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邪神ちゃんはもふもふ天使  作者: 未羊


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第34話 邪神ちゃんのお出迎え

 いよいよ、名無しの村改め、フェリスメルの新生スタートの日を迎えた。正直自分の名前が入った村の名称にくすぐったいフェリスだったが、自分を知らない人たちがやって来るとあって、表立ってはちゃんとした表情で村の入口に立っていた。

 ゼニス情報によれば、かなりの人数が村に興味を示したようであり、100人規模くらいの人間が村に向かうという事らしい。なんでまたそんなに多いのだろうか。

「一番の原因は、やっぱりスパイダーヤーンですな」

 ゼニスからの返答はこうだった。さすがに良質な糸や生地となれば、貴族から目を付けられてしまう。それを知った商人たちが、今回こぞって村に押しかけるというわけである。それは大所帯になるというものである。一応ゼニスたちも居るらしいのだが、果たして村人たちに対応し切れるか疑問であった。

「んー、あたしらの知り合いも、近くに居るのはマイムしか知らないしなぁ。水の精霊である以上、マイムは離れられないし、どうしたものか」

「はははっ、フェリスはいろんな意味で甘いなぁ」

「うるさい、ルディ」

「あがっ!」

 犬ころが大笑いするので、眉間にチョップを食らわせるフェリス。流れるような漫才に、メルは笑っていた。

「必要であるなら、フェリス様の巫女として、私も客人の対応をさせて頂きたく思います。フェリス様のおかげで、私もある程度は知識がございますし、ある程度対応は可能だと思います」

 メルはキリっとした顔で申し出てくる。

「うーん、メルに知識があるのは確かだけど、問題は経験よねぇ。知識と経験が組み合わさってないのなら、かえって危険な気もするわ」

 フェリスは本気で悩んでいる。そして、

「よし、あたし自らも対応するわ。一応これでも使い魔時代からの経験があるわけだし、この中で経験ならあたしに勝る者は居ないものね」

 フェリス自らが対応する事にしたのである。これにはメルは当然だが、なぜかルディまで驚いていた。

「なんであんたまで驚くのよ」

 フェリスが怒りマークを浮かべながらルディを見る。

「いやぁ、フェリスってどっちかいうとまとめ役のイメージが強いからなぁ。俺らが集まった時、大体フェリスが取り仕切っていただろ?」

「まぁそうだけどさ。あたしは使い魔時代があるんだから、そういう召使い的な事だってできるのよ。とりあえず、あたしたちも最初のうちは手伝うわよ」

「はいっ!」

「ええー……」

 フェリスの提案に元気よく従うメルと、いやそうな顔をするルディ。見事なまでに反応が分かれたのであった。

 嫌がるルディを引きずりながら、フェリスとメルは村の入口へとやって来た。そこにはすでに多くの村人が押し掛けており、出迎える準備をしていた。

「こらこらストップーっ! なんでほぼ総出で来てるのよ」

「おお、これは天使様。この村に行商以外が来るのなんてめったにない事ですので、総出で歓迎をしようと思いまして」

 フェリスが問い詰めれば、村長がそんな事を言っている。

「はいダメダメ、食堂とか宿屋とか、そこで働く人たちは持ち場に帰りなさい。普通は門番だけが対応して、他の人はいつでも店で出迎えられるように待機しておくのよ。今回は初めてではあるけれど、案内はゼニスさんに任せておけばいいの。はいはい解散解散」

 フェリスが散らそうとすると、残念そうにする村人たち。

「初めての出迎えだけど、今回はあたしと村長、それとメルだけでやります。みなさんは持ち場に戻って下さい」

 フェリスが強めに言うが、村人たちは駄々をこね続ける。

「い・い・わ・ねっ!」

 額に血管を浮かべながらフェリスが凄むと、これでようやく村人たちは村の中へと戻っていった。

「まったく、さすがはのんびりとした村だわ。慣れてないからこういう感じになってしまうのね」

 フェリスは両手を腰に当てて怒っていた。激おこモードのフェリスをメルが何とか落ち着かせようとしていたのだが、しばらくは収まりそうになかった。

 とまぁ、ちょっとした悶着はあったのだが、商人たちが到着する頃にはフェリスも冷静さを取り戻していた。フェリスも切り替えはばっちりできるタイプの邪神なのである。

 村の入口から、かすかに人の姿が見えるようになる。視力のいいフェリスには、はっきりとそれがゼニスたちだと判別できた。

「さぁ、商人たちが到着するわよ」

 その言葉に村長がピリピリと緊張して固まる。

「はぁ、ゼニスさんたちを出迎えるように気楽にすればいいのよ。今回はゼニスさんだって居るんだから、そこまで固くならなくていいのよ」

 メルだって気楽に構えているのに、村長がそんなので大丈夫なのだろうかと、フェリスは思った。

 商人の団体は村の入口に到達すると、そこで一度立ち止まった。

「おや、思ったより少人数でのお出迎えですね」

「ええ、大所帯は邪魔だろうからと、あたしがやめさせました。入口では村の代表者だけで十分ですもの。今は中で緊張して待ちわびてますよ」

 ゼニスの言葉に、フェリスは返す。

「なるほど、君の入れ知恵ってわけですか。なるほどね」

 ゼニスは笑っていた。

「それではみなさん、このフェリスメルへようこそ」

 ゼニスとのやり取りを終えたフェリスは、商人たちに向かってお辞儀をして出迎えたのである。

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