『大六天様と速記者のおばあさん』
あるところに、大六天様をお祭りするお寺がありました。近くに一人のおばあさんが引っ越してきまして、大六天様のお堂が余りにも散らかっているのに驚き、片づけを始めました。速記者って、大抵きれい好きじゃないですか。いや、統計学的に調べたわけではありませんが、大体そうです、多分。散らかっていると、速記、できませんから。そういうことで、三日くらいかかって、徹底的にきれいにしました。そうすると、庭が散らかっているのが気にかかり、落ち葉を掃き掃除しました。ここまでやると、本堂が散らかっているのが気にかかり、和尚さんに指示を出して、小僧さんや寺男や、近くにいた人を使って、この上ないくらいきれいにしました。和尚さんも、それなりに喜んだのですが、その日から、おばあさんは、原因不明の高熱が出て、寝込んでしましました。
三日もすれば治るだろうくらいに、本人も周囲の人も思っていたのですが、四日たっても五日たっても、よくなりません。どうしようか考えあぐねていると、和尚さんが、お見舞いにやってきました。何か言いたそうです。でも言いにくそうです。しばらく、どうでもいい話をした後、和尚さんはようやく話し出しました。
実は、大六天様が枕元に立たれてな、あんたのことが許せんというのだ。あんた、本堂を片づけてくれたとき、大六天様を働かせたらしくてな、大層御立腹なのだ。もとのとおりに散らかすか、あんたが引っ越さない限り許さん、と、こうおっしゃるのだ。あんたはどっちがいい。
おばあさんは、せっかくきれいにしたところを散らかすなんて嫌だったので、一度別のところに引っ越し、もう一度また引っ越し直してきました。
教訓:神様が自分で出した条件を満たした以上、それ以上罰を与えるわけにはいかない。




