未来視(2月9日 及川 綾音) ①
ぱちんと、目がさめた。
夢を見ていたような気がする。
どういう夢だか、思い出せない。いつも。夢を覚えていられたためしがない。そういう体質なのだと思う。
けれども、きょうは、
……なんだか、悲しい夢、だったような。
*
綾音は、小さくのびをした。なるべく口をすぼめて、息をつく。それでも、ふあぁ、とだらしない声が喉からもれる。眉をしかめて、首をふる。
眠い。
いつも寝起きはいいのに。昨夜は、眠りが浅かったらしい。暖房が強すぎたのかもしれない。
「おはよ、」
かたんと、となりの席の子が椅子にかける。まんなかで髪を分けておさげにした、そばかす顔の少女。……木田保美。
ぼんやりと、名前を思いだす。30秒ほど、かかった。
「久しぶり、」
なにげなく言うと、ぎゅっと眉をしかめて、
「……なにが?」
と聞き返される。
「え、」
ちょっと沈黙してから、気づく。あたりまえだ。昨日も会っている。
「ごめんごめん、ちょっと夢で」
「夢で?」
「夢で……なんだっけ」
思いだせない。……そもそも、夢なんか見ただろうか。
「知らん知らん」
あきれ顔で言われて、首をふる。とにかく、夢で。なにかあったのだ。
「ねえ、なんだか……」
そう、続けて言うと、保美はきょとんとして唇をむすんだ。
「……若く。なった?」
「えー……、」
眉をぎゅっと寄せた、けわしい顔になって、
「それ、褒めてんの? ありがと」
「いやあ……、」
わけがわからない。
綾音はちょっと首をかしげて、──それから、忘れた。
*
夢を見ていた。
そうして、
*




