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邪神ちゃんはもふもふ天使  作者: 未羊


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第75話 邪神ちゃんと今後の見通し

 さて、金属工房がいよいよ営業を開始する。ハバリーの用意してくれたインゴットのおかげで、剣や鎧、盾に兜など装備の一式を数点準備する事ができた。特に魔法銀の剣と盾は目玉として置かれている。

 鍛冶職人として店を構えるには、ほとんどの金属を扱える事が条件だ。魔力を含まない金属はもちろん、魔法銀のような魔力を含んだ金属が扱える事が、職人の一人前かどうかの判断基準になるのだ。その点、フェリスメルにやって来た職人たちはそこはクリアしていたのだ。だから、魔法銀も無事に装備に変える事ができたのである。

「いやはや、早速魔法銀を扱えるなんて夢のようですよ。希少金属と呼ばれているだけに、滅多にお目にかかれませんから」

 そう喜ぶのは木工も扱えるウッディだった。三人とも魔法銀自体は見た事がほぼなかったようだった。それでも扱えるのは、金属の扱い方を真剣に学んできたからだ。そういった姿勢があったからこそ、このフェリスメルへの派遣が決まったのだろう。実に楽しみな若い職人たちである。

 工房と隣の商店は以前から注目を集めていたので、開店と聞きつけた人たちが数日後から押し寄せてきた。開店初日からやって来たのは、たまたまフェリスメルに滞在していた人たちだった。

 フェリスたちもそのタイムラグはしっかり計算に入れた上で、商店の警備をルディやヒッポス、それとクーに任せた。邪神が警備をしていれば、それだけで問題を起こす人は居ないはずである。それでも騒ぐ奴はただの世間知らずなので、出禁にしてしまう予定である。安全第一だ。

 金属工房の営業開始で、フェリスメルの職人街はますます活気づく。こうなってくると、後々に移住者が出てくる可能性があるので、フェリスは村長やアファカと一緒に今後の村の運営を話し合っていた。

「職人たちの移住は起きないと思いますよ。ここでは材料となる鉱石の入手が簡単ではありませんから。ただ、ハバリーさんの魔法による金属抽出による付加価値は大きいでしょうから、購入のための行商人が多く詰めかける可能性は捨てられませんね」

「わしにはもう手に負えん。若い者たちだけで話をしてくれ」

 アファカが真面目に議論する一方、村長は年を理由に議論を放棄した。村長がそれでいいのかと言いたいところだが、村の規模が大きくなり過ぎたせいで頭の処理が追い付かないのだろう。そういう事情があるので、議論放棄をしても下手に責められはしなかった。

「若いとはいっても、あたしは村長の何倍も生きてるんだけどなぁ……」

 フェリスは苦言を呈していた。その苦言を聞いたアファカはつい吹き出してしまっていた。フェリスは面白い事を言ったつもりはないのに、アファカのツボに入ってしまったようだった。

「メルはどう思うかしら」

「えっ、私に振るんですか?」

 フェリスが笑うアファカをスルーして、くるりと振り返ってメルに意見を求めてくる。なので、メルは一生懸命考えている。

「そうですね。商人に関してはアファカさんと同じ意見です。流通とか考えたら大都市に構えていた方がいいでしょうし、この村の特産品では別に拠点を置かなくてもいいかと思います」

 と、商人に関してはという前置きをした上で、アファカに概ね同意するようだった。ところが、ここからはちょっと違った。

「むしろ、移住してくるなら冒険者の方だと思います。フェリス様をはじめと邪神の皆様がいらっしゃるので、治安に関してはこの上なくいいですからね。衣食住が安定していて物価が安いとなれば、冒険者の方が恩恵は多いでしょうから」

「ふむ、なるほどね」

 メルの意見に、アファカは唸っていた。アファカは商人なので、それ以外の視点が欠落していたのだ。だからこそ、メルの意見に強く反応したのである。

 それにしても、ただの牧場主の娘だったはずのメルはすっかり参謀的な立ち位置に落ち着いてしまっている。これもすべて、フェリスの眷属になった事による影響なのだ。元々の能力もあっただろうが、ここまで立派に成長してくれた事に、フェリスはちょっと涙もろくなってしまった。

「スパイダーヤーンに関しては、私とフェリス様が魔法縫製で縫えますから、現状は村に機織り職人は必要ないかと思います。むしろ外にスパイダーヤーンを出していった方がいいですね。つまりは今まで通りでいいかと思います」

「まぁ確かにそうですね。二人の使う魔法縫製は、目を見張るものがありますから。ちなみにそれを学ぶような事はできますかね」

 メルの言葉にアファカが反応すると、今度はフェリスに話題を振る。

「可能だとは思いますよ。得手不得手はあるでしょうけれど、ハバリーのような土属性の使い手の方が向いているとは思います」

 フェリスが答えると、アファカはふむふむとメモに取っていた。嫌な予感しかしない。

「ありがとうございました。今後の運営の方針に致しますので、しばらくは増える訪問客の対応に専念しましょうか」

 アファカがそう締めると、会議はこれで解散となった。

 さてさて、金属工房の稼働で、今後はどうなっていくのか。実に楽しみなところであった。

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