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オタクですけど、何か?  作者: TAKAHA
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9話




蒼き騎士殿を教会まで送ったその足で、折角シュタインヴェルタまで来たのでこの街の名物の1つである飴を買いに行こうと現在散策中である。飴と言っても元の世界のモノとはだいぶ違い、何に近いと言えば祭り屋台の林檎飴に近いものだ。


「え~っと・・たしかみなみどおりのなかほどのみせっていってたなぁ」


一度リヒトおじ様が買ってきてくれたものを食べて気に入った私に、兄や父がお土産で買ってきてくれるがお店の名前は知らない。だけど、有名店という事で近くの人に聞いたらすぐに教えてくれた。



それより、ここに来たのは血縁の儀以来なので10年ぶりだ。あの時は外の景色を楽しむ余裕もなかったし、ちょっと嬉しい。



ここシュタインヴェルタは果実酒の産地であり、その原料の果実を使って作る飴は、葡萄によく似たバルナと見た目ライチで味は苺によく似たチェルダーに砂糖をコーティングしたシャパンと呼ばれるお菓子である。

甘酸っぱい果実に、薄く張った飴がぱりぱりして実に美味しい。勿論私の好物でもあるのだけど、トラウムの為に大量に買っていこうと思う。何故って?トラウムはバルナが好物な上に、見ず知らずの人を乗せたことで機嫌が頗る悪いからご機嫌取りに、ね。



それにシャパンは名前も物も異世界の物らしい。林檎飴に似ているが、名前もという事で地球ではなくまた別の世界だろう。この世界の各国だけではなく別世界の物もあって毎日が興味津々だ。


「おにーしゃん!これで買えるだけ1番のバルナのシャパンくだしゃい」

「お、お嬢ちゃんお使いか?偉いなぁ~」

「えへへ~」


腰には布を巻いてスカートのように見せて、子供らしくにこにこと舌っ足らずにそういうとカウンター内にいた店のお兄さんはデレッとしてから準備してくれた。いいねぇ、子供に甘い人は大好きだよ~。

しかし可愛い子供はホント得だよなぁ・・・この姿になってから、最大限利用していますともさ。


因みに1番は大粒で大体林檎位の感じな大きさ、4番は500円玉より少し大きいサイズで6番まである。


「ほぅら、新商品のレジンの飴をあげよう。食ってみな」

「ぅわぁ~いいの?いいの?」


半銀貨で買えるだけのシャパンを袋詰めにしてもらって両手を出して受取ろうとしたら、その手に載せてくれたレジンのシャパン。レジンは見た目も皮をむいてみても蜜柑のようなものだが、中身の色は黄色で薄皮は無くて味はパイナップルに似ている。

最近品種改良で粒の大きなものが出来たとの報告が父の元に届いていたのでそれを加工したのだろう。

ジェスチャーでそのまま食え食えと言っていたので、そのまま頬張ってみた。私の口にはその一粒が大きくて最初中々噛めなかったが、咀嚼できると果汁が零れそうなほど口いっぱいに広がった。


「おいひぃ!」


両手で口を押えて咀嚼して飲み込んでからそういうと、自分でも意外なほどに声が大きく叫んでしまったが、それほどに美味しかった。


「そうだろうそうだろう!なんたってお兄さんの自信作だからな」

「おにいしゃんさいこう!」


ぐっと親指を立てて褒め称えると、お兄さんもぐっと親指を立ててくれた。

ふふんと鼻高々なお兄さんにそれも下さい!と思わず言って5つ買った。バルナやチェルダーも粒によって値段が変わるが、レジンは1種類しかなくて値段もそこそこ高かった。

こんだけお土産があるならトラウムの機嫌もすぐによくなることだろう。レジンのシャパンを3粒は残してリーシャの機嫌取りに使おうと思う。


「またかいにくるね!」

「おぉ、いつでもこいよ。お嬢ちゃん」


両手でシャパンの詰まった袋を抱きしめるようにもって、お兄さんにそう告げるとお兄さんは店先まで出てきて手を振って頷いてくれた。

そのままシャパン専門店を出て、暫く街を見て回って色々買い食いしつつ気に入ったものを買った。

やっぱいいね、久々の外出は楽しいわ。元々は引きこもりだったけど買い物自体は嫌いじゃないし、自ら引き籠るのと外出禁止で引き籠らざるを得ないのは意味が違う。

漫画や小説の世界観が目の前に広がっているのにじっとしてるなんて性に合わない。






あぁ~~~~っ!!カメラ!デジカメでいいから持ってきたかったぁぁ!!!







『おぉ!これを全て食してよいのだな』

「もち、トラウムにはきょうはめいわくかけたからね。ほら、あーん」


半銀貨でA4サイズの紙袋ぎっちり詰めてくれたシャパンに、案の定町はずれで不貞腐れていたトラウムは目を輝かせて棘のついた尻尾をぶんぶんと振った。あぁぁぁ!尻尾気を付けて、木がなぎ倒されるって!


『これは本当に美味いな。フィーもっと食べるぞ』

「どうぞ、あ~ん」


トラウム用にと林檎ほどの大きさをかってきたのだ、1つずつ口に入れてあげると物凄く噛みしめて食べている。ワイバーンの主食はお肉だが、結構雑食らしくなんでも食べている。そして、トラウムは甘い果物が一番の好物だ。

トラウムはこの世界でできた私の親友。表情が豊かなわけではないが、今のトラウムの機嫌はとてもいい。食べ終わってから口を開けてあ~んと催促してくるトラウムにこちらも嬉しくなる。


『フィー、これからどうするのじゃ?』


袋いっぱいあったシャパンをぺろりと平らげて満足そうにぐるぐる言いながら尋ねられたことに、特に考えてなかった私は暫し悩む。

森に遊びに行くつもりなだけで出て来たけど、どっちにしろ父も母も兄も暫くは帰ってこない。久々に出て来たんだし、夏だから虫にさえ気を付ければ夜になってもいいだろう。


「このせかいにきたばかりのときをおもいだして、オリエントのもりでのじゅくかなぁ」

『・・・・・本当に逞しいの、お主は』

「そんなにほめないでよ」


褒めてはおらんときっぱり言いつつも、トラウムの背に跨るとトラウムはオリエントの森に向かう為に翼を広げた。

理由は忘れたけどあの湖には夏の終わりの時期に森にすむ精霊だったか妖精だったかが集まるらしい。話は聞いていたけどまだ見たことないんだよね。良し、野宿する理由見っけ。


日はだいぶ傾いたけどまだまだ明るい。森に戻って拠点に使っていた場所を綺麗に整えれば何とかなるだろうなと、そう考えてトラウムに抱きつくように俯せになった。


『?・・・どうしたのじゃ、フィー』

「ん~?ふふ、トラウムのことだいすきだとおもってね」

『ふん、そんなこと。知っておるわ』


少しぶっきらぼうに照れたようなトラウムの声に私は嬉しくなって笑った。スピードを上げたトラウムのおかげで、もう前方の方にオリエントの森が見えてきた。





++++++++






「おぉ!すごいな~」


日が完全に沈むまでにはちゃんと準備することは出来なかったが、その代わりに大きなバナナの葉っぱみたいな葉と、蔓を使って即席ハンモックみたいなのを作った。多少整えた所には、トラウムが寝そべっている。

そして、私たちの目の前に広がっている湖には色とりどりの光がふよふよと浮かび、あっちに行ったりこっちに行ったりと楽しそうだ。


『うむ。これはまだまだ少ないな・・・最大だとこの倍はあるじゃろう』

「へぇ~!このばい!?そうだよね、まだまつづきじゃないもんねぇ」


あまり興味なさそうなトラウムだったが、ちらりと湖に視線を向けてそれだけ言うと目を瞑ってしまった。どうやら寝る事にしたようだ。

私もちょっと眠くなってきているのだが、それよりもこの幻想的な景色に目を奪われて眠れそうにない。

まるで有名どころのイルミネーション!でも、よくよく見ると精霊だと分かるし、私に気が付き興味を持った子達が目の前まで来たりする。父達と契約している精霊とはやっぱり別モノなんだなぁと実感した。







つんつんと横から刺激が来て、意識が浮上してきた。うぅ~ん、え・・何?トラウムの声が・・・。







『・・・フィー、起きよ!早う起きるのじゃ!!昨日お主はあの蒼き騎士に口止めをしなかったのじゃろう?これ、フィー』

「ぇ・・・ふぇっ!!」


お、おぉいつのまにか寝ていたよ。やべっ、よだれが・・・。


トラウムが鼻先でつんつんと私を突き揺り起こして何か喋っているが、え・・何?ワンモアプリーズ!


『ぷりぃずとはなんじゃ?それよりも起きぬか!もう日が昇り始めておるわ』

「おきたよぉ~・・てか、まだねてていいじかんだよぉ」

『そんな場合じゃないのじゃ』


まだまだ頭がボーっとしてて2度寝出来そうだ。確かに日は昇り始めているが、辺りは薄暗い・・・7時くらいかなぁ?

そんな感じに思いながら目を擦っていたら、トラウムに爆弾を落とされた。


『今、連絡が入ったぞ。イェーガーからだ・・・兄殿が館に戻ったそうだ』

「ぅん~・・・・・・・・は?!にいちゃまが?!」


イェーガーは兄が使っている水の加護付きのワイバーンで、トラウムとはまた違う真っ赤な瞳と暗い緑色の体が特徴的だ。そして、ワイバーンは仲間同士で連絡が取れる方法があるらしく長距離にいても届くらしい。

いやいやいや、それより今なんつった?兄が館に戻った。戻ったとは、帰ったという意味だよねぇ?


「どっ・・・どどどどどうしてぇぇぇ?!!だ、だっていっしゅうかんはかえってこれないっていってたよねぇ?!」

『妾にもようわからんが・・・まぁ、兄殿じゃからな』

「う・・こっそりかえってベッドにもぐりこんだらばれないよね?!トラウムはさんぽにでてたことになりゃだいじょうぶだよね?!」

『・・・・』


眠気は一気に吹き飛んだ。これは悠長にしてはいられない、すぐにでも帰らねば命に係わる。主に精神的にやられる!!

普段は温厚な兄も、私に対してはそりゃあもういじめの様な溺愛も溺愛をしてくれる。構ってもらえてうれしかったりするのだが、今回はただの甘やかしの溺愛にはならないだろう。

見た目に反して何こいつらと言いたくなるほどな兄ですよ。チート・・・じゃない、そんなんでは言い表せないような・・そうだ、バグだ!常識というモノをそっくりそのまま捨てた様な兄だ。くぅぅ・・見目はすこぶるいい癖にっ!!

てか!そんな兄だから一週間が3日になっても何らおかしくはない、無いと言えばないのだが・・。


ばれたら絶対に300パーセントお仕置きという名の溺愛が待っている事だろう・・・やばいぞ、恥ずか死のフラグがビンビン立っている気がする!!


「ト・・・トトトラウム!ハイスピードでっ・・マックススピードでかえってぇぇぇ」

『・・・無駄だと思うが』



駄目だ。



焦りすぎて頭が痛くなってきた。



トラウムは無駄と言いつつもちゃんとマックススピードで帰ってくれたのでほぼ一瞬と言っていいほどで着いた。うえっぷ・・寝起きにマックススピードはちょっと堪えたし、夏と言っても早朝は寒い。



そぉっと屋敷の様子を窺うと、兄の部屋の浴室の方に明かりがついているように見える。



わ、私も風呂に入る!!寒い!!



「よっし・・だいじょうぶ、だいじょうぶ。つかれてかえってきてるから、おふろはいってるっぽい」


ふぅ・・・?


『!・・・わ、妾はフィーに付き合っただけの事!それ以上は知らぬぞ』

「ちょ、どうしたのトラウム」


取りあえず竜舎の近くでトラウムから降りると、どこか焦ったようにそう言ってトラウムは逃げるように竜舎へ行ってしまった。不思議に思いつつも極度の緊張にあった私は早く部屋に戻らねば!の考えだけが頭を占めていた。

周りには誰もいないし何もない、家の裏手に回った私の目の前には漸く私の部屋のテラスが見えてきた。


「ほっ・・だいじょうぶそうだ」


何事もなく帰ってこれたと心底安心し、2階にある部屋に帰るべく蔦を手にして壁に足を掛けたっとき・・・。


「そうだな、無事に家まで帰って来れたね」

「俺たちと、前どんな約束したのかなぁ?」

「ひぃぃぃっ」


背後から掛かった穏やかな声と、肩に載せられた暖かな手に思わずそんな声が出た。



ど、どどどどどこに隠れて居やがったっ!!



・・・じゃない!な、なぜここに。


「あ・・・ぅ・・」


恐る恐るいう事を聞かない首に鞭打つように後ろを振り返ると。

見目麗しい男性が2人。長髪の月光の様な髪の男性と、ウルフっぽい感じの真っ赤な髪の男性が・・・とても、とても恐ろしいほど穏やかな笑みを浮かべて立っていた。


「約束はどうしたのかなぁ?可愛い可愛いお姫様」

「忘れたなんて、言わないよねぇ?」


そう、何度も何度も言うがと・て・も見目麗しいのだ。昇りはじめた朝日に照らされたその清楚な顔はご令嬢10人いたら9人は見惚れるものだろう。




だが、分かる人にはわかる・・・目が笑っていない!笑みが黒すぎて怖い!!




使用人が起き始める時間帯。皆の迷惑を考えず、私は力の限り叫んでしまった。



「ひぎゃぁああぁぁぁーーーーーーーーーーーっ!!!」



青い顔をして硬直した私を見下ろして、2人は・・・兄2人はとてもとても美しい笑顔を浮かべていた。








次は閑話を入れようと思っております。

それが終わりましたら書きたかった1つ目!


”溺愛するお兄ちゃん”を書きたい!!

理想通りに書ける・・・とは言えないけど、頑張ります。


そして、キャラ紹介と、うまく出来るかわからないけどイラストのっけたいでっす!

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