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邪神ちゃんはもふもふ天使  作者: 未羊


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第95話 邪神ちゃんと無計画のツケ

 土魔法で作った食品サンプルを目の前にご満悦のフェリス。品数が少ないせいか、2日目の開店までにひと通りを作ってしまっていた。本当に調子に乗った時の仕事は早いものである。

「うわぁ、これなら説明しなくても雰囲気は分かりますね」

「でしょう。それでも説明しなきゃいけない部分もあるだろうけど、食べ物の雰囲気は伝わるでしょうね」

 着色した上に、中身も分かりやすくしたので、味以外に関しては大体伝わるはずである。店に入る前に分かりやすくした方がいいだろうと、店外の壁際に土魔法で棚を作って並べておいた。ついでに取れないように土魔法で接着である。そこにはこうとも書いておく。

『メニューの見本(食べられません)』

 早速、その並べられた見本を見つけて、客が集まってくる。

「何なんだ、これ」

 飾りつけを終えたフェリスに時間待ちの客が尋ねてくる。

「この二号店で扱っている食事を、土魔法で再現してみたんですよ。これなら扱っている物がよく分かるかなと思いましてね」

「ほぉ、これらが土魔法で……。昨日ここのメニューを食べてみたのだが、すごい再現度だな」

 男性とフェリスのやり取りに、なんだなんだと通行人が集まってくる。その群衆に向けて、フェリスはその飾りを再度説明する。値段も書いてあるので、店に入る前に予算の組み立てもできるのは大きいものである。

 そうしているうちに二号店2日目の営業が始まる。パン売り場だけは夕方まで営業する旨を伝えると、客の一部からは喜びの声が上がった。とにかく2日目も出だしから好調である。

 外に置いたサンプルの効果は抜群だ。この料理はどういうものだという質問がめっきり減ったのである。おかげで客の回転率が上がる。袋やお皿とかは前日の貯金がまだ残っているので問題なさそうだった。

 試食と初日の評判のおかげか、2日目もそれは大盛況である。一号店の時といい、この辺鄙な村にどうしてこんなに人が来ているのかまったく理解に苦しむ。しかし、このまま評判が広まれば、もっといろんな人がやって来そうではある。そうなる前に対策は立てておくべきだろう。

 というわけで、昼ピークを捌き切った後は、ヒッポスとクー、それにメルに店を任せて、フェリスはアファカとヘンネに相談しに行く事にした。辺鄙な村だから、本格的に客足が増える前に準備しておきたいのだ。ちなみにこの二人に相談するのは、前日の反省からである。商売絡みの話なので、こと冷静な二人に相談するのだ。

「なるほど、料理のサンプルですか。これはなかなかな再現度ですね」

 アファカがフェリスの作ったサンプルを触りながらぶつぶつと言っている。

「こういった再現度の高さは、さすがフェリスといったところですね。細かい所まで作られていますので、確かに見本品としては素晴らしい出来ですよ」

 ヘンネからも絶賛である。

 それにしても、この二人は正確も口調もよく似ている。一方は人間、一方は鳥の特徴の出ている魔族だが、生真面目さは本当に恐ろしいまでに共通しているのだ。

「この村への新たな客の到着は5日間ほど後になりますかね。最寄りの街までは2~3日間ですから、話題になればより多くの人が詰めかけるのは考えられる事ですね。拡張工事は急いでいますが、多分間に合わないでしょう」

 どうやら二号店の拡張は間に合わないらしい。大規模な改装もあるので、作業がいろいろと面倒なせいである。後先をろくに考えないフェリスの暴走の結果である。フェリスは反省しろ。

「パンとジャムの取り扱いをこっちでも行えば、多少なりと分散は見込めるでしょう。同じ村なのですから、そういった助け合いはあってもいいかと思います」

「な、なるほど、確かにそうね」

 アファカの提案にフェリスは乗っかってみる事にする。

 そもそもフェリスメルの村の本体にも食堂や居酒屋はあるのだ。それに加えて宿屋も今では数件建てられている。職人街は簡易の宿泊所しかないし、食堂も居酒屋を兼ねた一軒のみなので、宿泊には向かない造りになっている。そういう事も考えれば村本体で扱う事は外部の人間にとっても都合がいいのである。その状況をベースに、フェリスはアファカとヘンネと共に今後の対策を話し合ったのだった。

「そういえば、ヘンネ。卵はどれくらい増やせそう?」

 ひと通りの話も終わってアファカがまとめている最中、フェリスはヘンネにクルークの現状を訊いてみる。

「そうですね、近いうちには今の倍にはできるでしょう。倍にしたからといっても、今のプリンの限定数は倍にはできませんよ。他にも卵を使った料理を作るのですからね」

「あー、カスタードクリームとかオムレツとかかな。あれはおいしかったわね」

「小麦と卵と砂糖とミルクがあるなら、ケーキも作れますよ。その辺のレシピはまだペコラが覚えているでしょうから、卵の増産を頑張って作ってもらいましょう」

「それは楽しみね」

 フェリスとヘンネは、人間と魔族の戦いの終結までに存在していた料理に思いを馳せているようである。

「とはいえ、誰かさんのように無計画に突っ走るわけにはいきません。今後の計画は必ず私たちに相談して下さいね、フェリス」

「……はーい」

 しかし、ヘンネはまじめで手厳しかった。

 昔の料理の再現までの道のりは、まだまだ遠いようである。

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