かしい道化アスファルド・シャモア・グリアフォール――――貴殿の代でこの国は終わりだ」

「ばかばかしい事を言うな!!おい貴様ら!こいつを捕えろ!!そして公開処刑だ!その首を手にシドラニアに攻め込むぞ!!」


未だに挑戦的な視線を向けてくるアスファルドにゆっくりと歩み寄り、蔑みの視線と共に発せられたその言葉にまだ賢い側近はがっくりと肩を落としたが、唯一アスファルドは直も小馬鹿にしたように突っ掛ってくる。


「はっ、何が神の国だ!魔石の1つも発掘できないただでかいだけの国が俺様の国に立てついてんじゃねーよ!!父上と母上だって黙ってねーぞ!!」

「・・・ほぅ」


まるでただの我が儘な子供。より一層目を細めたマティアスは、不敵な笑みを浮かべてパチンと指を鳴らした。







今日は続けてもう一話UPします。


お付き合いください!

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