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邪神ちゃんはもふもふ天使  作者: 未羊


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第66話 邪神ちゃんと大盛況

 職人街の工房以外の封鎖が解かれて、いよいよ営業が開始した。工房に併設されたお店の売り物は、当面は木工細工や皮革製品が中心となる。それでもこのフェリスメルのチーズなどの話は出回っていて、金属工房が稼働していなくても人を呼び集める事ができていた。やはり、食べ物の恩恵は大きい。

 ちなみにスパイダーヤーンや羊毛による衣類に関しては、基本的にフェリスメル本体の商店が買う事ができる。なので、職人街での販売は防具とセットになる鎧下のみの販売となっている。

 村の食堂で提供する料理は、基本的に村で生産される食材を使い、フェリス、ペコラ、それとメルの三人とその指導を受けた料理人たちで調理を行う。今のこの世界では味わう事のできない料理も多数なのである。これらも人を呼び込むには十分な魅力であると考えらえる。

 とにかく、今のフェリスメルには、よそには無い魅力や建造物がたくさんある。

 ちなみに、職人街のど真ん中にも村長がフェリスの木像を建てようとしていたのだが、これはフェリスが血相を変えて全力阻止をした。邪神としては崇められるに越した事はないのだが、フェリスはそれよりも恥じらいの方が先んじてしまうのである。妙なところで乙女なのだ。大体フェリスメルの中央広場のど真ん中の木像は許してあげているのだから、これ以上は絶対建てないで欲しいと、フェリスから脅迫まがいに言われてしまった。これにはさすがの村長も諦めるしかなかった。ちなみに移住者居住区にはこっそりフェリスの木像が建っているのだが、それに関してはフェリスは知らないのであった。

 さて、そんな事よりも、職人街開放初日の様子を見に行くフェリスたち。金属工房が開いていないとはいえど、さすがは街道の合流地点である。既に多くの人が行き交っており、フェリスたちはこの様子に驚いていた。

「もの凄い人だかりですね。油断すると流されちゃいそうです」

 メルが周りを見回しながら心配そうにフェリスに話し掛けている。その声を聞いたフェリスは、メルの手をしっかりと握りしめる。

「まったく予想以上だわね。メル、あたしの手を絶対離しちゃだめよ」

「はい、フェリス様」

 フェリスが優しく話し掛けると、メルはぎゅっと手を握りしめてきた。その行動に、フェリスはすっかり満足しているようだ。本当にメルにはとても甘いフェリスなのである。

 さて、職人街の事をペコラに任せると、フェリスはフェリスメル本体にある商業組合へと戻ってきた。商人たちの交渉窓口は基本的にここなので、ここも人が溢れてしまっていた。ゼニスや聖女によってだいぶ話が広まっているとはいっても、本当にこの反響は予想以上のものだった。

「アファカさん、今ちょっとよろしいですか?」

 フェリスはアファカを見つけて声を掛ける。

「すみません、フェリスさん。今はちょっと対応が難しいですね。後ほどまた来て頂ければ対応いたします」

 詰めかけている商人たちの隙間から、アファカの声が聞こえてきた。確かに、それだけごった返していれば、とてもじゃないが客対応が間に合っているわけがないのである。さすがにこの状況の上にこう返されてしまっては、フェリスは諦めて組合を立ち去るしかなかった。こういうのが得意なのはペコラなのだが、そのペコラは職人街で対応に当たっているのでこちらに来る余裕がないのである。

「……仕方ないわね、クモでも見に行きましょう」

「はい、フェリス様」

「忙しいところ邪魔しちゃいましたね。また後で来ますね」

 そうとだけ声を掛けて、フェリスとメルは大勢の人で混み合う商業組合を後にしたのだった。


 商業組合を出て、フェリスたちがやって来たのはジャイアントスパイダーの飼育場。ここには人を近付けないようにルディの結界が張ってある。そのために、飼育場の中に入れるのはフェリスたち邪神と眷属のメル、それ以外は飼育担当の大人と子どもたちだけだ。フェリスたちが飼育場にやって来た時には、周りによそから来た人たちの姿もあり、ルディの仕掛けた結界の熱さでそそくさと退散していく姿がちらほらと見られた。

 下手にストレスを与えると解毒作業という手間が増えてしまう。機密というよりは糸の品質保持のためだから、こればかりは仕方がないのだ。

「ハバリー、クモたちの様子はどうかしら」

「あ、フェリス。うん、みんな調子は、良さそうだよ」

 ハバリーは人前に出るのがまだ難しいので、よそ者が誰も来ないこの飼育場に滞在してもらっている。フェリスたちはどういうわけか村の子どもたちに人気なので、ハバリーも例外なく子どもたちにじゃれつかれていた。

 ちなみに村の子どもたちはこのジャイアントスパイダーたちにもじゃれついているのだが、クモたちもまったく嫌がっていない。慣れてしまっただけなのか、それとも本当に仲良くなったのかは分からないが、子どもたちが襲われたような報告はないので、どうやら良好な関係が築けているようだった。

 とりあえずしばらくの間、フェリスはクモたちと戯れながらスパイダーヤーンの回収をしておいた。そして、そろそろ頃合いと見たのか、フェリスはハバリーたちと別れて、メルと一緒に商業組合へ再び向かったのだった。

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