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プロローグ

この作品はフィクションであり、なんでもありなのでご注意を...。

ここは島根県新・安来市...。



日本神話の名残が残るこの町に住むごく普通の男が俺!『伊勢 渚』!16歳!          

ただ!天涯孤独って事情もあって先祖が遺してくれた『安来刃物店』という刃物屋をたった一人で切り盛りしている。


俺も安来にいる数少ない伝統に従って生きてきた鍛冶師の一人だ。


学校には通ってないが近所の幼なじみが読み書きそろばんを教えてくれたから商売には困らない。


渚「いらっしゃい!安来刃物店へ!


安来鋼でできた包丁買ってかないかい?


丈夫で刃こぼれしにくくてそれにほら!」



お店に見学に来た観光客に安来鋼の包丁の切れ味を披露した。


渚「ちょっと磨いただけで紙束なんてスパスパ切れちゃいますよ!」スパスパ



観光客の老夫婦が感嘆する。


渚「今ならちょっとお安くしますよ?」


老人「買おうかね。」


渚「まいどあり!」ニコッ



*********


渚「ふぅ...疲れた。」


俺は肩を叩くと再び鍛冶に入った。


鋼は鉄から炭素を極限まで抜かないと出来ない究極の鉄だ。


俺がこっそり造っているのが『アメノムラクモ改』。


三種の神器で有名な剣『アメノムラクモ』を幼い時に触ったことがあって(当然こってり絞られた)その時の記憶を頼りに造っているのだ。



安来鋼で造られたと知った俺は完全無欠最強無敵の剣を鍛えるべく今日もこっそり奮闘中...。



一日一本造り、失敗作で他の刃物を造る。


渚「久しぶりに出雲大社行くか...」


俺はお店を閉めると出雲大社に向かった...。





*********


出雲大社は不思議な所だ。


とても身近にあるはずなのに飽きがこない。


この神聖で清らかなこの土地が、迷う心を払拭させてくれるのだ。


とりあえず、参拝......と巫女装束の幼なじみに話し掛けた。


渚「よっ!レアン!」



???「ひっ!?....渚先輩!ビックリさせないで下さいよ!


持病が悪化するじゃないですか!!」


渚「だから先輩はやめろ。」




ビックリした後心臓を押さえて肩で息をしているのは俺より二つ下の幼なじみの『神楽坂 レアン』。


ギリシャ人の母と日本人の父の間に生まれたハーフ。


ギリシャで生まれたのだが家庭の事情で小学生の時にこの町に越してきた。


近所になった俺たちはすぐに仲良しになった。


読み書きそろばんを教えてくれたのは彼女。


天然キャラだがかなりのキレ者でIQはかなり高い。


だが彼女は特異体質がある。


それは...。


渚「わ~!泣くな!


悲しんだらアレが起きるだろ!」


レアン「!ごめんなさい...」


レアンは涙を拭くと笑った。


柘榴色のショートヘアが可愛らしさを上げている。



*********


実は...レアンは念導発火能力を持っていて、ブルーな気持ちになるとそれが暴走して辺り一面に紅蓮の花を咲かせる...。



だからボッチかつ彼氏歴無し。


とても可哀相な娘なのだ。





*********


レアン「ありがとうございます、先輩。」


レアンは薄幸な笑顔を見せるとジュースを飲んだ。


渚「また...失敗しちゃってさ。」


レアン「アメノムラクモ改...ですよね?


無理ですよ...」


レアンは俯いた。


レアン「アメノムラクモは神の剣...神の力が宿ってなきゃ...」


渚「神.....か。」


俺はコーラの瓶を飲み干すと駄菓子屋の爺さんに渡した。


渚「ありがとうな!レアン!


参考になったよ!」


俺は急いで走って家に帰った...。




*********


渚「じゃあ...早速...!!」


俺はこの町に住む一番の賢人のお爺さんの所に日本神話の話を聞きに行った。


老人「....一番力の強い神...かの?」


渚「はい。」


老人「やはりアマテラスじゃな。


太陽と...現世を司る神。」


渚「いやいや!それは知ってますよ!!


....え?


現世?



ってことは...反転した別の世界にも神が...!?」


老人「いるとも。


イザナミというじゃが...」


渚「イザナミか...こうしちゃあいられないぜ!!!!」ダッ!


老人「どこへ行くんじゃ!!!」


渚「レアンの学校にある怪奇研究部さ!!!


ありがとな!!!」




この早まり過ぎた決断がこのあとの騒動に繋がるのであった...。



*********



渚「怪奇研究部の手伝いです!」


教員「はい、今日もご苦労様。」



ちなみに俺は安来鋼で造った包丁を毎年学校に寄付している。


そのため学校に普通に行き来できるのだ。



早速2階、怪奇研究部室に向かった...。





怪奇研究部...この学校の日常に自然と溶け込んでいる地縛霊の美少女学生『津雲 幽子』さんを部長に活動している部活で他の部員はこの学校の一年生『山堂 貞一』だけである。


彼だけが唯一幽子さんに触れる人間のようでよくちょっかいを受けている。




渚「よっ!


童貞!」


貞一「し!失礼な!」


貞一は名前が災いして童貞というあだ名持ち。




幽子「どうしたの?渚君?」


渚「イザナミっていう神様の埋葬された土地を探して欲しいんだ。


報酬はお好み焼き用の鉄板だ。」


幽子「あら、いつもなら霊刀とか言ってたのに?ふふふ」


渚「造りますか?」ゴゴゴゴ...



幽子「け...結構です」ビクビク




*********


幽子「分かったわよ。」


間もなく幽子さんが安来市の地図を広げた。


幽子「この町に比婆山ひばやまってあるでしょ?


国定公園になってるけど。」


貞一「古事記によればそこに埋葬されてるって。」


渚「よっしゃ!


なら早速!」


貞一&幽子「ちょっと待った!!!」


俺の肩を貞一と幽子が二人がかりで捕まえた。


渚「こら!離せ!」


貞一「無計画な行動は身の破滅を招きますよ?」


幽子「せっかくだし私たちと計画してあなたの考えていることを現実に近づけない?」


渚「...それも...そうだよな...」




*********



幽子「まず...私が考察した所、イザナミの骨は生きていたとすればすでに土に帰ってるわ。


神様が生きている年代なんてわからないけどね。」


貞一「次に僕が考えたのが...仮にイザナミが埋葬された土地なら遺品が眠っているんじゃないのかな...って事。」



渚「なるほど...」


幽子「今夜、こっそり行きましょう。」




*********



その時が来るまで俺はいつものように元気な声で刃物を売った。


今日は珍しく刃物が飛ぶように売れた。



というのもだいたいこれくらいの日にちになると俺の前の代の刃物に寿命が来る。



大抵の人は新しい刃物を買いに来るがたま~にもったいないとか考える人もいる。


だから...。


渚「いらっしゃい!いらっしゃい!


うちは刃物店だけど刃物の研ぎ直しもできるよ!


研ぎ直しはなんと破格の百円だよ!


この際!安来刃物店を是非ひいきにしてくださいな!」


こういうこともして小さくお小遣を貯めるのも戦略の一つ。


うちには伝説の研石と呼ばれる岩が先祖代々からあり、これを使えば二、三分で元通りの切れ味に仕上げることができる。



*********


貞一「遅いですよ!渚さん!」


渚「悪い!つい商売に夢中になっちゃって!」


幽子「では!出発!」



俺たちは早速、例の土地へと向かった。


比婆山にたどり着くとまずは聞き込みを行った。


幽子「ここ最近何か珍しい事件か何かありませんでしたか?」


住民「そうねぇ...」


比婆山近くに住む老夫婦はニコッと笑った。


老人「最近ヒバゴンが出たんじゃ!


もう嬉しくてな!」


渚「ホントですか!?」


ヒバゴンとは比婆山で出没した類人猿みたいな生き物。


最近出て来なくなったから心配したんだよ!!!



しばらくヒバゴンの話をしてから...本題に戻った。


幽子「他に...何かありませんでしたか?」


老婆「そうだ!あんた!」


突如老婆が泣きそうな顔をした。


老人「忘れとったわ。」


その深刻そうな表情に俺たちも真面目な...


老人「最近うちの床がタケノコにやられてな」


俺たちはずっこけた。


渚「お任せくださいな!


安来刃物店の実力!とくとご覧あれ!」



ちなみに俺はタケノコ駆除の腕もある。


これくらいの状態なら楽勝だな!



*********


老人「すまんのぉ...助かったわい!」


渚「畳などはできませんので後は業者に頼んで下さい。」


老婆「ありがとう...」










貞一「特に何もなかったですね!」


幽子「そうね...じゃあ!また明日...探しましょう...!」



今日はここでお開きになった...。



*********


帰り道...俺は気になってイザナミが眠るとされる岩の所にやって来た。


渚「お爺さんお婆さんからもらったんだけど...半分分けてやるよ。」


俺はもらった饅頭の半分を割って食べるともう半分を岩の上に置いて帰った...。





*********


次の日の同じ時刻...


さっきの所に来てみると綺麗に無くなっていた。


渚「きっと他の奴が食べてくれたんだろ...」


俺はお祈りして振り返ると...



俯き長い髪を垂らした女が立っていた。


????「ウラム!!!ウラムゾ!!!


イザナギ!!!!」


突如襲い掛かってきた。


その顔を見るとあちこちに蛆が湧き、腐っていた。


俺は臆さず女の手を掴んだ。


渚「悪いけど人違いですよ!


俺は『伊弉諾』じゃなくて『伊勢渚』!


でも何か深い訳があるんでしょう!


どうぞ聞かせてくださいな!」



女から敵意が無くなった。


正直俺は女を不気味とは思えなかった。


むしろ...未練をもってると言うか...。


しばらくして、女が泣いた。


とは言ってもすでに腐った身体、そういう雰囲気だけでだいたい意図は伝わってくる。


????「ワタシハイザナミ」


渚「イザナミ!?」


????「ワタシハクニウミノサイニウンダカグツチニヤキコロサレタ。


ヨミノクニデカナシムワタシニイザナギハヤッテキテスクオウトシタ。


シカシカレハワタシノカオヲミテニゲタ。


ワタシハカレヲノロッタ。


シカシカレハワタシヲコバミワタシヲコノイワノシタニトジコメタノダ。


ワタシハニクイ...ダガアイハステキルコトガデキナカッタ...」


女は俯いた。


????「ハジメテダ...ワタシニオビエズニハナシマデキイテクレルモノガイタトハ...」


俺は決めた。


渚「この岩だよな?」


????「マテ...ナニヲ...」


俺は近くにあった角材を挟むと...梃子の原理で持ち上げようとした...。


渚「やっぱ持ち上がんないか!!


だが諦めないぞ!!!


人が苦しんでるのを俺は見てられないんだよ!


俺は!!!」


ミシミシと岩が揺れ始める。


渚「絶対にお前を救うんだ!!!!!


俺はあんたの旦那よりあんたを愛してみせる!!!(やべ!恥ずかしい!!!!)」



女は...決意すると一緒に角材を掴んだ。


渚「持ち上がれえええええぇっ!!!!!!!!!!」


なんと岩が持ち上がったのだ!



岩は激震を起こして少しズレた。


でも退かせたというには十分なズレだった。


そこには...空洞があった。


空洞から突然まばゆい光が走り、女を消し去ると...。


空洞から物音がした。


????「すみませ~ん...出してくださ~い...」


声がしたので寄ってみると手が出てきた。


渚「よし!離すなよ!!!」


その手を掴むと引っ張り出した。





渚「これが...本当の...イザナミ...」


その姿に神話に伝わる醜さは全く無く、洗練された美しさと癒しを感じられる可愛らしさの溢れる女の子だった。


イザナミ「助けていただきありがとうございます!


この気持ち...どう伝えたらいいか...」


さらさらした黒い髪が明けかけた夜に靡いた。


渚「いやぁ、こっちこそ!


って」



なんで裸なんですか!?


つい目のやりどころがないんだが...。


モデルのようなくびれ、触ったらふわふわしていそうな胸や尻...ダメだあああああ!


直視できねぇ!!!



イザナミ「私ですか?


心配いりません。


私、冥界から蘇ったので新しい身体になっているんです!」



渚「そ!そうか...!」


そうなんだ...つまり彼女は生まれ変わった新しいイザナミなんだ。


とりあえず!彼女に着ていた丈の長いコートを着せると俺は右手を差し出した。


渚「俺、伊勢渚。


よろしくな!」


イザナミ「私はイザナミ。


よろしくね?


渚君。」


俺の丈夫な皮で覆われた手を絹のようなきめ細かく白い手がそっと握りしめた...。

これからずっとこの調子なので暖かく見守ってください。

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