エピローグから始る御伽噺。
皆さんは、ファンタジーという単語を聞いたらどんなものを想像するだろうか?
私は、ドラゴンや騎士、魔王やサキュバス、ヴァンパイアそんな生き物たちが描く空想上の夢の世界。
そんな想像だった、そう、悪魔でも想像にすぎなかったんだ。
想像だからこそ楽しめた、ドラゴンが人を焼き殺すときも、ドラゴンかっこいいなとか、のってみたいなとか、主人公側だろうが悪役だろうが人間を殺す場面があったとしてもすごいなとかそれくらいだったんだ。だって、そうだろう?御伽噺の世界なんだ。
でも、御伽じゃなくて、自分をそれらに当てはめてみたらどうだろうか?
恐ろしくて仕方がないものなのではないだろうか、だって、私たちが今まで見てきた世界は悪魔でも客観的な視点から見た世界であって、自分がその立場であるということとは全然違うのだ。
だって、例えば自分が主人公という立場だったとして、それで御伽噺のようにハッピーエンドを手に入れました!そうなったとする、でも肝心なのはその先だ、やっとこさ手に入れたハッピーエンドを枯らさずにする方法が知りたいのだ。
だからこそ、今現在の自分の現状を理解するのに時間がかかった。
だって、ありえないだろう?
いや、ありえないという言葉で終わらせることで自分の身に起きたことを現実として認めたくない
ただそれだけなのかもしれないが、ありえないんだ。
だって、だって、だって、可笑しいじゃないか。
異世界にトリップしちゃうだなんて―!
家族や友人の居るあの世界にいたときは、
異世界トリップ!?きゃっほう!とか思ってたかもしれない。
でも実際はそんなものじゃなかったんだ、何もわからない、そんな場所に放り込まれる無知な自分。
恐怖の支配―
脳内を占めるのはただそれだけ。
事の発端はいつだったか、それすらもわからない。
だがしかしソレに気付くのがかなり遅かったことぐらいはわかった。
気付いたらどす黒い霧みたいなものがかかっている場所にいた。
ケケケと哂う悪魔のような囁きに笑い声、何かの叫び声。
最初は夢だと思った、きっとネットでファンタジーな小説を読み漁りすぎたな、と。
でも、夢だというにはあまりにもリアルすぎた。
起こっていることじたいは非現実的なのに、あまりにも、リアルだった。
鉄臭い血の匂い。
どっかの誰かの断末魔。
耳にまとわりついて離れない笑い声。
恐かった、おぞましかった。
初めてみた、人が殺される場面なんて、夢だ夢だ、覚めろ!そう自分に語りかけても、夢は覚めてくれない。
そして初めて気付いた、ああ、これは現実なんだ―と。
狂ったように笑う悪魔。
その視線の先にいるのは―
わ た し 。
嫌だ!殺される!私は人間、さっき殺されてた誰かも人間!逃げなきゃ!
脳はそう思っているのに、脳ではそうわかっているのに体が動かない。
口だって思うように動かない、目じりからは涙があふれ出て止まらない、恐い怖いコワイこわい…!
いやだッ!
そう思った刹那―
「おい、大丈夫か?」
目の前にいた悪魔は既に肉塊となっていて、
脳内を占めるのは恐怖ではなく名前も知らない誰かの優しい声でした。
その声があまりにも優しすぎて、先ほどの恐怖があまりにも大きすぎたせいで
私の意識はそこで途切れた。
(はじめまして、すみませんが貴方の声なしじゃ生きていけません)