表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
邪神ちゃんはもふもふ天使  作者: 未羊


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

94/290

第94話 邪神ちゃんはショックを受ける

 ひと晩立ち直れなかったフェリスだが、何も考えていなかったわけではない。その結果、

「メル、二号店は昼前から夕方までパン屋さんをするわよ。需要があると分かった以上、やらない理由はないわ」

 と、大風呂敷を広げていた。しかし、

「ペコラ様やアファカさんたちと相談してからにしませんか。また怒られますよ」

「うっ」

 昨日の事情を聞かされていたメルからダメ出しが入る。

「それに、パン屋さんを出すならまずは建てたばかりの二号店を拡張しませんと。売り場がないんですよ。せめてパンの見本くらいは置きませんと」

「ううっ」

 メルからこれでもかと言わんばかりのダメ出しが入って、フェリスはまた耳とひげと尻尾を力なく垂れさせていた。

「ダメとは言っていません。思い付きで行動されるのがフェリス様の悪いところです。せっかく相談相手が居るのですから、まずは相談して下さい」

 くどくどと眷属に説教されるフェリス。朝から机に力なく突っ伏してしまう。

「それに、昨日のパンの販売も、私の独断ですからフェリス様の事を強くは言えませんけれどね。たまたま成功したからよかったですけれど、今日はまず、アファカさんに相談に行きましょう」

「……はい」

 完全にしょげしょげになっているフェリスは、メルの意見に流されるように返事をしていた。過去最高に凹んでいるフェリスは、可哀想というよりは可愛い感じであった。

 そして、朝食を終えたフェリスたちは、二号店の準備をヒッポスとクーに任せて商業組合へと出向いていった。そこにはアファカとヘンネの二人の姿があった。ヘンネは朝早くから出掛けていたのは知っていたものの、まさかここで鉢合わせになるとは思っていなかった。だが、今はそれを気にしている時ではない。とにかくパン売り場の拡充をアファカたちに切り出した。

「なるほど、行き当たりばったりでやってみたら思ったよりも好評だったと。それでパン専門の売り場を作ろうと思ったわけですね」

「眷属は主に似るとは言いますけれど、メルもフェリスにどことなく似てますね」

 ヘンネの言葉に、フェリスもメルも痛い所を突かれたので何も言い返せなかった。

「拡張の話は承りました。持ち帰り用の隣にある詰所の一部を改装して、詰所も拡張するという形にしましょう。あそこの土地は道路沿いには余裕がありませんからね」

 食堂の二号店の図面を見ながら、アファカはそう結論を出した。そして、すぐにでも工事に掛かれるように職人の手配を始めていた。

「そうです、フェリス。卵の増産は近いうちできると思うよ。私の能力でクルークの成長を短縮できるのは知っていますよね?」

 ヘンネがそう言うものの、知らないとばかりにフェリスは首を傾げていた。

「いや、ごめん。初耳なんだけど」

「フェリスが植物の生長を早める能力を使ているのは聞いています。その能力の根本は、私のその成長促進の能力なんですよ」

「ええっ、そうだったの?!」

 ヘンネに説明されて、もの凄く驚いているフェリス。実はそういう事だったのである。

「ハバリー由来だと思ってたら、ヘンネのせいだったの?」

 改めて驚くフェリスに、ヘンネは怒る気力すら無くしていた。自分の能力を把握しきれていないのは、なんとなく察せれるからである。なにせ12人もの邪神の能力をほぼすべて受け継いでいるフェリスなのだから、分かっていない能力が1つ2つあっても不思議ではないからだ。

「……フェリス、自分の使える能力を今一度確認しておいた方がいいですよ。そうでなければ、眷属のメルにも迷惑を掛けてしまいます。メルも制約があるとはいえ、主であるフェリスと能力を共有するのですからね」

「あっ、うん、頑張って把握するわ」

 メルにも迷惑が掛かると言われた瞬間に、フェリスは表情を引き締めていた。フェリスにとってメルの可愛い眷属だから仕方がない。親バカみたいなものなのだ。だから、メルが苦しむ姿など見たくはないと、気合いを入れているのである。

 とにかく、こうしてパン売り場の設置に向けての動きが始まった。とはいえ、開店したばかりで改装閉店はできないので、営業のスタイルは店舗拡張が終わるまでは昼ピークが終わってからパン屋さんへと営業形態を変える方向で固まった。

 そのパンの売り場に並べる見本をフェリスは魔法で作ろうと頑張っていた。

「ちょっと実物のパンを借りるわよ」

 そう言って、フェリスはパンを目の前に魔法を使う。土の塊でできたパンの見本である。丸々パン1個の見本ができると、今度は本物の方を半分にして、その断面も魔法で再現する。そうして、パン1個半分の食品サンプルができ上がったのである。

「これに着色をしてっと……」

 フェリスはジャム瓶の加工をしたように、パンの見本の色を魔法で変えていく。そして、あっという間に本物と見分けがつかないくらいのジャムパンの見本ができ上がった。

「フェリス様、それをどうするのですか?」

「どういう商品を扱っているのか見本を並べるのよ。せっかく売り出すなら、見てもらった方がいいじゃないの。本物を長時間店先に置いておくのだと、毎日用意しなきゃいけないけれど、魔法で作っておけばそのまま置きっぱなしにできるわ」

「な、なるほど。さすがはフェリス様です!」

 調子に乗ってきたフェリスは、2日目の営業が始まるまでひたすら食品サンプル作りに打ち込んだのであった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ