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邪神ちゃんはもふもふ天使  作者: 未羊


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第35話 邪神ちゃんと見学会

 フェリスたちに迎えられた商人たちは、フェリスの姿に驚いた。全身が白い毛並みに赤色の髪の毛、それに背中にはこうもりのような羽が付いている。どう見ても人間ではない魔族である。

「ここは魔族の支配する村なのか?!」

 商人の一人が叫ぶが、それを制したのはゼニスだった。

「一応フェリスさんの事はお話したと思ったのですが? 聞いておられませんでしたか?」

「ぐっ……」

 騒いだ商人が押し黙った。どうやら聞いていたようである。

「じ、実際に見て驚いただけだ」

 商人はそうだけ言って顔を背けた。謝る気はないようである。

 まぁフェリスにとっては予測の範疇である。自分が不当な扱いが受けようとも怒る気はない。そもそも自分の立場はフェリスが一番理解しているし、それ以上の物で黙らせればいいだけなのだ。横でメルが頬を膨らませて不機嫌になっているが、フェリスが頭を撫でで微笑めば、メルは一気に機嫌を直したのである。

「まぁまぁ、あたしが魔族と関係あったのは事実だしね。とりあえず商業組合に行って、それから宿。荷物を置いたら村の中の見学よ。いいかしら」

 明るく振る舞うフェリスに少々疑念を持つ者は居たが、概ねは素直に従ってくれそうである。

 というわけで、一行はまず村に新設された商業組合へと顔を出した。

「あら、みなさんお久しぶりですね」

 商業組合の机で書類を作っている女性。どうやら商人たちと面識があったようである。

「いやはや、あなたがおいででしたか、アファカさん」

「ええ、彼女は私の紹介でも指折りの有能ですからね。今後の事を考えて、この村に赴任してもらったのですよ」

 商人の一人の言葉に反応したのは、ゼニスだった。どうやらアファカと呼ばれた女性は、ゼニスの所属する商会ではトップクラスの人らしい。まぁ確かに容姿はとても整っている。見た感じ20歳の前半といったところだろう。

「はい、私はこの村での商業の扱いを一手に引き受けています。この村で商売をしたければ、私の機嫌は損ねない事をお勧めします」

 無表情で淡々と告げるアファカ。きれいだが、どことなく怖い感じである。

「ちなみに、フェリスさんを貶した時点ですでにマイナスです。そこはご了承下さい」

「ひっ!」

 にっこりと氷の笑みを浮かべるアファカ。それはやって来た商人たちを凍てつかせるには十分だった。

(こっわ。人間にもたまに居るわよね……)

「フェリスさん、私を怖いだなんて、思ってませんよね?」

 フェリスが眺めていると、アファカがフェリスを見て微笑んだ。しっかり心を読まれたようである。

(ちょっと、あたしの心を読むなんて、この人間何者よっ!!)

 フェリスは平静を装いながら、心の中で叫んだ。

 商業組合を出た一行は、宿に入るとここでも驚いていた。宿はしっかりとした三階建ての建物で、設備もしっかりしている。ベッドのシーツはよく見ればスパイダークロスである。村にやって来た商会の従業員のアドバイスですっかり質が上がっていたのである。

 商人の一行は、護衛を数人宿に残して村の見学に出る。牛や馬といった家畜はのんびりと暮らしており、小麦や果物もしっかり実っている。

「って、今ってリンゴとかの旬じゃない時期だろ?」

「これもフェリスさんの恩恵なんですよ」

 とかちょっとしたやり取りをしながら巡っていく。大体妙な事があればフェリスのせいで押し通せた。実に便利な『フェリスのせい』という単語だが、フェリスの外見のせいでとても納得がいくのである。フェリスはそのせいで膨れっ面になっていたが、まあ可愛いものである。その姿を見つめるメルが恍惚とした表情を浮かべていたので、なおさら膨れるフェリスである。

 で、予想通りジャイアントスパイダーの姿で商人たちは大声を上げた。糸の品質は確かなものだったが、その糸を生み出す魔物が子どもほどの大きさがあるとは思ってもみなかった。そのクモたちをそのほぼ同じ大きさの子どもたちが世話しているのだから、瞬時にして大きさが分かるというものである。

「いやはや、私も叫びましたからな、これを見た時は……」

 ゼニスがどこか遠い目をしていた。

「おう、ちょうどここに来てたのか」

 そこへルディが魔物の肉を持って現れた。どうやらしばらく狩りに出ていたようだ。あの短い時間で魔物を倒してくるあたり、さすがと言えよう。

「ひっ、魔物!」

「俺は確かに魔物だが、今はれっきとしたこの村の住人だぞ。それとこの肉はそのクモどもの餌だ」

 ルディはそう言いながらクモへと近寄っていく。相変わらずルディはクモに逃げられているが、餌だけ置いて戻って来ると、クモたちは嬉しそうにその餌を頬張っていた。

「とまぁ、あいつらはこうやって飯食って、糸を吐いてるんだ。ストレスさえ与えなきゃ、糸は毒性はないしそれはいい品質の糸になるんだぜ」

 ルディは得意そうに笑っていた。クモに逃げられていて凹んでいたのが嘘のように今は平然としている。成長したものだ。

「とりあえず、今ある糸だけでも回収して商業組合に戻りましょうか。歩き詰めで疲れたでしょうからね」

「ええ、そうですね」

 というわけで、ここからは本格的な商談に入るために、一行は商業組合の建物へと戻る事になった。そこでは、アファカが村の女性陣を連れて待ち構えていた。

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