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邪神ちゃんはもふもふ天使  作者: 未羊


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第60話 邪神ちゃんと荒療治2

 翌日は、ハバリーの盗賊どもの矯正作業を見学する事にしたフェリス。目の前には、大量のボアを相手に派手に吹き飛ばされる盗賊どもの姿があった。

「これだけ派手に吹き飛び回っていて、よく死なないわね、こいつら」

 フェリスは正直驚いていた。

「多分、フェリスの眷属化の恩恵だと思うよ。メルも結構丈夫になってるもの」

「あー、それはあり得るかも」

 ハバリーからの指摘で、フェリスはなんとなく納得がいった。

 だが、さすがにあれだけ何度も派手に吹き飛ばされていると、ちょっと可哀想になってくる。でもまぁ、村に悪さをしようとして連中なので、罰としてはちょうどいいのかも知れない。フェリスはそう言い聞かせる事にした。フェリスは邪神にしてはどことなく甘いのである。

「ちなみにボアを倒せないと夕飯は抜きになる。盗賊なんて事をしていたから、これくらいでちょうどいいと思うの」

 ハバリーにはまったく遠慮がなかった。思った以上にスパルタ教育のようである。

(うーん、普段がおとなしいほど、こういう時の揺り返しが大きいわね……)

 フェリスは呆れたようにハバリーとボアに苦戦する盗賊どもを何度も見ていた。

 それにしても、盗賊どもも何度も何度も派手に吹き飛んでいる。持っている武器は村の自警団の支給品とはいえ、フェリスが魔法を掛けている代物だ。ボアはよく村にやってくる魔物なので、この支給品でもそんなに苦も無く倒せるはずである。なにせ、フェリスが来る前でも村の人たちは倒せていたくらいなのだから。

(とはいっても、10体くらいのボアじゃ苦戦しても仕方ないかなぁ。まあ、盗賊どもに反省を促す事と、鍛える事を兼ねているから、あたしが手を出すわけにもいかないしね)

 フェリスはその様子を見ながらいろいろと考えている。

「ふぇ、フェリス様。あの人たち本当に大丈夫なのですか?」

 メルが盗賊どもを心配している。メルは本当に優しい子だから、いくら彼らが悪い事をしていた連中だと言っても、今の状況を見ている限りは、フェリスたちの話を聞いてくれない可能性は高い。

「大丈夫よ、ハバリーはちゃんと加減してくれてるし、あの人たちの性根を叩き直すには必要な事なのよ。メルにはつらいでしょうけれど、あたしたちができる事は彼らを見守る事だけよ」

 最後にはっきりと『見守るだけ』という単語を入れ込むフェリス。こうする事で、メルが理解してくれると思ったからだ。

「うう、分かりました。フェリス様がそこまで仰るのでしたら……」

 辛そうな顔をしているが、メルは一応理解してくれたようである。

「はあ、今日もダメみたいですね……。二日連続で夕飯抜き確定です」

 ブモッブモッと喜ぶボアたちの前で、ボロッボロになった盗賊どもが横たわっていた。うめき声みたいなのが聞こえてくるので、全員生きているのは間違いないようだ。

 それにしても、ボアのような弱い部類に入る魔物でも、統率が取れるとこれほどまでの脅威に変わるとは。さすがはボアの邪神ハバリーである。

「くっそ……。ボアが群れているとはいえ、ここまで手も足も出ねえとは……」

 盗賊どももどうやら悔しがっているらしい。

「よかったわね」

「あ?!」

 フェリスが近寄って声を掛ける。盗賊の一人がキレて凄んでくるが、そんなものはフェリスには通用しない。

「もしあのまま村に忍び込んでいれば、あんたたちはみんな死んでたでしょうね。この村にはあたしやハバリー以外にも邪神が住んでるのよ。それに、この程度のボアなら、この村は何度となく襲撃されているから、下手をすると村人にも返り討ちにされていたわよ」

 少々の嘘を混ぜながら、盗賊どもに話をするフェリス。とはいえ、村人に関して憶測というだけであるので、嘘とは言い切れないのだが。

 だが、盗賊どもの間には明らかな動揺が広がっている。大量のボアにボコボコにされた後で精神的に参っているのも大きいのだろう。これはもう一押しと、フェリスはハバリーを見る。それをハバリーは応えて、ボアをフェリス目がけて突進させた。

 次の瞬間、何が起きたのか分からなかった。

 気が付けば、すべてのボアが縦に真っ二つになっていたのだ。しかも周りにはまったく被害はなく、ボアだけがきれいさっぱりに真っ二つ。しかも、全部ちゃんと中央からである。つまり、直線状の攻撃ではなく、ボアの足元から上に向けて何かをしたという事なのだ。

「ウィンドカッター。突風を起こして相手を切り裂く魔法よ。あんたたちもああなりたかったのかしら?」

 フェリスが笑顔で話し掛けると、盗賊どもは震え上がって首を左右に振っていた。さすがに大量のボアに弄ばれ、そのボアたちを一瞬一撃で倒してしまったフェリスの笑顔で、盗賊どもの心は完全に折れた。

「一生ついていきやす、姐さん!」

 盗賊どもは体を起こすと、フェリスに向かって一斉に土下座をした。あまりの揃った唐突な行動に、思わずフェリスはドン引きしてしまう。その様子を見ながら、メルとハバリーは微笑ましく笑っていた。

 やったねフェリス、信奉者が増えるよ!

 そんなわけで、その後の盗賊たちは、フェリスが倒したボアたちの解体処理をせっせと始めた。その様子を見ながら、フェリスは大きく落胆の表情を浮かべていたのだった。

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