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邪神ちゃんはもふもふ天使  作者: 未羊


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第64話 邪神ちゃんと土魔法

 職人街の建設があっさりと終わってしまい、商業組合や冒険者組合の面々が早速その完成した職人街を視察していた。視察した職員たちの感想は、一応にこの規模の物をわずか数日で作り上げた事への驚きだった。

 しかし、フェリスメルの村人は、フェリスの家をたったの半日で建ててしまうほどの連中なのだ。そりゃもう、この程度の建設など慣れたものだった。なにせ、移住者設備も建てて経験を積んでいたのだから。

 職人街の設備はこんなものである。職人たちの居住区数棟、鍛冶工房1棟、酒場1軒、簡易宿泊所1軒、馬車の運営所1軒、自警団の詰所の分所1棟。現在建てられているものはこのくらいで、後々拡張予定となっている。まずは最低限の設備で始めるのだ。フェリスメルや移住者居住区もあるので、そこまで設備は要らないというのが現在の見解である。

「ええ、こんな感じでいいと思います。あとは実際に運営し始めてからでも対処はできるでしょう」

 アファカからもお墨付きをもらったので、これで職人街はとりあえず完成である。木工細工とかの加工所なら、そもそもあるというのがある。村では扱い切れなかった金属加工の設備を追加するというのが、今回の職人街建設のそもそもの目的なのだ。

 それにしても、これまで影の薄かったハバリーが大活躍だった。ここまでの土魔法を使いこなせるとは、土木工事においてはかなり優秀であると言えよう。掘るだけならルディでもできるが、小高い丘をいくつも量産する事になるので何とも言えないところがあるのだ。

 完成したついでに、ハバリーにフェリスが一つ注文を出そうとして話し掛ける。

「ハバリー、ちょっといいかしら」

「な、なんですか、フェリス」

 なぜか警戒するハバリー。嫌われるような事をした覚えのないフェリスは、ちょっとだけ首を傾げる。だが、それは一瞬だけで、すぐさまハバリーに注文をぶつけた。

「この職人街の辺りの地面だけ、石畳に変える事ってできるかしら」

 フェリスからの思わぬ注文に、ハバリーは見えないけれど目をぱちぱちとさせていた。

「えっと、あの、そうですね……。できます」

 はっきりとハバリーが答えたので、フェリスは実際にやらせてみる事にした。

「それじゃまずはこの中心部分ね。なるべく平らにして、水はけもいいといいわね」

 水はけをよくするというのはちょっと難しいように思えただが、ハバリーはそれを実装してみせようとして魔法を使い始めた。

 しばらくすると、建物が建つ場所以外の地面がガタガタと震え出し、少しずつ変化を始めた。土の地面に草や小石が目立っていた地面が、きれいに平らな地面へと変わっていく。

「な、何だこれはっ!」

 アファカたちが騒いでいる。これほどの大規模な魔法など、そうそう見る事もないのだからそれは仕方がない話である。だからといっても騒ぎ過ぎではないだろうかと、フェリスは眉間にしわを寄せながら思った。

 気が付けば、職人街の中心部の地面は、きれいな一枚の石畳と変わっていた。

「フェリス、とりあえず石畳に変えたから、ここから水はけの模様を入れていくよ」

「分かったわ。ハバリーの好きなようにしてちょうだい」

 フェリスがそう言うと、ハバリーは二段階目の魔法を使い始める。一枚の石畳となった地面に、細かな溝が刻み込まれていく。人や馬などが蹴躓かないように細くやや深めの溝が、まるで網の目のように刻まれていった。

 本当にハバリーの使う魔法は大胆にして繊細である。フェリスは自分も似たようなところがあるので、さすがにもう驚かないのだが、アファカたち職員たちは開いた口が塞がらないようである。

 最終的にこのハバリーの魔法は、広場の舗装を終えると、フェリスメル方向に少し、その反対側にも少し、そして、移住者居住区へと渡る橋まで舗装が行われた。あとは、その職人街を囲むように塀を作って完成である。これを作るのに昼ご飯の後から始めて、陽が暮れる前までに済ませてしまったのだから本当に早いものだった。

「よしよし、よくやったわ、ハバリー。今夜はメルに言って豪勢なご飯にしてもらいましょう」

「うん、ありがとう、フェリス……」

 フェリスが笑顔でハバリーの頭を撫でている。それに対して、ハバリーはとても嬉しそうにしており、前髪からちらりと真っ赤でまるで宝石のようなきれいな瞳が覗いていた。


 とりあえず、これでフェリスメルの振興政策の基本的な部分の整備が終わった。これからは人を受け入れて体制を作っていく段階に移る。フェリスたちは別に専門家ではないので、実際に運用してみない事には不都合な点などは分からない。人を呼び込む部分に関しては、アファカやゼニスに任せておけば大丈夫だろう。フェリスメルの知名度は徐々に上がり始めているので、きっと人は呼び込めるはずである。

 こうして、フェリスが村に来たばかりの頃からの構想だった、フェリスメルの売り込みが本格的に動き始めた。だが、それは同時に、フェリスメルにいろいろなものが舞い込む可能性もはらんでいる。はたして、フェリスたちはそういった様々な事態から、このフェリスメルを守り抜く事はできるのだろうか。期待と不安の入り乱れるフェリスメルの振興政策のスタートだった。

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