やる気ない町内会
新キャララッシュ♪
???「やぁ!」
俺の店から歩くこと三時間。
そこに町内会を開くセンター(リーダーの自宅)がある。
渚「おはようございま~す。」
???「おや?今日は彼女付き?」
気さくに声をかけてきたお姉さんは『黄泉ナツメ』さん。
全くやる気ない町内会会長。
だから実質俺が進行役をやっている。
奈美「私は渚君の許嫁、『伊勢 奈美』と申します。」
ナツメ「なるほど、許嫁かぁ..............許嫁!?」
会長が遅れてツッコミを入れる。
渚「まぁ...ね」
ナツメ「いいなぁ~お姉ちゃんも許嫁になりた~い」
奈美「」
ギロッ
やばい、奈美の目に...鬼神のような威圧感が...!!
会長はビクッとすると冷や汗を浮かべ冗談と笑うと奈美の表情が元に戻った。
ナツメ「じゃあ渚の定位置の隣にパイプ椅子を用意したからそこに座ってね。」
会長はストレッチをすると定位置に座った。
ナツメさんは3歳の時に天才子役でデビュー。
約10年の間歌って踊れる天才少女として活動していたが去年過労で倒れた日を最後に引退。
17歳の彼女は毎日のんびりとした日々を過ごしている...。
ナツメ「今日も来てるよ、要望。」
この町では要望用紙と呼ばれる書類があり、町内会が極力それに応えるというシステムがある。
会長は毎度この面倒な仕事を俺に押し付けてくる...はあ。
渚「今日のお題は『烏』です。
最近通行人から食べ物を強奪する悪質な烏が増えているとか。」
奈美「深刻な問題ですね...。」
会長「カラスなんて死んじゃえ~♪」
会長がいつものようにいい加減な発言をしているのをいつものようにスルーして俺はみんなから話を聞いた。
渚「まずは...八百屋の畑中さん。
何か案はありますか?」
畑中直也...近所にある商店街に八百屋を構える俺のセカンド幼なじみ(いたって凡庸な外見をしている)。
畑中「駆除は必要ではないか?
俺も野菜をやられたんだ。」
ナツメ「やっぱり皆殺しよ~♪」
それに待ったをかける人がいた。
同じく商店街で魚屋を営む『カミツレ・菜穂子・ソクラテス』(愛称はカモミール)。
元最年少モデルとしてかなり人気が高い美少女で俺のサード幼なじみ、そして...ソクラテスの末裔である。
カモミール「待った。
私に発言権を。」
渚「却下しますWWWWWW」
奈美「え?なんで?」
奈美が不思議そうに首を傾げる。
渚「見ていろよ奈美。
許可します。
冗談です。」
カモミール「...烏について説明。
そもそも烏とは―」
奈美...これが苦痛だ...。
カモミールは小さい頃から哲学書を読み耽っていた影響でかなりの堅物になってしまったのだ。
モデル活動の時はクールビューティを全面に出しているが...取材は禁止されている。
その理由がこの理論的な会話である。
始まったら一時間持っていかれる...。
*********
カモミール「かくして、烏とはかなり知能の高い生き物なのです。」
被っているヘッドフォンを少しずらしてカモミールはやっと説明を終えた。
渚「要するに...何がいいたいのですか?」
カモミール「烏の駆除は困難と思われます。
例外としてかの有名なネズミーランドでは」
渚「名前伏せなくていいと思うけど!?」
カモミール「烏が一羽もいないと言われています。
これはウォルトディズニー氏が(以下略」
奈美「...ごめんなさい。
私が話を聞こうって言ったから...」
渚「大丈夫、心配いらない。」
会長は気持ち良さそうに昼寝している...。
お前の仕事やってるんだからな!
責任感じろよ!
*********
察しの通り、この町内会は...会長と俺とその幼なじみがただひたすら駄弁るだけの虚しいものだ...。
みんなで煎餅をかじり、お茶を飲む...。
カモミール「暇ね。」
畑中「だな。」
畑中が飽きてスケッチブックを取り出すとカモミールにポーズをとらせてアニメタッチな似顔絵を描きはじめた。
畑中はあの外見だが天才的なアニメイラストレーター。
人気が出てるアニメのイラストはだいたいあいつが描いている。
畑中「はい、似顔絵。」
畑中は完成品をカモミールにあげるとかけていた牛乳瓶眼鏡を直す。
ナツメ「じゃあ、トランプやるか~」
渚「仕事しましょうよ!?仕事!!」
奈美「あの....?」
渚「何?」
奈美「烏を退治する方法があるんです。」
三人「え!?」
*********
奈美はお札を出すと祈りを捧げた。
お札からどす黒いオーラが溢れ...ゴム鉄砲が現れた。
奈美「これで退治できますよ?」
畑中「これで?」
カモミール「論理的でない」
奈美「まぁまぁ。
まずはっと。」
カモミール「!!!」
カモミールが飛び上がった。
カモミール「ご...ごっきー!!!」
どうやらゴキブリが現れたらしい。
奈美「お任せを!」
奈美はゴム鉄砲を向けるとゴキブリを狙撃した。
ゴキブリはしばらく動かなくなると....。
他のゴキブリをみんな集めて物凄い勢いで会長の家から出ていった...。
ナツメ「すごい...」
奈美「一回当たれば10の同族が町から黄泉へ送られます。
むろん、登録された生き物しか送られませんが。」
奈美は笑顔で言った。
ナツメ「よーし!」ガタン
カモミール「ハンティング」ガタン
畑中「開始!」ガタン
渚「だな!」ガタン
*********
俺たちはあちこちを走り回りながら輪ゴムをゴム鉄砲にセットして烏を徹底的に狙撃した。
次々と烏は撃たれて消えていく。
畑中は巣を見つけると容赦なく狙撃。
カモミールはいかがわしいことをしている烏二羽を狙撃。
会長が怪我している烏に間髪入れずに狙撃。
俺と奈美は烏のアジトに乗り込み、全員狙撃した...。
*********
後日...
ナツメ「烏やゴキブリがいなくなって大感激と珍しく苦情以外のお便りが来てるわ。」
カモミール「...綺麗っていいけど...なぜだろう...」
畑中「景色に何か物足りなさを感じるな...」
日常にいつもあった動物が消えたのだ。
パレットに色が減ったのと同じ気持ちなんだろう。
奈美「本当の綺麗って...多少の汚れがあって初めて成り立つものなのかもしれませんね。」
奈美が締めくくるようにマグカップをテーブルに置いた...。