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修行

「マクガエルさん」

 魔美がオズオズと声を掛けるとキツイ眼差しを返すサリー。

「何ですか?」

 魔美は、引き腰になりながら伝える。

「マクガエルさんは、転校したばっかりだからこの学校の事を案内しようかと……」

「それでしたら、私は、彼にお願いしたいです」

 サリーは、一志を指差す。

「おいおい、まさか登校途中にパンを銜えて走っていた転校生とぶつかったりしたのか?」

 光男の言葉に肩を竦める一志。

「流石にそういう伝統芸能は、習得していないな。解りました案内します」

 挑戦するような視線でサリーが告げる。

「お願いします」

 二人で、校舎を巡る中、人気が無くなったところでサリーが詰問する。

「貴方が魔法少女の協力者だって事は、知っています。大人しく魔法少女の正体を教えなさい!」

 一志が肩を竦める。

「随分とストレートですね。もう少し様子見をしてくると思ったんですが、人工魔法少女いや、WAGワッグのサリーさん」

 サリーの顔に驚きの表情が浮かぶ。

「日本政府にも知られて居ないコードネームをどうして?」

 一志が携帯端末を見せる。

「近頃は、ネットで遠くの情報を掴むのは、簡単なんですよ」

「冗談は、止めて。軍のセキュリティーを一介の中学生が敗れるわけがない!」

 サリーの怒声に一志が苦笑する。

「まともにやれば大変でしょうが、そっちに渡した増幅装置に仕込んでいたウイルスからパスを転送されてますから」

 思わず、携帯用増幅装置に手が伸びるサリー。

「それですか。それじゃ、準備が出来てるみたいですからやりますか」

 一志が手を叩くと、周囲の光が集まり、ナチュラルマミが現れる。

「はーい、見習いさんいらっしゃい。ナチュラルマミが魔法を教えてあげるからね」

「魔法少女!」

 敵意を見せるサリーに顔を顰めるナチュラルマミ。

「何か、必要以上に嫌われている気がする」

 サリーは、携帯用増幅装置を突きつけて言う。

「同じ手は、通じません。『マジカルフレイム』」

 炎がナチュラルマミに襲い掛かるが、ナチュラルマミに触れる前に散っていく。

 指を振るナチュラルマミ。

「駄目駄目、収束にむらがあるからこっちの干渉であっさり無効化されてるよ」

「魔法は、通じないか。ならば……」

 拳銃を取り出そうとしたサリーの喉元に一志が折畳みナイフを突きつける。

「人を殺すには、こんな物でも十分だよ」

 拳銃から手を離すサリー。

「何が目的なの?」

 苦々しい口調で問うサリーに対してナチュラルマミが気楽に答える。

「うーんと、魔法の修行をしてもらいます」

 差し出されたバインダー式のテキストに戸惑うサリー。

「これは、何? 第一どうしてそんな物をしなければいけないの?」

 一志がナイフをしまいながら答える。

「修行の内容を僕が解り易く纏めた手順書だ。する理由は、そっちの事情だと思うけど?」

 サリーが疑いの視線を向ける。

「ならば、それを貴方達がしてくれる理由は、何?」

 ナチュラルマミがシミジミとした表情で言う。

「だって、ナチュラルマミ独りで魔法少女するより、その方が楽じゃん。聞いてよ、林間学校に行っていただけで不誠実だとか、何考えてるんだとか、ネットで色々と叩かれるんだよ。酷いと思わない」

 サリーが冷たい視線を向ける。

「唯一の対抗力である貴女がそんな下らない理由で助けに来れないなんてふざけているとしか思えないわね」

 ナチュラルマミが助けを求める視線を送ると一志が言う。

「とにかく、そっちの欲しいのは、その手順書で手に入る。まあ、ここに居る間は、ナチュラルマミがフォローしてくれると思ってくれても良い」

 手順書を凝視した後、サリーが言う。

「馴れ合うつもりは、無いわ。私にとって貴方達は、私達の運命を捻じ曲げた張本人、絶対に認めない」

 そういって逃げるように去っていくのであった。

 認識阻害魔法を解除して魔美が言う。

「これで良かったの?」

「色々と問題があるけど、取り敢えずは、様子見だ。すまないけどフォローを頼む」

 一志の言葉に頷く魔美であった。



 サリーの持ち帰った手順書は、アメリカ基地で複製が行われ、専用機でアメリカに空送されるのであった。

 セーフハウスで手順書を読むサリー。

「確かに一応には、理論があるのね」

 その時、チャイムが鳴った。

 サリーが玄関に行くとそこには、隼人が居た。

「勝手に入ってくれば良いじゃない。此処は、貴方達が用意したセーフハウスなんですから」

 サリーの冷めた言葉に隼人が頭を掻く。

「最低限の礼儀って奴だ。それより、魔法少女から預かったって手順書を見せて貰えるか?」

 サリーが冷笑を浮かべる。

「これの内容を貴方達に見せる義理は、無いわ。本国からもトップシークレット扱いで処理、見た者を殺しても良いと言われているわ」

「中身を見せろと言っていない、どういう外見で文章のレイアウトどうなっているかそういう物が知りたい」

 隼人の言葉にサリーが眉を顰める。

「そんな事を調べて何になると言うの?」

「地道な調査の一つだ。こういう調査の積み重ねて真実に近づく。はっきり言えば、それを書いたのが魔法少女だったら、本人特定の鍵になる」

 隼人の説明に肩を竦めるサリー。

「日本の警察は、随分と地味な事で。ここに書かれた内容を利用して魔法少女を作ろうとは、思わないのかしら?」

「それは、俺達の仕事じゃない。第一、魔法少女を生み出すのは、そう簡単な事じゃない。それは、君が一番していると思ったが」

 隼人の指摘に歯を噛み締めるサリー。

「好きにしたら良いわ。元々、ここに居る以上、完全に隠蔽する事は、出来ないのだから」

「感謝する」

 軽く手順書のページを捲り、隼人がため息を吐く。

「残念だが、これは、全部高田一志が作った物だ」

 サリーが舌打する。

「そう、本当に残念ね」

「まだ魔法少女を恨んでいるのか?」

 隼人の問い掛けにサリーが憎悪を籠めた瞳で答える。

「恨まないで居られると思う? あんなのが居た所為で、どれだけの人間が廃人になったと思うの!」

「最初にも言ったが、それを魔法少女にぶつけるのは、間違っている」

 隼人の正論をサリーは、真っ向から切り捨てた。

「私も最初に言ったわ。国や異世界の奴等に私達が何か出来る訳がない。あれだけが唯一の怒りの矛先なのよ」

 短い沈黙の後、隼人が言う。

「魔法少女の修行も良いが、学校にも通ってもらうぞ」

「解っている。魔法少女を、探さないといけないものね」

 サリーの返事を確認して隼人は、部屋を出て行く。



 そして始まったサリーの魔法少女の修行と異国での中学生生活。

「マクガエルさん。あちき、お弁当を多く作ってしまったのでついでで食べてもらえません?」

 魔美がそういってお弁当を差し出す。

「何で私なの?」

 サリーの疑いの眼差しに魔美が笑顔で答える。

「あちきがマクガエルさんに食べて欲しいからです」

「理由になってないわね。私は、これを食べるから」

 サリーは、味も素っ気の無い固形栄養食を取り出すが、それを光男が取る。

「これがアメリカの固形栄養食か。すげえ変な味だ。よく平気だな」

「何をするんですか!」

 怒鳴るサリーに一志が宥める。

「まあまあ、ここは、谷口さんのお弁当で勘弁してください」

「そういう問題では、ないでしょうが!」

 サリーが怒り狂うが、明美が自分用に用意された弁当の玉子焼きを見せる。

「でも美味しいわよ」

 その匂いに腹の虫がなり、サリーは、そっぽを向きながら差し出されたお弁当を受け取る。

「しょうがないから食べてあげるわ」

 つんけんした様子で食べ始めたサリーであったが、一口飲み込んで目を見開く。

 暫く困惑した後、まるで早く食べないと他人にとられるんじゃないかって顔で食べ終える。

「……美味しかったわ」

 その様子を見て光男が目を輝かせる。

「これがツンデレって奴か」

「うん、見事なツンデレ」

 明美も頷く。

「ツンデレって何ですか?」

 サリーの問い掛けに魔美が視線を逸らす。

「知らない方が良いと思う」

「私にそんな事は、ありません! 教えてください!」

 強固に主張するサリーに一志が説明した。

「わ、私は、そんなのでは、ありません!」

 顔を真っ赤にして怒鳴るサリーであった。



 学校が終わり、下校の途中にサリーの横に黒塗りの外交官ナンバーの車が止まる。

「乗れ」(英語)

 サリーが車に乗ると、そこには、あのWAGの開発責任者、パッド=エストンが話しかけてくる。

「君が送ってくれた資料は、有意義に使わせ貰っているよ」(英語)

 サリーの顔が曇る。

「安心したまえ、廃棄処分の数は、減っている」(英語)

 パッドの言葉に拳を握り締めるサリー。

「君のトレーニングの成果を見せてもらおう」(英語)

「……はい」(英語)

 サリーは、そう答えるしか出来なかった。



 深夜、精魂尽き果てたサリーがベッドに倒れこむ。

「まだ、私達は、モルモットのままなの!」(英語)

 零れ落ちる涙。

 それでも感じる空腹にサリーが貯蓄してあった固形栄養食を口にする。

「……不味い」(英語)

 無言で食べ終え、シャワーを浴びながら無意識に呟く。

「あいつのお弁当は、美味しかったな……」(英語)



「これが子供に対する対応か」

 隼人の言葉にセーフハウスの盗聴を行っていた家久が言う。

「アメリカ政府としても一刻も早い『ウロボロス』への対抗手段が欲しいのです。その為には、多少の非人道的行為は、容認されると言う事です」

「せめてこっちでの生活くらいなんとかならないか?」

 隼人の言葉に家久が首を横に振る。

「無理でしょうね。こっちが事前に用意しておいた家具の殆どは、処理されました。何を渡した所でなんも変わりません」

 舌打する隼人。

「どうして世の中は、こんなにも理不尽に出来ているんだ」

「他人の事は、言えないでしょう?」

 家久の指摘に隼人が頷く。

「そうだな、俺達も建物に仕込んで盗聴器で盗聴し、公になれば大変な事になるのが解ってながら魔法少女の正体を暴こうとしている」

「奇麗事だけじゃ、護れない物があるのですよ」

 家久の言葉に辛そうに隼人が言う。

「それでも、人として貫かなければいけない道があるじゃないか?」

 家久は、何も答えない。

『チュパカブラ出現、専門班は、至急出動して下さい』

 緊急通達に隼人が動く。

「せめて、今夜くらいは、子供に余計な苦労をさせないようにして見せる」

「頑張って下さい」

 真摯な顔でそう告げる家久であった。

えーとこれの主役ってサリーかも?

おかしいな魔美が主役の筈なのになー。

やっぱ主役って重い何かを背負わないといけないのかな?

次は、新たな人工魔法少女、WAG(ウイザードアーミーガールの略)が出てきます。

サリーは、悲しい決断を迫られるってナチュラルマミは、どうした!



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