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邪神ちゃんはもふもふ天使  作者: 未羊


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第76話 邪神ちゃんの与り知らぬところ

 フェリスメルがますますの発展を示す中、聖教会では……。

「聖女様、失礼致します!」

「あらあら、どうされたのですか」

 慌てて入ってくる神官に、マイオリーは落ち着いて対応をしている。

「あの村をこのまま放っておかれるのですか?! あの村にはさらに邪神が集まり、村の規模が拡大していると言います。このまま放っておくと危険なのではありませんか?」

 もの凄い剣幕で訴えてくる神官だが、マイオリーはまったく動じていなかった。

「あのフェリスさんたちの仲間ですよ? 何か危険があるというのかしら」

 マイオリーには何か確信めいたものがあった。

「あの村に危険な者が居れば、すぐに分かりますよ。この間行った時に、ちょっと細工をさせてもらいましたからね。ちなみに、フェリスさんの公認ですよ?」

 紅茶を飲みながら、マイオリーはしれっと言ってのけていた。いつの間にそんな事をしていたのだろうか。

 ちなみに、マイオリーが細工を仕掛けたのは、広場にあったフェリスの木像だ。あれは元々からただの木像だが、今現在は胸部に宝石が光っている。聖女の魔力でしっかりはめ込まれた宝石なので、盗まれる心配はない。インフェルノウルフであるルディの本気の炎でも焼かれる事のない木像だ。これ以上に安心できる場所があると言えようか。

「ですから、あの村に何か問題があれば、その宝石が知らせてくれます。私はそれに合わせて動けばいいだけなのですよ。何の心配も要りません」

 マイオリーは紅茶を一度置くと、窓から外を見上げた。

 そして、すぐに神官に振り返る。

「それより、他に何か報告する事はございませんか? 私はただのお飾り聖女ではないのです。私にしかできない事があるというのなら、そのために私は動かねばならないのです」

 聖女は強い口調で神官に言い切る。すると、

「げ、現在は特に陳情は……ございません」

 ものすごく悔しそうに報告していた。何をそんなに悔しがっているのだろうか。

「そうですか。あなたはかなり敬虔な信者ですから、魔族が許せないのは分かります。ですが今はどちらかと言えば、共存の世の中。魔族も一部とはいえ、その事を学んでいるのです。先立つ考えだけで決めつけはよろしくありませんよ」

「くっ……、そうです、ね。それでは失礼致します」

 マイオリーが強く言い切ると、本当に悔しそうな顔をして神官は部屋を出ていった。その様子を見ていたマイオリーは、もの凄く憂いていた。

「さすがに、対立していた存在を受け入れるのはすぐには無理ですね。気持ちは分かりますが、愚かな真似だけはしない事を祈るばかりですね」

 マイオリーは懸念を呟きながら、もう一度窓から外を見るのだった。

「でも、またいずれ視察には向かいませんとね。実際を見せて納得してもらいませんと」

 そう言って、マイオリーは椅子から立ち上がって、祈祷室へと向かっていった。

(世の中が平和になったのは見た目だけ。根底にはまだ対立が溢れています。それを思えば、あのフェリスさんたちの村はある意味理想的な場所なのですから)

 マイオリーの瞳は、あの時確かに希望を見たのだった。


 マイオリーへの報告を終えて、自分の部屋に戻ってきた神官は荒れていた。

「くそっ、すっかり聖女様はあの邪神に魅入られてしまっている。このままでは、聖教会の地位が危うくなってしまうではいない!」

 机の上の小物を投げたり、椅子を蹴飛ばしたり、それは分かりやすい荒れ具合である。

「邪神といい魔族といい、私は絶対に認めぬ!」

 はあはあと息を切らせながら立ち尽くす神官。聖女を頂点とする神教の敬虔な信者である彼には、マイオリーの方針はどうしても認められなかったのだ。しかし、そうは言ってもマイオリーは聖教会で頂点に立つ聖女なのだ。表立って異論を唱えてしまえば、自分の方が立場的に危うくなってしまう。神官は思いっきり頭を悩ませた。それはもう禿げるような勢いで。

 神官はどうにかしようと考えた。それも自分の立場が揺るがない方法で。

(聖教会内で追い詰めようとしても、さすがに分が悪すぎる。となれば、やはり外に出たところで何らかの手を打つのが一番か……)

 もはや、この神官の中では聖女は絶対の存在ではなくなっていた。というのも、この聖教会は対魔族の機関として立ち上げられたという背景がある。それに従えば、確かにフェリスたち邪神を認める聖女が異端であると言えよう。しかし、数100年前に魔族との戦いが終結した事で、その役目が徐々に変化している事に神官は気付いていなかったのだ。

 直近にはペコラという邪神が混ざり込んでいたというのに、その事すらも忘れているのだ。そのくらいに、彼の家系は厳格な聖教会信者の家系で盲目なのである。

(どうやって邪神に見初められた聖女を葬ってくれようか……)

 神官の中に、なんとも邪悪な心が生まれつつあるのだった。彼は、マイオリーによるフェリスメルの訪問に同行していて、その現場を見ていたからこそ余計に心を歪ませていっているのである。

 不穏な空気が渦巻き始めた聖教会。果たしてマイオリーの運命はいかに?

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