第一章 学園時代
(1)出会いの時
「皆さんは、この皇學館学園に来て、三年目ですので、そろそろ志望神社の準備に入らなければなりません。そこで今日は現任神職講和を開催しますので、奉職意思の確認と方向付けを考えてください」
「桔梗は良いわね。家がお宮さんで。家に帰ればいいものね」
「そうそう、就職の心配しなくていいもの。羨ましい」
「田舎の小さい神社だから、寂れる一方で、いつ潰れるか分からないのよ。総代も氏子の数が減って奉賛会もやっていけないって言っているし」
「そうよねえ。寄付もだんだん少なくなっているというし」
「大きな神社に就職しなくちゃ、潰れちゃうものね」
そう話しているのは、皇學館学園の三年生で、そろそろ神社を選択して神宮実習と中央実習を受けなければ神職課程履修が出来ないのだ。神社で働くためには神職資格取得が必要となっている。その為には神宮実習と中央実習が必修なのだ。
桔梗は成績もよく、家が神社という事もあって安心している。二年生時の多数神社の参拝は家との違いが面白い。大きな神社は立って座ってひざまずいて立って、礼を何度かして柏手を何度かした後、また礼をするをする。そのやり方が、各神社によって少しずつ違う。
覚えれば何という事は無いのだが、祭礼の仕方はその少しにうるさい。
祭礼室で何か音がしたようなので、中に入って薄暗い中、見ていると誰かいるようだ。脅かさないよう静かに近づいて行った。
「だれ」声がした。気付かれたようだ。
「私、桔梗よ。あなたは誰」
「神道学科の久邇宮右京です。驚かせちゃったですか」
「何してるの」
「ちょっと悪戯をして遊んでいました」
「何かいるの。何も見えないけど」
「ちょっと手を貸して」と言って桔梗の手を取った。
「きゃあ、ねずみ」驚いて手を離した。
「いやだなあ。ネズミじゃないですよ。もう一度よく見て」と言って、また桔梗の手を取った。
「ネズミ位の大きさの、ねこ」と聞いた。
「妖怪なんですよ。可愛いでしょう。ずっとここにいて、学園に入った時から遊んでもらってるんだ」
「そう言えば、いつも一人でいるわねえ。お友達はいないの」
「面倒だから作らないようにしてる」
「お友達がいないと寂しくないの」
「友達はたくさんいるよ。ここだけじゃなく、物置や、天井裏とか、結構たくさんいます」
「そうじゃなく、人間のお友達」
「人間の友達はいらない。嘘をつくし、騙すし」
「そんな人ばかりじゃないわ」
「分かってる。悪い人は五人に一人か、十人に一人。ここに十個のお菓子があって、そのうち一つに毒が入っているとしたら、君は食べるかい」
「私は騙したりしない。」
「うん、そうだね。君は騙したりしない。でも、この子たちは誰もみんな騙したりしない」
「人間の友達の方が楽しいわよ」
「そんな人に会ったことが無いから分からない」
「じゃあ、私と友達になりましょう」
「それより妖怪の話」
「妖怪って」
「なぜ信じるの」
「なぜって、今あなたが見せてくれたじゃない」
「マジックかもしれないし、何かトリックがあるかもしれないでしょう」
「トリックがあるの」
「いやないけど。嘘かもしれないって話」
「嘘じゃないわよ。妖怪はいるもの」
「そんな話、誰にもしちゃあいけないよ。嘘つきって言われる」
「嘘つきって言われたの」
「頭がおかしいって。でも、おばあさまと、お兄様が守ってくれる」
「優しいんだ」
「うん、とっても」
「私は兄弟がいないから良く分からないけど、でも良かったね」
「まあね」
「妖怪さん、もう一度見せて」
「こうやって、手をつないで心を通わせると、僕の見ているものが君にも見えるんだ」
「うん見える。触れるの」
「駄目だよ、触ったら、驚いてかみつくかもしれない。野生動物と一緒だよ」
「この子たちとあなたは友達なの」
「違うよ。今日あったばかりだもの」
「私たちも今日あったばかりよ」
「そんな事は無い。この学園に入学してからずっと見ていた」
「ええ、ずっと遠くから見ていたの。まるでストーカー」
「そんな違うよ。何もしていないし」
「しょうがないわね、許してあげる」
「有難うって、本当に何もしていないよ、本当だよ」
「そういう事にしてあげる」
「桔梗さんっていじめっ子なんだ」
「えっ。いつ私があなたを虐めたの」
「だって」
「だってじゃない。そろそろ行くわよ」
「分かった」
「それと、私の事は桔梗って呼んで。貴方の事は右京って呼ぶから」
「人がいない時はそう呼ぶよ」
「人がいる時もよ」
「そんなことしたら疑われるよ」
「何を」
「何って、付き合っているんじゃないかとか、変な噂が立つかもしれないし」
「私たちさっき友達になったでしょう。それにこんな薄暗い所で、手も握られた」
「そんなあ」
「これはどう見ても怪しい。責任取ってもらわなくっちゃあ」
「どうしたらいいの」もう泣きそうだ。
「良いわ。許してあげる。その代わりご飯おごってちょうだい」
「それは良いけど」
「じゃあ、さっそく学食に行きましょう」と言って先に立って歩いて行く。
学園の学食は好きな物を取っていくバイキング方式で、生徒には人気である。トレイにパンとサラダと目玉焼きとハムと。何個か取って空いてる席に行く。右京もその後をついて行き、席に着いた。
「はあい桔梗。おや今日はデイトでしたか」
「そんな違いますよ」慌てて右京が答えると、
「あれえ、私たちの事ばれちゃってるよ。これは大変だ。誰かに言ったら殺すよ」
「誰にも言わないけど、このヒョロを、時々貸してよ。鞭で叩いて虐めて遊ぶからさあ」
「ああっ、だめ。虐めるのは私だけが許される、特権だから」
「おひい様は特権ばっかり有っていいわねえ。ああ、矢代持ちは羨ましい」
「あんたも早く決めなさいよ」
「分かってる、分かってる」と言って学食を出て行った。
「何か怖い人たちでしたね」
「ああいうていだから。お遊びよ」
「桔梗さん、ううん、桔梗って良く分からない」
「美人でスタイルが良くて、頭は良いし、運動はできるし、人気抜群なのに、友達とあんな話をしてる。羨ましいよ」
「人の幸せなんか、頭がいいとか、裕福だとかじゃないよ。まあうちは貧乏だけど」
「えっ、貧乏なの」
「うちは田舎の小さな神社で、檀家はどんどん減る一方だし、お賽銭なんて一円と五円と十円ばっかり。破産するのはもう目に見えてる。おばあちゃんはお前がこの神社を立て直すんだって言ってるけど、私に何が出来るって言うのって感じ」
「桔梗って面白いなあ」
「あんたの所はどうなのよ」
「うちは潰れる事は無いと思うけど」
「へえ、あなたも神社持ちなんだ」
「神社持ちって」
「家が神社ってこと」
「うちは兄が継ぐから、俺は神社持ちじゃないよ」
「そう、あんたも大変ね。それにそんな性格じゃあ難しいかも」
「兄が駄目だった時は俺が秘書で使ってやるからって言われてる」
「良いわね、優しいお兄さんで」
「桔梗の兄弟は」
「私は一人っ子。全部私の肩に掛かっているの」
「お互い大変だね」
「じゃあ私もそろそろ部屋に帰るから」
「ああ、分かった。さようなら。今日はありがとう。またね」
(2)奇跡の偶然
「おばあさま早く、無くなっちゃうよ」
「そんなに急がなくても売り切れないから」
「無くなちゃうんだよ。大人気なんだから。見て、こんなに行列になっちゃって。おばあさまが急がないからよ」
「年寄りは早く歩けないんだよ。もっとゆっくり歩いてよ。」
「仕方ないので行列の最後尾に向かっていた。おばあさまは途中で体中をしびらせるような波動を感じた。びくっとしてそちらを向いたが波動は止んでいて、誰かは分からなかった。
「若い時ならすぐ誰だかわかったのに、これも年のせいかねえ」ボソボソ言いながら桔梗の後を追うのだった。
「おばあさまどうしたの」
「いや、霊感の強い者がいたのだが、すぐに消されて、誰だか分らなかった」
「ええ、気味が悪い。早くこっちに来て」
「人気のベイクドチーズケーキは後五個で売り切れ」店の店員がそう叫んでいる。
「もう無理かもしれないよう」
「まだ五個もあるんだろう。大丈夫だよ」
「はい、只今売り切れました。またのご贔屓をお願いします」
「ええ、売り切れちゃったって。誰かが全部買っちゃったんだ。とんでもない悪い奴がいるものだ。許せない」桔梗はプリプリしながら話していると、前から右京が大きな紙袋を下げながら歩いてきた。
「あれ、右京、何してるの。買い物なの。まさかチーズケーキじゃないわよね」紙袋をもぎ取って中を見た。
「何これ、ひどーい。買い占めたのはあなただったのね。これを買うために遠くからやってきた可哀そうな私たちに、なんてひどい仕打ちをするの。これが友達にすること。地獄に落ちるわよ」
「そんな、たかがチーズケーキで」
「たかがとは何よ、たかがとは」
「分かったよ。二人分譲るよ」
「こんな人前で騒ぎを起こさないの。ホテルでお茶をのみながら皆で頂かない。貴方忙しいかしら」
「いや、良いですよ」
「どうせ友達いないんだから、私が遊んでやらなきゃ一人でしょう」
「桔梗、失礼ですよ」
「いいのよ、一人でネズミ妖怪と遊んでいるんでしょう」と言って、ハッとなって口を押えた。
「さっきのはあなただったのね」
「すいません。強い念を感じて思わず反応しちゃって」
ホテルに着くとテーブルに飲み物を出した。右京もケーキを三人分並べた。
「これが桔梗が言ってた、ベイクドチーズケーキね。おいしそうね」
「そう、こいつが独り占めしたケーキ」
「ご馳走になるんだからもう言わないの。それより私は桔梗の祖母の神薙梓。宜しくね」
「僕は久邇宮右京と言います。桔梗と同じ皇學館学園、三年です」
「久邇宮って、あの久邇宮さん」
「はいそうです」
「そう黒田清子さんは元気」、
「叔母を知っているのですか」
「昔は友達だったのよ」
「そう、君の所も小さい神社なのか。お互いこれから苦労するなあ」
「御兄弟は」
「兄がいます」
「で、どちらが後を継ぐの」
「兄が継ぐと思います」
「おばあさまはどういってるの」
「おばあさまは末っ子だから私にって。でもあんな仕事、無理です。私と違って兄は優秀ですから」
「あの力はお兄様も」
「あれは私だけです。あんなの気持ち悪いでしょう」
「貴方卒業したら内に来ない。楽しいあやかしがいっぱいいるわよ」
「でも桔梗さんがいますし」
「馬鹿ねえ、結婚すればいいのよ」
「何馬鹿なこと言ってるに、うちみたいな貧乏神社に来てなんていないわよ」
「右京さんはどう思う。桔梗は美人だし、裸になると結構いい体してるのよ」
「桔梗さんは美人ですから、学校でも美人投票で一年の時から一位なんですよ。僕なんか相手してくれませんから」
「じゃあしょうがない。このおばばが応援してやる。安心して任せろ」
「じゃあ僕も、兄に相談してみます」
「お兄さんは応援してくれそうか」
「兄は優しいですから」
「お兄様、相談があるのですが」
「何だ改まって。卒業後の事か」
「まあそうです」
「何があっても神職資格は取っておけ。それさえあれば後は何とかしてやる」
「そうじゃなくて、実は田舎の神社なんですけど、そこの家の方に誘われてて、出来ればそこに行きたいと」
「女か、」
「女性に引かれてとかじゃなくて」
「美人か」
「学校で一番です」
「付き合っているのか」
「いえ、そんな、友達です」
「お前、その女に騙されているんじゃないか」
「そんなことはないですよ。そこのおばあさまが来ないかと」
「身内ぐるみか。危ないな」
「そんな事は無いです。みんないい人ですから」
「お前初恋か」
「そんなんじゃないです」
「初恋は病気みたいなものだ。少し調査をしてもいいか」
「はい、大丈夫です」
「では、調査の結果次第だな。いい人だったら応援してやる。それまでは普段通りに」
「有難うございます」
「調査がすむまで他の者には話すな」
「分かっています」
「心配するな、いざとなったら悪役は全部引き受けてややる」
「いつもお兄様にはお世話になって、」
「いいってことよ、可愛い弟のためだ」
「じゃあおやすみなさい」
立ち替わりに彼女の浅岡詩織が入ってきた。
「いいかしら。いい話よね。これで跡継ぎはあなたに決まり」
「俺は自分を知っている。弟と跡目争いをするつもりはない」
「またまた、そこがあなたの悪いとこ、魅力でもあるんだけど」
「檀家総代の父も、跡目の話はどうなっている。いい加減に決めてくれないと困るといっているわ」
「これはそこらの会社の跡目とはちがう。そんな単純な問題じゃない」
「どちらにしてもいい方向に向かっているのは確かだわ」
「俺もなるべくなら、弟の恋を叶えてやりたいと思っている」
「上手くいけば私の望みも叶うし、父も喜ぶ」
「君の親父さんは権力を握りたいだけだろう」
「でも、可愛い娘の為なら何でもやる人よ」
「あんな親父から、なんでこんな可愛い子が出来たのかね。」
「私の伴侶は普通の人じゃあ駄目なの」
「はいはい頑張りますよ。君に釣り合う男にね」
「玉の輿に乗せてね」
神薙家では皆が揃って話をしている。
「桔梗は彼のことどう思っているの」
「どうって、彼は無口で、たまたま見かけて、たまたま話をするようになって、たまたま友達になって」
「たまたまの話は良いの。彼が好きかどうかの話をしているの」
「急にそんなこと言われても」
「彼は桔梗のこと好きよ。後はあなた次第」
「そんなの、おばあさまが思ったことでしょう。彼から好きと言われていないわ」
「彼が好きと言えばいいの」
「彼は言わないわ。見たでしょう。内気で弱虫で。」
「おばばが言わせるわ。そしたらいいわね」
「そんなこと言われても、言われてみなければ分からない」
「じゃあ、桔梗はその覚悟でいなさい。おばばが言わせるといったのよ。言わせるといったら、言わせる」
「おばあさまはどうしてそこまで彼を気に入ったの」
「彼には強い霊感がある」
「そうよねえ、妖怪ネズミと遊んでいるくらいだから」
「実際に見たのか」
「あっ、しまった。内緒だった。」
「妖怪ネズミを桔梗は信じるのか」
「だって、見ちゃったもの」
「お前には霊力はない。見えるはずがない」
「そうじゃなくて、彼が手を握って、霊力を流してくれたら見えたの」
「あなた彼に手を握られたの」お母様が大きな声を出した。
「そんな事は問題ではない。桔梗、私の手を握ってみよ。何か見えるか」
「何にも」
「そうであろう。彼と手をつないだくらいで霊が見えるはずがない」
「でも見えたわよ。動いてたし」
「桔梗、命がけで彼を誑し込め」
「お母様、なんと恥ずかしい事を。」
「それより、彼の身元は分かっているのですか」
「分かっている」
「おばさんが黒田清子って言ってたわ」
「久邇宮ってもしかして」
「間違いない」
「桔梗、この件はあきらめろ。お母様も、冗談がきついですよ。はい終わり」
「何よ、射止めろといったり、諦めろといったり、どうしたのよ」
「桔梗、お前同級生の癖に知らないのか」
「だからどうしたのよ。学年トップの桔梗よ。何様だって言うのよ」
「その何様だ」
「だから誰なのよ、だいたい国宮神社なんて知らないわよ。どこのど田舎よ」
「「落ち着いて聞け、久邇宮とは伊勢神宮の大宮司の家柄だ。それも天皇のおじ甥の関係だ。祭主の黒田清子様は天皇の妹だ。そんな人をこんな神社に呼べるはずがないだろう。だからあきらめろというのだ」
「何を言う。うちだって卑弥呼の家計だ。伊勢だって恐れる事は無い」
「そんなのおばあさまが言ってるだけでしょう」
「とにかく桔梗は右京を誑し込みなさい。ここに連れてきたら私が何とかする。百年、伊達に生きてはいない」
「卑弥呼神社のこの先、千年の命運をかけるのじゃあ。気合を入れて行け」
「お母様は、誑かせだの誑し込めなど、何を言っているのか分かっていますか。お前もお前だ。隕石になっても補助も融資も来ないぞ」
「死ぬまでに一度くらい贅沢三昧をしても良いでしょう」
「そんなのは宝くじでもあたって言え。はい終わり終わり」
「桔梗、ちょっと」
「お母様、今の話はいい加減にしてくださいね」
「わかっていますよ。チーズケーキの件ですよ」
「また訳の分からないことを。じゃあ、おやすみなさい」
「桔梗、あんなことを言われて悔しくないかい。お前の美貌と頭脳は飾りかい。有効に使ってこそ財産だ。そこをよく考えてみなさい。無理強いはしないが、桔梗の未来と運命が変わるかもしれない大事だ。よく考えて」
(3)未来は一瞬で変動する
「ねえ来月夏休みでしょう。家に帰るの」
「いや、寮で過ごすよ」
「誰かいるの」
「誰もいないよ、みんな帰るんじゃないかな」
「貴方うちに来ない」
「君の内」
「うちの神社、古くて君の好きそうな神社だよ」
「妖怪がうじゃうじゃいたりして」
「知らないわよ。でもおばあさまは時々誰かと話をしてるよ」
「何時ごろできたの。」
「ホントかどうかわからないけど、千八百年前だって言ってるよ」
「そんな古いの」
「そう言われてるだけで、証拠はないし、分からないわ」
「じゃあ行く」
「歴史のある、古い神社と、若い美貌の巫女と、どっちが魅力があるの」
「そりゃあ、神社だよ。神社は拒まないけど。巫女は話もしてくれないもの」
「そういう時はお世辞でも、美しい君だよって言うの」
「だって、女の子はじっと見てても、そっと触れても、怒られる」
「黙って触られたら気味悪いでしょう。触りたい時は聞いて。変なことしなけりゃ怒らないから」
「連れて来てくれてありがとう。僕電車、初めて」
「ちょっと待って、お父さんが迎えに来ているはずだから」
改札を出ると出迎えのお父さんが一人立っていた。
「おおよく帰って来たな。君が右京君かな。いつも桔梗がお世話になって」
「そんな事は無いですよ。桔梗さんは優秀ですから。世話になっているのは僕の方で」
「そうよね。世話してるのは私。お陰でみんなが、恋人同士かって聞くのよ」
「なんて答えてるんだ」父親が心配そうに聞く。
「恋人でもなけりゃあ、こんなに世話しないわよって答えてるわ」
「ほんとか」
「お陰で煩わしいお誘いが無くなったから良かったわ」
「こんな娘だがよろしく頼むよ」
「はい分かりました」
「分かりましたって何よ。いつ右京に何か迷惑かけてる」
「はいはい憎まれ口はそれまで、車に乗って、母さんが待ってるよ」
「はい乗って乗って」桔梗が、右京を押し込んだ。
三十分程で、家に着いた。と言っても神社だが。
お母さんと、おばあさんが道路、門前で待っていた。
「遠いところよく来てくれたわね。ここは家だと思って、気楽にして頂戴」
「あのお、こちらの門は入っても宜しいですか」
「ほお、この門が見えているのか。もちろん自由に入っても良いが、明日にしなさい」
「おばあちゃんここに何があるの」
「まあ明日、彼に連れて行ってもらいなさい。人生が変わる物が見えるから」
「ちょっとくらい私の手を握ってよ」
「何を破廉恥なことを。巫女は不浄を禁止されてるでしょう」
「そんなんじゃないもの」
「さっさとお風呂にしなさい。ご飯にするわよ」
「はーい。桔梗、行きまーす」
「ほんとお転婆なんだから」
「右京さんは部屋に荷物を下ろしていらっしゃい」
「有難うございます」
「それにしてもあなた美形ね。桔梗が惚れるの分かるわ」
「そんなことないですよ」
「貴方は女難の相があるから、桔梗を隠れ蓑にして乗り越えなさい。分かった」
「はい、有難う御座いました」
「桔梗、お風呂出たの。じゃあ右京さんはいりなさい。石鹸や、シャンプー、うちのだけど使ってね。桔梗、ちゃんと髪を乾かして出てきなさい。右京さんががっかりしたらどうするの。女の身だしなみはエチケットよ」
「うちのお母さん五月蠅いでしょう」
「うちの母も一緒ですよ」
「安心して、私は、あーはならないからね」
どうやら歓迎されてるようだ。風呂から出るとすぐ食事だった。ご馳走というのとは違うけれど、どれもおいしかった。




