心の声全部出てたか
明るくしようとしても結局段々シリアス風味になる
やほやほ、私は元OLの男爵家令嬢ヴィアナ・ルーアの中にいる誰か。
残業帰りにフラフラと歩いていたら、信号無視して突っ込んでくるトラックに気づかなかった。私は体に従い気絶し、目が覚めたら……体が縮んでしまった。
じゃあねえのよ。オマージュはいいんだよ。てかこれ怒られない?
セーフなやつ?大丈夫?……まあいっか。
はーいまず何がどうしてこうなったか言うね~、えーっとね、多分あのひかれた時
死んだ。だってめっちゃ痛かったし、寒かったし。ここはいいのよ。いやまあ
良くはないけどいったん置いといて。そんで目覚めたらいきなりさっきの状態
だったの。つまりまじで目覚めてすぐ視界に入ったのは、病室の天井でも、ラノベ
あるあるの神様いそうな空間でもなく、最近の異世界漫画で見飽きた人も出た
であろう、なんか貴族っぽい屋敷の天井と、顔面偏差値鬼高の男女が私のことを
「ヴィアナ、私たちの宝、おはよう。」っ言ってる場面だったの。
はい、おはようございます。って思わず反射的に言いそうになったよね。
てか言いかけたけど出てきたのは、めっちゃかわいい声の赤ちゃんの声だった。
………うん、誰?そんでなぜ私はこの子の中にいる?体の持ち主はよ出ておいで?
…え?なんで持ち主いるのが分かったか?えーっとね、
なんか自分含めて魂的なやつが2個ある気がしたから、あと勘。
ちなみに割合は3対7ね。そんでどうやってこの子に体返そうか、
って悩んでるのが今ここね。追いついた?
さーてと、まじでどうやって返そうか。さすがにこのまま居座るわけには
いかないし、さっきの夫妻にも申し訳ない。…あっ、夫妻はメイドさん
的な人に呼ばれて出ていったよ。すごいよねーじゃなくて、戻す方法だよ。
………あ~なんかこう、魔法的なやつでできんかな?OL時代…めんどくさいし
前世でいいや。前世そういうオカルト的なやつを微塵も感じなかった私が、
魂的なやつがある気がすると思ったくらいだし、魔法はなくても近しいのは
ある気がするんだよね。うん、考えても仕方ないしとりあえずやろう。
だめならまた考えたらいいや。えーっと、こう表にある私の魂(仮)を体から
引っ張り出して、この子のものを表に出すイメージで…………おっ、行けそu
いっっだぁ!!!!!?待ってマジ痛い、足とかつった時より痛い。ちょい待って、
…ふぅ、だいぶ落ち着いた。失礼、お見苦しいものをお見せしました。
でもまあそれはそうと、私がこの子を3者目線で見れてるから成功したかな。
…なぜか私の体は半透明だけど。うん、まさか私人外転生してる?消えそうって
感覚もないし当たりな気がしてきた。……待って、なんか視線感じるんだけど。
そ~っと視線を感じる方に目を移すと、ヴィアナと言われていた、先程まで
自分が中にいた赤ん坊がこちらをみていた。
めっちゃ見るやん、何?私なんかへん?いや、知らない人がいるのに
泣いてないのもおかしくないか?え~っと…どうしよ。
「あぅあ~、キャハハハ。だぁぅあ〜、だぁぅあ〜。」
……うん、私この子のこと一生守るわ。あの笑顔を向けられて
墜ちない人がいるなら教えてほしい。私が引きずり込む。
「なぁに〜、私たちの天使はご機嫌なの……」
「良い夢でもみたんじゃないk……」
「…………コンニチハ」
やっべぇやべえよ、夫妻にばっちしバレたよ。
「せ、精霊様!?我が家に何のご用でしょうか。」
「我が娘を連れていくというのであれば、叶えられませぬ。」
「………えーっとね、」
ワタシ精霊なの?いやまあ言われてしっくり来たけど、私が精霊?ウケる(笑)
ていうか精霊って認識したからか知らないけど、この溢れ出してくる知識は何?
何?私【言葉の精霊】とか言う希少属性なの?めんどくさいのだが。
…とりあえず二人には正直に話すか。
「あ~、私は言葉の精霊。コトハとでも呼んで。一応私生まれたばかりで、
気づいたらこの子…ヴィアナの中にいたの。だからヴィアナの邪魔に
ならないように私の魂を外へ押し出したのだけど……そうしたらこうなったのよ。」
「…………」
「…つまり精霊さ、コトハ様には、ヴィアナを何処かへ
連れて行こうとする意思はないと考えて良いのでしょうか?」
「ないない!!あるわけない!!なんならあなたがた一家のことは全力で守りますが!?」
「「……………………」」
「えっとね、まあ私が誕生できたのはおそらくヴィアナのおかげなの。だから
守るし、家族であるあなた達もついでに守るって言ったほうが、信用でき…る?」
夫妻は顔を見合わせたあと、そういうことでしたらよろしくお願いします、
守護精霊様。と頭を下げてきた。ああうん、適応早いね。てか守護精霊てなんぞや?
守護精霊:特定の人物を守護し、力を貸す精霊のこと。
…脳内辞書かよ、便利だな。どっかのロボット並みだぞ。
はぁ、
「うん、ヴィアナがいる限り、貴方がたを敵から守ると約束するよ。」
まあ、元の世界にゃ帰れんだろうし、やるだけやってみるか。
そんなこんなで、あっという間に十五年ほど経った。飛ばし過ぎ?文句言うな。
「コココココココトハ!!!!?エミリーは、エミリーは大丈夫なのか!?」
「うっさいトーマス!!!こちとら力全力で使ってんだよ!!エミリーも
頑張ってるんだから黙っとけ!!ヴィアナ!!トーマス捕まえといて!!邪魔!!」
「はいはい、ほーらお父様。おとなしく私たちは待っておきますよ〜。」
「そんな殺生な〜、、」
「私のコトハの全力で何かあるわけないでしょ。」
そう言い合いながら遠ざかる二人、ヴィアナナイス。助かった。
今、私はエミリー…つまりヴィアナの母親の出産の手伝いをしてる。
ついにヴィアナに妹ができたのだ。まじ嬉しい。そんなだから、この十五年で
すっかり私になれたルーア家の皆は、容赦なく私をこき使う。
「コトハ様!!タオルの用意を!!」
「はいはい!!」
「コトハ様!!湯の準備を!!」
「はいはい!!」
「コトハ様!!」「コトハ様!!」「コトハ様!!」
「はいはいはいはいはいはい!!!!!!」
「あ~……疲れた。2人とも〜、無事だから早く…トーマスもういないじゃん。」
「お疲れコトハ、父様ならもう行ったよ。」
「えー、早すぎ。…トーマスの泣き声聞こえてきたわ。」
「アハハ、…今日も姿は見せてくれないの?」
「あーうん、もう慣れちゃったからね~。」
私は五年ほど前から、姿を見えないようにしている。まああれだ、今世の私が
あまりにも美しすぎた外見のせいで、視線が鬱陶しすぎたのだ。
「ごめんね~、ヴィアナ。明後日の卒業式にはちゃんと見せるから。」
「だからみたくても我慢してるのよ、…私も行ってくるから、コトハも休んでね。」
「うん、ありがとー。」
ヴィアナが行ったのを確認してから、私は目をつぶって眠りについた。
ここで少しおさらいしようか、まあただヴィアナが可愛いってことを
言うだけだけど。あの子がまだ赤ちゃんのときはよく抱っこしたりしてたな~、
トーマスより私に懐いててトーマスは泣いてたっけ?そんでこのときは
来たばっかりで、使用人の子たちもまだ慣れてなかったんだよね。あとは〜
…あっ、初めてしゃべった言葉が私の名前だったときは嬉しかったな~、
まあ流石にママとかパパじゃないことに、申し訳ないと思ったけど。
歩いたり走れるようになってからはよく外に連れ出されたし、このあたりから
だったかな?私があまりも泥だけで一緒にヴィアナと帰ってくるもんだから、
みんなも段々自分たちと違う存在に対する恐れとか、無意識の線引きが
なくなってきたんだよね。令嬢教育のときは、分からなかったところを
私の有り余ってる知識で教えて、次の日先生たちにびっくりされてたっけ?
令嬢がだいたい習わない精霊学とか魔法学に興味持ってくれたのは
嬉しかったな〜、ちょっと厳しく教えちゃったかもしれないけど、
今じゃ立派な魔法使いだからね、私の教育の賜物ってわけよ〜。
まあ言ったらスンとした目で見られるから言わないけど。
それで入学式の時かな?この国には勿論、ヴィアナ以外にも
守護精霊がいる子は沢山いるけど、【言葉の精霊】なのは私だけだったし、
入学式に色んな子の守護精霊がその子のそばについてたけど、その中でも私は
飛び抜けて人外の美貌だったらしく、このあたりから
姿を消すようになったんだよね。……もうあれから5年か、
時の流れは早いね。精霊の寿命は半永久的だし、私はヴィアナたちが
いなくなったあとも、今の私でいられるのかな~。………そろそろ夜明けか、
まさか丸一日以上寝るとは思わなかったな。みんなが私のこと探し回った記録が
あるや(笑)さてさて、卒業式まであと3時間か、今頃着付けで
もみくちゃだろうし、ちょっと助けてあげますか。
✿馬車の中にて✿
【にしてもヴィアナ、卒業式に2人が参加できなくて残念だったね。】
「妹がこの時期に生まれる予定で、もともと不参加の予定だったし仕方ないわ。」
【帰ったら豪華なパーティーだって。楽しみだね。】
「うん、それにコトハがいてくれてるから、あまり寂しくないよ。」
【え〜……泣きそう。】
「まだ卒業式始まってもないのに?ほら、着いたから行こう。」
【う〜……卒業おめでとう〜(泣)】
「はいはい。」
「ヴィアナ・ルーア男爵令嬢、僕は王子として貴殿の罪をここに告発する!!」
「……は?」
【う〜わ、何言っちゃってんのあのバカ王子。】
「…身に覚えもありませんし、この門出の場で言うことでもないでしょう?」
【うんうん、偉いよヴィアナ。】
「貴殿の罪状は、守護精霊がいないにも関わらず、いると申告したことだ!!」
「……はあ。(話聞けよバカが)」
【いますけど〜、入学式でバッチリ見てただろうが。】
「私の守護精霊は確かにいますし、5年前王子も見ていたはずですが。
それにこの場で言わずとも、招集してくだされば登城します。その時にでも…」
「僕は精霊を愛している一人として、貴殿が許せない!!」
「(頭かち割ってわろうかな)」
「よって貴様を「精霊を愛してるって言うけどさ~。」
「「「「!?」」」」
「あ~あ、コトハがキレちゃった。」
「あんたは力のある精霊だけが好きなだけでしょ、現に生まれたばかりで
力も弱い精霊達には横暴な態度をとってたらしいしね。そうだよね、己の力
でもないのに、守護精霊が精霊王なだけで威張り散らしてる人間の王子チャン。」
「だ、誰だ!?姿を見せろ!不敬罪で首をはねてくれる!!」
「へー、そういうこと言っちゃうんだ。」
そうして私は、精霊モードの口調のまま久方ぶり姿を現した。
「それでは改めまして、ヴィアナの守護精霊のコトハです。
以後よろしくするつもりはないのであしからず。」
「「「………………………………」」」
「コトハ…五年前よりさらに美人になってない?」
「?そう?」
銀糸のような髪に、すみれ色のグラデーションのかかったサラサラの髪、
宝石のような金色の猫目に、長身の出るとこでたモデル体型。
うん、我ながら超美人だわ。
「それより〜、」
「?うわぁ!?」
「ヴィアナとギューできるとか幸せ。姿消すのやめようかな。」
「ちょ、コトハ。私のこと窒息させる気!?」
「ごめんごめん。」
「…はっ、お前はなんの精霊だ!!見たことないぞ!!」
「お前ね〜、隠すきゼロじゃん。私は【言葉の精霊】だよ。」
「言葉?偽物だ!そんなのがいるなんて習ってない!!」
「はぁ、……お前少し【黙ってな】」
「_____!?_________!!!」
「喋れないだろ?【言葉の精霊】なんだ、話せなくするくらい児戯だよ。」
「さて、何も知らない君に授業だ。むか~しむかし、【言葉の精霊】は確かに存在した、しかし強すぎる力は人々を恐怖させ、当時の王家は欲深くなった。【言葉の精霊】の力を独り占めするために、王家は【言葉の精霊】を監禁、衰弱死させ、それによって弱った精霊王を縛り付けたと同時に、【言葉の精霊】の存在を無かったことにした。これが正しい昔話だ。」
「その通りだコトハどの。」
バサッ
「今更登場かい王様、私に何かけたの。」
「思ったより息子が役に立たんので慌てて来たのだよ。」
「そんなのどうでもいいから、何かけたかきいてんの。」
「【精霊封じの香】だ、貴殿の力は王家のためにのみ使ってもらう。」
「ふ~ん、まあ私【迷い人】でもあるから効かないんだけどね。」
「………何?」
「とりあえず王様、【その体制から動いちゃ駄目】だからね。」
「クッ……」
「何が何だか……コトハ大丈夫なの?」
「大丈夫だよーヴィアナ、まあ不快ではあるけどね。…さて、『今代迷い人が命ず、精霊王よ、悪しき蠱毒の鎖から解放されよ。』」
「?何を言ったの?コトハ。」
「ナーイショ、それより王子の禁を解こうか、面白いことになるよ。…【解】」
「_____ぅあ!やめろ!僕の精霊王だ!!返s…っ」
「気絶しちゃった〜、てか王様来た瞬間鎖を解けっていうのやめてくれない?これでもびっくりしたんだからね、精霊王サマ。」
精霊王と聞いた瞬間、王様以外が私の目の前に突如現れた
美丈夫に向かって頭を垂れた。
『…すまぬな、久方ぶりの迷い人の来訪。今回を逃せば、消滅する危険があったゆえ。』
「ふ~ん、まあいいけど。…ん?ほらヴィアナ、立って大丈夫よ。」
「………精霊王様の御前で立てるわけ無いでしょ。」
「何言ってんの?【言葉の精霊】と精霊王は一応同格なんだから、私相手に普段してる態度で大丈夫だよ。そうだよね?精霊王。」
『そうだな、なんなら【言葉の精霊】が我が配下から居なくなった時点で、我の力も落ちている。言葉一つで現象を起こせるそ奴と比べれば、どちらかといえば我のほうが格は下だ。』
「…そういうことなら、遠慮なく。」
「んで、あんたが弱る原因になったゴミはどうする?」
気絶したバカと、怒りと興奮で顔の赤くなったゴミを指さして私は言った。
『…王家は嫌いだが、他の貴族連中は知らなかったのであろう。幼い王子がいたはずだ、それはおいていくから旗印にでもしろ。それ以外の王家は全員連れて行く。こやつらのせいで犠牲となった精霊の怨嗟が聞こえる空間で、狂うことも許されず永遠に過ごせ。』
それを聞いた王様は、赤くなった顔を青くさせ、泡を吹いて気絶した。
「あ、動けないから泡詰まって倒れちゃう。【解】」 ドサッ
『…それではな、世話になった。■■■■■よ。また会うこともあろう。』
そう言い残して、一人の幼い王子を残して、王家もろとも精霊王は消え去った。
「……食えないな〜、なんで私も忘れてた名前覚えてんの?」
「名前?今のノイズが?コトハが名前じゃないの?」
「ん〜まあ、教えてもいいかなって思ったら教えるよ。」
「き、気になるから教えて!」
「ナーイショ」
「コトハ!!」
「教えたでしょ、ヴィアナ。知らないほうがいいこともあるって。」
「……分かったよ。」
「うん、いい子。じゃあ2人も待ってるし、家に帰ろうか。」
「え!?ちょまっ、卒業式はどうすr」
「そんな事もあったね~。」
「何を他人事みたいに、あのあと大変だったんだからね。」
「だから助けたじゃーん、不可侵も誓わせて。」
「…それはそうだけど。」
『コトハ殿が守護精霊であられるヴィアナ殿には、ぜひとも次代の王妃として、この国をまとめていただきたく。』
『いやいやいや、宰相様。流石に十歳差は王子かわいそうだし、私もその気はないから。』
『し、しかし、前王家の守護精霊が精霊王という威光で、この国はなっているのです。精霊王がいなくなられた今、新たな旗印が…』
『くどい宰相、ヴィアナの力を求めてならともかく、私の力を当てにするためにヴィアナを利用するな。そもそもお前らは精霊に頼りすぎだ。いい加減人の力だけで立てるよう努力しろ。さもなくば我ら精霊がいなくなったあと、待つのは滅びだけだ。』
『………し、失礼しました。』
「あの時のコトハはカッコよかったね~、威厳があったよ。」
「私のキャラじゃないから、もうやらなーい。」
「それもそうだね~、……そう泣かなくてもいいでしょ。」
「…泣いてない。」
「そういうことにしといてあげる。ごめんね~、こんな早く置いていくことになって。」
「…精霊は余程のことがない限り、寿命とは無縁の存在。でも迷い人の私は、ヴィアナのお陰で精霊としてこの世界に定着した。だからヴィアナがいなくなったら、私もいなくなるんだよ。」
「……聞いてない。」
「今言ったからね、だから寂しくないよ。」
「そういうことじゃ…あ~もう、秘密主義。」
「(笑)……名前。」
「え?」
「あの時、忘れてた名前があるってなってヴィアナ、教えてって言ってたでしょ。」
「うん。」
「折角だから教えてあげる、……言葉、これが迷い人になる前の名前。」
「……な~にが知らなくていいこともあるよ、変わらないじゃない。」
「カッコつけただけだからね、忘れてたと思ってたけど、潜在的には覚えたんだろうね。」
「……………」
「……大好きだよ、ヴィアナ。ずっと、ずーっと。あなたを初めて目にしたその時から、エミリーもトーマスも大事だけれど、あなたは特別。」
「…………知ってる………」
「 」
ルーア家の精霊は気づけば姿を消しており、二度と見るものは現れなかった。
解釈は皆様に任せます、私の中でも正解はありますが、読者の皆様の正解もまた、この話の終わりにふさわしいと思うので。それでは、拙い文章力のこの話を読んでいただき有難うございました。