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邪神ちゃんはもふもふ天使  作者: 未羊


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第77話 邪神ちゃんと喧騒の村

 さてさて、金属工房が順調な滑り出しを決めた事で、職人街は更なる拡張の機運が高まっていた。その理由はハバリーが作り出す純度の高いインゴットのせいである。様々な種類の金属の純度の高いインゴットは、職人街の商品の目玉となっているのだ。

「私、役に立っているんですかね」

 ハバリーはどうにも自信がなさげである。ボアといえば猪なので、猪突猛進というように勢いが強そうなイメージなのに、ハバリーは前髪で目を隠していて、実に自信なさげである。

「あの金属を生み出す魔法はハバリーの専売特許と言っていいものよ。もっと自信を持ちなさい」

 職人街にやって来ていたフェリスは、ハバリーにそう言って聞かせていた。その後ろではメルが頷いている。本当に、どうしてここまでハバリーは自信がないのだろうか。キャラが安定しないくらいにはほぼおどおどとしている。

「いやはや、鉱石から金属を取り出す作業って、結構難しいんですよ。普通の人は魔法なんてほぼ使えませんし、これだけの純度を出そうと思ったら熟練の職人でも結構難しいですよ」

 そう話すのは、村にやって来た職人の一人、皮革職人のピールだった。

「そうそう。ハバリーさんに任せっきりでは私たちの腕は上がりませんが、金属を用意してい頂けるのは実に助かりますね。装備や道具の製作に集中できますから」

 同じようにティアラも嬉しそうにハバリーに話し掛けている。あまりに明るく話し掛けてくるので、ハバリーはついフェリスの後ろに隠れてしまった。人見知りが過ぎる。

「ははっ、邪神って聞いていたけれど、こういうところを見せられちゃうと、私たち人間とそんなに変わりませんね」

 くすくすとティアラは笑っていた。その姿を見て、ハバリーは更にフェリスの後ろに隠れてしまった。まったくどれだけ怖がっているのやら。

「とにかく、ハバリーさんの能力のおかげで私たちは大いに助かっています。本当にありがとうございます」

 ウッディたちからお礼を言われると、ハバリーはフェリスの背中に顔を押し付けてしまった。照れているらしい。本当にこれで邪神と呼ばれているのだから、言葉がいかに当てにならないのかがよく分かるのだった。

 というわけで、フェリスたちはウッディたちと別れて、隣の装備品を扱う商店へとやって来た。ここには三人が作った様々な材料の製品が売られている。1階は武具、2階は装飾品だ。既に中には多くの人が入ってきて品定めを行っていた。ハバリーはやっぱりフェリスの後ろに隠れてしまった。

 そういう事もあって、フェリスは大盛況ぶりを確認しただけで、店から出てきてしまった。

「本当にハバリー様って、人見知りが激しいんですね」

「まったくなのよね。それでも能力は光るものがあるから、裏方で頑張ってもらってたのよね。私の恩恵の一つである植物の育成促進も、そもそもはハバリーの土魔法を特化させたものだからね。ボアだからアタッカーと思われがちだけど、実は防御特化なのよ、この子は」

 フェリスとメルが話していると、ペコラが出てきた。

「あー、フェリス様、ちょうどよかったのだ。ちょっと店を手伝って欲しいのだ」

 ペコラが出てきた食堂を見てみると、昼時ともあってか人が溢れかえっている。なるほど、人を捌けないで困っているようだ。

「まあ仕方ないか。ハバリーも手伝うわよ」

「えっ、ええ?!」

 ハバリーは踏ん張ってはいるが、さすがは邪神グループのリーダーであるフェリス。踏ん張るハバリーをずるずると引きずってしまっていた。ちなみにハバリーの脚力はボアの突進を止められるくらい強力である。それを引きずるフェリスとは一体どんな怪力なのだろうか。

「ハバリーの脚力は確かにすごいんだけど、コツがあるのよ、コツが」

 驚くメルに、フェリスはそうとだけ言っていた。

 食堂に入った三人は、それぞれに手伝いをする。ハバリーは裏方として下ごしらえを手伝う。メルは料理ができるので調理補助、フェリスは表に出て接客である。

 白い毛並みに黒い翼と赤い髪のフェリスはそれはとても目立っていた。やって来る客の目を十分に引き付けていた。その上、店内を見回すと、何やらひそひそ話すらされている。耳を傾けてみれば、どうやらゼニスと親交のある商人のようで、フェリスの事はだいぶ噂として広まっているようだった。好意的に広まっているようなので、フェリスは複雑に思いつつもそれはそれとして満足していた。

 ようやく食堂の混雑が収まると、厨房ではメルとハバリーが目を回しそうになっていた。

「お疲れだったのだ。これはあーしからのお礼なのだ」

 ことりとフェリスを含めた三人の前に出されたのは、白くて冷たいものだった。

「これは?」

「アイスクリームなのだ。これも失われた過去の料理を、あーしが再現してみたものなのだ。疲れた時にはこういうのが一番なのだ」

 メルの質問に、ペコラは明るく笑いながら答えていた。

 とりあえず未知の物を見ながら、恐る恐るスプーンですくって食べるメル。口に入れた瞬間、ぱあっと表情が明るくなった。

「冷たくて甘くておいしいです!」

「はっはっはっ、喜んでくれて何よりなのだ。材料が手に入りにくいから、食堂で出すメニューにはまだ向かないのがつらいのだ」

 ペコラは明るく言いながらも、問題点を挙げていた。

「砂糖と卵かしらね。ミルクはこの村で採れるからいいとしてもそこが問題ね」

 ぶつぶつというフェリスは、この点をどうにかしようと本気で考え始めたようだった。まったく、なかなかに貪欲なあたりは邪神なのかも知れないフェリスだった。

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