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へんな子たち  作者: 楠羽毛
未来視
83/103

未来視(2月9日 及川 綾音) ①

挿絵(By みてみん)

 ぱちんと、目がさめた。

 夢を見ていたような気がする。

 どういう夢だか、思い出せない。いつも。夢を覚えていられたためしがない。そういう体質なのだと思う。

 けれども、きょうは、


 ……なんだか、悲しい夢、だったような。



 綾音あやねは、小さくのびをした。なるべく口をすぼめて、息をつく。それでも、ふあぁ、とだらしない声が喉からもれる。眉をしかめて、首をふる。

 眠い。

 いつも寝起きはいいのに。昨夜は、眠りが浅かったらしい。暖房が強すぎたのかもしれない。

「おはよ、」

 かたんと、となりの席の子が椅子にかける。まんなかで髪を分けておさげにした、そばかす顔の少女。……木田きだ保美やすみ

 ぼんやりと、名前を思いだす。30秒ほど、かかった。

「久しぶり、」

 なにげなく言うと、ぎゅっと眉をしかめて、

「……なにが?」

 と聞き返される。

「え、」

 ちょっと沈黙してから、気づく。あたりまえだ。昨日も会っている。

「ごめんごめん、ちょっと夢で」

「夢で?」

「夢で……なんだっけ」

 思いだせない。……そもそも、夢なんか見ただろうか。

「知らん知らん」

 あきれ顔で言われて、首をふる。とにかく、夢で。なにかあったのだ。

「ねえ、なんだか……」

 そう、続けて言うと、保美やすみはきょとんとして唇をむすんだ。

「……若く。なった?」

「えー……、」

 眉をぎゅっと寄せた、けわしい顔になって、

「それ、褒めてんの? ありがと」

「いやあ……、」

 わけがわからない。

 綾音あやねはちょっと首をかしげて、──それから、忘れた。



 夢を見ていた。

 そうして、



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