王女様、わたしを萌えさせないで!
セシルの部屋の前へ着くと、フィーリア騎士団長がノックをする。
「どうぞ」
セシルの声が聞こえた。同時にちょっとバタバタと音が聞こえた。
「失礼します。メリア様をお連れいたしました」
フィーリア騎士団長が扉を開けて、どうぞと手を差し伸べてられ、わたしはセシルの部屋に入っていく。
「お招きいただき、ありがとうございます。セシル」
わたしは笑顔でセシルに挨拶をする。
「お越しいただけてとても嬉しいですわ。メリア」
セシルは無垢な笑顔で応えてくれた。やめて、可愛いすぎるわ。
「メリア、こちらへどうぞ」
わたしはセシルにテーブルへ案内される。
タイミングよく使用人がティーセットとお菓子を用意してくれた。
「メリア、とりあえずお茶にしましょう」
セシルはお茶とお菓子を一口ずつ食べてみせ、わたしに勧める。
「ありがとう、セシル。それではいただきますね」
わたしはお茶を香りを楽しみながら一口飲む。
「とても美味しくて、ハーブの香りも素敵ですわ」
さすが王宮で出すお茶で、高級度が違いますわね。
「セシルは、この間の本は読まれましたの?」
「ええ、全部読ませていただきましたわ。とても素敵な物語でした。勇者様とお姫様が……」
セシルがおっとりとした笑顔で乙女の世界へ入っている。
セシル、戻ってきて。
数秒すると、はっ! としてセシルが戻ってきた。
「失礼いたしましたわ」
セシルが照れた表情を見せた。反則ですわ。
「とても気に入っていただけて、嬉しいですわ」
本の話題でわたしとセシルが楽しんでいると、セシルの専属教師が部屋にやってきた。
「王女様、お勉強のお時間です。よろしいでしょうか」
「はい、大丈夫です。今日はメリアと一緒にお勉強したいのですが……」
——おねだりするセシルもたまりませんわ。
「構いませんよ。お一人でするよりお勉強が捗ると思います」
わたしはセシルと一緒にお勉強をすることになった。
セリアの慧眼はさすがだわ。
セシルの勉強は1学年先のものをやっているようだ。
王族たるもの貴族の先に立たねばって感じかしら。
わたしは当然できてしまう。
セシルの専属教師は口を開けて驚いていた。
セシルは尊敬の眼差しで見つめている。
だから、萌え死にするって。
負けじと勉強を頑張るセシルの姿を見ると癒されますわ……。
「はい、それでは今日のお勉強はこれで終わりにいたしますね」
専属教師の合図でお勉強は終了となった。
次は剣の稽古らしい。
稽古着に着替えるために使用人が数人部屋に入ってきた。
「メリアは、稽古着はお持ちですか?」
「はい、もちろん持ってきていますわ」
セリアありがとう。
わたしもセシルと一緒に使用人に稽古着に着替えさせられた。
「王女様、メリア様、それでは稽古場へ行きましょう」
剣の稽古はフィーリア騎士団長がしてくれるようだ。
案内されたのは、室内の稽古場だった。
デク人形がいくつもあって、練習用の武器もたくさん置いてあった。
わたしたちは木の剣を与えられて練習をする。まずはセシルからだ。
セシルはスピード重視で片手で剣を持ちフェンシングのような攻撃スタイルのようだ。
「セシルはレイピアを想定して訓練しているのかしら?」
「メリア様、よくわかりましたね。その通りでございます」
それは前世の記憶で知っていたからなんて言えはしないわ……。
「では、メリア様もやってみましょうか」
フィーリア騎士団長に促され、わたしは木の剣を両手で握りデク人形を壊さないように手加減してまずは剣を上から振り下ろす。
少しバックステップを入れて横からも一撃振るった。
よし、デク人形は壊れてないわね。
「メリアの剣さばき、素敵ですわ」
完璧な手加減だったが、それでも驚かれてしまった。
セシルの笑顔で帳消しとしましょう……。
「メリア様、どちらの流儀でしょうか。初めて見る剣の型ですね」
一番返答に困る質問が来てしまった。なんと答えようかしら……。
「我流ですわ。パワード先生がそれで構わないとおっしゃっていらしたので、そのままの型で鍛錬しております」
「あぁ、あのパワード様のお弟子様なんですね」
「パワード先生をご存じなのですか?」
「パワード様は元王国騎士団長を務められておりました。今は引退して後身の育成に励んでいると聞いております」
やっぱりパワード先生はすごい方でしたのね。
でも、いろいろと複雑な気持ちですわ……。
「お次は、私と剣の手合わせをしていただきます。まずは王女様からお願いします」
「ええ、わかりましたわ」
まずは、セシルとフィーリア騎士団長が手合わせをする。
基本、セシルの攻撃を優先させている。
セシルの剣をフィーリア騎士団長は剣で軽く受け止めて、時折避けやすいように攻撃を加える。
その繰り返しだ。
「では、終わりにしましょう」
「ありがとうございます」
結構な手合わせで、セシルの顔から汗が滴った。
それも反則ですわ。
「それでは、メリア様もお手合わせいたしますか?」
「はい、よろしくお願いします」
わたしはフィーリア騎士団長と向き合って挨拶をする。
「では、いきます。たぁぁ!」
わたしは剣をフィーリア騎士団長に打ち込む。
フィーリア騎士団長は剣を片手持ちで受け止める。
「うっ、重い」
フィーリア騎士団長は思わず声に出てしまったようだ。
わたしはさらに数撃打ち込む。
時折くるフィーリア騎士団長の攻撃は剣でいなす。
数回繰り返していると、フィーリア騎士団長の木の剣にヒビが入っているのがわかった。
わたしが後方に下がると、フィーリア騎士団長も気がついたようだ。
剣のお手合わせはこれで終了だ。
「フィーリア騎士団長、お手合わせありがとうございました」
「いえいえ、こちらこそいい稽古になりました。さすがパワード様のお弟子様ですね」
セシルは、わたしとフィーリア騎士団長との手合わせをみて目をキラキラさせて誉めてきた。
「メリア、凄いですわ。フィーリアとやり合えてしまうなんて」
セシルのわたしを見る目が眩しいですわ。
これ以上はわたしが溶けてしまいますわよ。




