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邪神ちゃんはもふもふ天使  作者: 未羊


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第46話 邪神ちゃんの話をする騎士たち

 会食を終えたマイオリーたちは、村にできた宿屋に泊まっていた。この宿屋がまたいい宿屋で、寝具にはすべてスパイダークロスが使われていてぐっすり眠れそうなくらい肌触りがよかった。料理もフェリスの恩恵でおいしくなった村の農作物が使われており、満足のうちに滞在初日を終わらせていた。

「いやー、この村はいい所ですな。このような村があるとは知りませんでしたな」

 護衛で付いてきた騎士の一人が満足げに話している。

「だが、この村はあのフェリスという邪神が来るまでは、普通のどこにでもある農村だったらしいぞ」

 別の騎士は聞き込みをした結果を話している。

「にわかには信じられないでしょうなぁ。あの邪神が来たのはそんなに前ではないらしいですからな。短い間にこんなに劇的に変わるものでしょうか」

「それができるから邪神なのだろう。だが、別に悪い事をしているわけでもないというのだから、実に驚きだな」

 騎士たちはわいわいと村の事で話が盛り上がっているようである。

 騎士たちもフェリスという名前の邪神の事は知っている。それは聖教会に仕える騎士としては当然の知識であり、伝わる邪神の名前は全部把握しなければならないらしい。一部の騎士はその詳細までも頭に叩き込んでいた。

 ところがどうだろうか。実際に会ったフェリスは邪神というかただの無邪気でお人好しな魔族でしかなかった。禍々しい雰囲気を背負っていると思ったのに、意外にもそれはほんわかとした優しい空気をまとった奇妙な猫でしかなかった。

「村人たちはあの邪神の事を天使と言って崇めているようだが、その気持ちは分からなくもないな」

 騎士の一人がそう言えば、残りの騎士も黙って頷いていた。どうやら全員の認識のようである。

「とはいえ、俺たちは聖女様をお守りする騎士だ。仮にも邪神と呼ばれる存在にうつつを抜かすような真似は、破門されかねんぞ」

「そうだな。気を付けねばならんな」

「でもなぁ、ここの飯はうまいから、このままここに就職してもいいぜ」

「なら、お前はここに置いて帰ろうか」

「そ、そんな。冗談ですってば」

 迂闊な一言を喋った騎士は、置いて帰る宣言をされて慌てて撤回していた。その反応に、他の騎士たちは思い切り笑っていた。

「しかし、ペコラの事も驚いたよな。俺、ここでの仕事が長いから何度となく見た事あるんだよ」

「ああ、ほんの数年前まで料理番してた子だろ? 邪神だとは思わなかったよな」

「妙な料理ばかり作るなとは思っていたが、まさか邪神で伝説となってる戦いの経験者だとはなぁ」

 騎士たちの話題がペコラの方に移っていた。フェリスよりは騎士たちにとってなじみのある人物なので、話題に上がるのは仕方がない話である。

「つまり、作ってた料理もその戦いの頃にはあった料理って事か……。生きた証人じゃないか、邪神だが」

 ここでも笑いが起きる。実にこうやって笑っていられるのは、ここが平和な証拠だ。ひとたび聖教会に戻ればこうはいかない。戒律が厳しいので、こうやって自由に話をする事もままならないのだ。

 だが、その一方で気になる事もたくさんある。その事の中心に居るのは邪神フェリスだ。こうやって話してはいるものの、邪神への疑いを彼らは捨てきれない。聖教会に仕える騎士というのはそういうものなのである。むしろマイオリーの方が柔軟と言えるのだ。だが、今の彼らにフェリスたちを攻撃する理由はない。聖女であるマイオリーから止められているのもあるが、騎士たち自身もその必要が無いと判断したからである。

「この村がここまで変わったのも、あの邪神が関わったからなんだよな」

「らしいな。あのでかいクモどもといい、近くを流れる川といい、村の事を考えて施したって村の連中は話してたな」

 正直どこまで信じていいのやら分からないが、ここの村人が嘘を吐いているような素振りもないので、これは事実なんだろうなと納得せざるを得ないのである。

「それにしても、意外と聖女様が笑顔を見せていたのも驚きだったな」

「そうだな。いつも見る聖女様は大体儀式の時くらいだから、無表情ばかりで愛想も何も感じられなかったからな」

「まさに使命にのみ生きる者って感じだよな」

 本当にここに来ただけで聖女がいろいろな表情を見せていた事に、騎士たちは全員驚いていたのだ。やはり聖女というのはお固い存在だというのが、騎士たちの共通のイメージだったのだ。笑顔自体は視察の際に見かける事はあるが、今日ほどの笑顔は見た事がなかった。本当に新鮮で、危うく惚れてしまいそうになった騎士も居たのだとか。

「ともかく、この地に邪神が居る以上は、この村は監視対象になる。おそらく、神殿からここへ派遣される騎士が指名されるだろう」

 今回の視察団のまとめ役だと思われる騎士がそう言うと、騎士たちは一斉に盛り上がる。何を考えているのかがよく分かるというものだ。胃袋を掴まれれば、それは堕ちたも同然なのだ。

「心残りは、もう明日はここを発ってしまうという事だろう。聖女様はお忙しいのだ、仕方のない事なのだ」

 騎士たちは、本当に悔しい限りの顔をしている。

「心残りはとてもよく分かるが、我らの職務は聖女様をお守りする事。明日に備えて寝るぞ、諸君」

 こうして護衛騎士たちの慌ただしい夜は、眠りの時間を迎えたのだった。

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