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邪神ちゃんはもふもふ天使  作者: 未羊


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第28話 邪神ちゃんとジャイアントスパイダー

 さてさて、ゼニスとの交渉で、ジャイアントスパイダーの糸の増産が決まったわけだが、さすがに新たに捕まえてきて増やすというわけにはいかなかった。なにせあの森はマイムの管理下にあるので、マイムに了承を取らない事にはあの森の生き物を勝手に生きた状態で連れてくる事ができないのである。ちなみにマイムは妖精や精霊の一種ではあるが、フェリスとも交流があったために一部では邪神扱いされているのである。実に迷惑な話だった。

 となると、今居る個体を増やすしかないわけで、それにはマイムが渡してくれた育成指南書が役に立つわけである。

 ジャイアントスパイダーの飼育場に赴いたフェリス。そこでは村の子どもたちが自分たちと同じくらいの大きさのクモと戯れていた。糸に毒性を持つ事のあるジャイアントスパイダーだが、その本体自体に毒があるわけではない。ストレスによって毒が生成されるだけのようなのである。おそらく一種の防衛本能なのだろう。なので、安心して子どもたちと遊ばせられるというものである。

 ジャイアントスパイダーたちは子どもたちにもみくちゃにされながらもおとなしく撫でられていた。子どもたちも限度が分かるのか、嫌がり始めたと感じたらピタッと撫でるのをやめて離れていた。さすが普段から動物たちと戯れている子どもたちである。フェリス並みに感覚が鋭かった。

「やぁみんな。調子はどうかしら」

「あっ、天使様だーっ!」

 フェリスが声を掛けると、ちょうどジャイアントスパイダーたちから離れた子どもたちが駆け寄ってきた。全身もふもふのフェリスもまた、子どもたちには人気なのである。

「あはは、みんなくすぐったいってばっ!」

 子どもたちにもみくちゃにされるフェリス。さっきまでジャイアントスパイダーたちがされていた事を、早速その身に食らわされるフェリス。さすが人気者である。その様子を、横でメルはそわそわしながら黙って見守っていた。メルもまた、フェリスの毛並みをもふりたいようである。我慢しなくていいのにと思う。

「メル様、私はルディ様と一緒にクモたちを見て回ってますね」

 もふりたい気持ちを抑えて、メルはルディと一緒にクモたちの状態の確認へと向かっていった。

「ちょっと、あたしこのまま?!」

 フェリスは子どもたちにもみくちゃにされた状態で放置されてしまったのであった。

 子どもたちをフェリスに任せたメルとルディは、一緒にクモの状態を見て回っている。ジャイアントスパイダーたちはこの敷地から外へは出られないものの、十分な広さと緑があって非常にリラックスしているようである。この日も木々のあちこちに大量のクモの糸が張られており、大人たちがコツコツせっせと回収して回っていた。

「本当にこの子たち可愛いですよね」

 メルはジャイアントスパイダー1匹1匹を抱き締めながら回っている。メルが美少女だからというわけではないが、ジャイアントスパイダーたちは非常にそれに満足しているようだった。だが、ルディの方は近付く事を許さなかった。ストレスではないものの、やはり火が怖いようで、この結界を作った事で警戒されているのである。まさにクモの子を散らすようにルディから全力で逃げている。

「ちょっ、お前らに逃げんな」

 ルディとジャイアントスパイダーたちの追いかけっこを見て、メルはくすくすと楽しそうに笑っていた。

「ははっ、村に来た時にはあれだけ懐かれたのに、火の結界ひとつずいぶんと嫌われたものね」

 子どもたちにもみくちゃにされて、毛並みが乱れたフェリスがメルのところまで笑いながらやって来た。

「フェリス様、御髪(おぐし)が乱れています」

 メルがどこからともなく櫛を取り出して、フェリスの乱れた毛並みを直していた。

「ありがとう、メル」

「いえ、お仕えしているならこれくらい当然です」

「だったら、子どもたちから助けてほしかったわ」

「はうっ!」

 髪をすぐに整えているのは有能だが、子どもにもみくちゃにされるのを止めなかった事はしっかり咎められてしまうメルだった。はううと泣きそうな顔をするメルを慰めると、フェリスはすっと飼育場を見回した。

 するとどうした事だろうか、ルディに追われて散り散りになっていたクモたちが、あっさりフェリスの元に集合したではないか。何が起きたというのだろうか。

「よしよし、動物を使役する力は、この子たちに通じるみたいね」

 どうやらフェリスの能力の一つのようだ。

「はあはあ、ずりぃぞフェリス。自分だけクモに好かれやがって」

「何言ってるのよルディ。だったら魔物でも狩ってきて、肉をあげて気を引いたらいいんじゃないの?」

「くそぅ、やっぱり俺はそういう役回りかあっ!」

 ルディは半べそをかきながら飼育場から走り去っていった。あの分では本当に魔物を狩ってきそうである。フェリスは呆れた表情でルディを見送った。

「ま、あの犬ころはそのうち戻って来るから、あたしたちはクモたちの様子を見ましょうか」

「はい、フェリス様」

 フェリスとメルは自分たちほどの大きさのあるクモたちを1匹ずつチェックしていく。まだわずかしか経っていない事もあるだろうが、体調に問題がありそうな個体はとりあえずいなかった。

「うん、今のところは大丈夫ね。これからもいっぱい糸を作ってちょうだいね」

 フェリスがそう言って撫でてあげてると、クモたちはみんな喜んでいるようだった。

「さすがフェリス様。みんなから愛されてますね」

 満足げなフェリスを見ながら、メルは自分の事のように喜びながら笑っていた。

 ちなみに、ルディが魔物を狩って戻ってきたのは翌朝の事だったそうだ。うん、お疲れ様。

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