プロローグ
夜の闇は、静寂の衣をまといながらも、確かにざわめいていた。
人の目には映らぬもの――怪異が、そこかしこに潜んでいる。忘れられた祠の影に、街角の灯の揺らぎに、そして人の心の隙間に。
その存在を討ち払うために築かれた場所がある。
四季を司る四神の名を冠した全寮制の学園。そこは巫女の家系に連なる者だけが集う、選ばれた者たちの学び舎であった。表向きは伝統ある私立高校だが、実態は怪異と戦うための兵を養成する拠点である。
朱雀寮に身を置く春宮朱音は、誰もが認める才を持つ巫女だった。烈火のような霊力と、折れぬ心を宿す少女。
だがその胸には、深い傷が刻まれている。
――白銀陽真。かつて彼女の傍らに立った白虎。
共に笑い、共に戦い、そして何より、朱音にとってかけがえのない存在。
しかし、彼は突如として姿を消した。怪異とともに。仲間を守るようにして。
なぜ彼は去ったのか。裏切ったのか。それとも――。
答えを知らぬまま、朱音はただ前へ進むしかなかった。
春は巡り、再び新たな四神が選ばれる時。
朱音は新たな白虎・秋月隼人とバディを組み、戦いの日々へと踏み出す。
仲間とともに、怪異の脅威に立ち向かいながら。
そして、心の奥底に消えることのない想いを抱えながら。
物語は始まる。
朱雀の炎が闇を裂き、失われた絆を追い求める旅路が――。




