草野球
ショートストーリーです
渚「うーん...」
奈美「何してるんですかぁ?」
奈美が焼きたての出汁巻きを運びながら尋ねてきた。
渚「いや、これに出ないかって町内会の姉さんが言ってるんだよ。」
俺は奈美にかなり質素なチラシを見せた。
奈美「草野球...ですかぁ。」
渚「メンバーが足りないんだと。」
俺はチラシを畳むとレアンの家に向かった...。
レアン「草野球...面白そうですね。」
レアンは興味津々そうにチラシを眺めた。
レアン「先輩!私と一緒にやりませんか?
こう見えて小学校ではフットボールやってたんですよ?」
渚「助かるよ~。」
俺はレアンと一緒に野球をすることになった。
*********
で、集まった人数は14人。
俺はキャッチャーでレアンは二塁手になって...。
渚「なんで奈美もいるんだよ!?」
奈美「いいじゃないですかぁ。
楽しそうですし~。」
奈美はピッチャーをやると言い出した。
渚「大丈夫なのか...?」
奈美はホイホイボールを投げている。
今回の草野球...町の威信を賭けた試合なんだけどね...。
*********
相手チームは完全にプロ級の選手だった。
相手チームの主将『本間』は明らかにホームランバッターのような容姿をしていてかつ柵越えを連発していた。
本間「今回の相手は見るからに寄せ集めじゃのう!」
対する俺たちのチームは町内会の姉さんが俺に主将を押し付けて実質俺がリーダーだった。
渚「人間には熱い鉄のような可能性があるってことを証明してやる!」
*********
まずは本間さんのチームが攻撃に出る。
奈美には基礎的なピッチャーの心得を教えている。
頼む...なんとか最小限の点数で押さえてくれ!
ユニフォーム姿の奈美は鋼投法からボールを投げ―
スパアアアアアアアアアアアアン!!!!!!!!!!!!
激しい音とともにボールが俺のミットに収まった。
スピードガンは......
相手一番バッター「160キロ...だと....」
すみません!神様ナメてました!
奈美の球は俺の手が怪我しないようにちゃんと調整して投げた完璧なものだった。
奈美「よっ!」
続けて155キロのスライダー、カーブを噛ましてあっという間にアウトにした...。
奈美「渚君~♪手ェ大丈夫~♪」
渚「おう!加減してくれてありがとう!」
本間「あれで手加減...化け物か!?」
*********
ホイホイ投げてあっという間にこちらに攻撃が移る。
一番バッターはレアン。
ピッチャーは本間さんだった。
本間「ナメるなよ...!!!
甲子園で何度も旗を立てた俺の実力を―」
しかし本間の145キロのストレートは...。
レアン「いただきます。」
本間「!!!」
レアンが丁寧にセーフティーバントにして俊足で塁に出た。
続いて貞一が無難に送りバントで塁に進め、俺がバッターボックスに立った。
渚「点数、頂戴するぜ!」
本間「貴様になど負けてたまるか!」
本間さんのカーブは見逃す。
続くシュートはファールに、ストレート、フォークと色んな球をファールにして感触を確かめると...。
渚「もらった!!!!」
真芯に当たりボールはスタンドに運ばれた...。
渚「この際安来刃物店を是非ひいきにしてくださいな!」
宣伝しながら走り点数を入れた。
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続く奈美のホームランも合わせて三点をもぎ取った後は奈美の独壇場だった。
奈美「はっ!」
160~200までの手抜きストレートと80のチェンジアップ、150台のスライダー、カーブで相手選手の戦意を奪っていく...。
本間「諦めるな!諦めたらそこで終わりだ!」
相手選手「...」
完全に絶望し切った選手たちは白旗をあげた...。
*********
レアン「先輩~!」
渚「やったな!レアン!」
俺とレアンは抱き合って喜んだ。