24/49
第24話 休題 <人定 亥の刻>
美しくも悲しげな笛の音が
妖しく響いていた。
月明かりが
夜霧の屋敷を優しく照らしていた。
本宅の酉の間で
八爪が二本の蝋燭の灯りの下、
文机で書物を開いていた。
その時。
笛の音に紛れて
蚊母鳥が「キュキュキュキュ」と啼いた。
ふいに襖が音もなく開いた。
部屋に一筋の風が吹いて
蝋燭の炎の一つを消した。
続いて黒い影が足音を立てずに
部屋に入ってきた。
「・・こんな夜更けに何の用だ?」
八爪は書物に目を落としたまま
闖入者に語りかけた。
返事はなかった。
「隠しているつもりかもしれんが、
その殺気、
襖の向こうから
ひしひしと伝わってきたぞ」
八爪はそこでようやく書物から顔を上げた。
八爪の大きな目が闇に立つ影を見据えた。
「二人を殺したのはお前か?」
八爪が静かに問い掛けた。
影はそれには答えず背後でそっと襖を閉めた。
直後、影が動いた。
「ヒュッ」という音の後に、
もう一本の蝋燭の炎が消えた。
酉の間に闇が落ちた。
次の瞬間。
その闇に閃光が走った。




