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へんな子たち  作者: 楠羽毛
巨人
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巨人(9月10日 岡くるみ) ⑦

 くるみは、泥のなかに呆然としてしゃがみこんでいた。

 池は、もうかげもかたちもない。ただの、泥のたまった穴があるだけ。くるみ一人が、ようやく膝をかかえて座ってくられるくらいのサイズの。

 あずまやが見える。なぜか、眼下に。

 そっと手をだすと、屋根のちいさな飾りが指先にふれる。人差し指の先を、送電線に添って右にすべらせてみる。

 電柱よりも、ずっと太い。

 とたんに、吐き気がこみあげてきた。胸が苦しい。苦しいというよりも、痛い。胃がぐるぐるして、何かが暴れまわっているような気がする。



 ──いやな思い出が、次々に頭の中をよぎる。



 ごぼりと、巨大な胃のなかから、なにもかもが溢れだしてきた。





 咀嚼そしゃくされた21個のケーキ。

 昨晩の豚肉のかけら。

 給食のスパゲッティ。牛乳。

 池いっぱいの水と、魚と、泥と、アメンボと、アオミドロと捨てられたゴミの塊。ほとんど丸呑みしたので、形はそのまま。

 最後に、トラック1杯ぶんのヘドロと、ほんの少しの胃液。



 ぜんぶ吐き終えたとき、くるみの体は元の大きさに戻っていた。

 池の岸で、……からっぽの胃のなかから、まだ何かを絞りだそうとして、嗚咽おえつする。20回ほどくりかえして、ひりついた喉をかばうように、しばらく咳き込む。

 ぽんぽん、と背中にだれかの掌がふれる。びくんと震えて、身をよじるようにしてふり向く。次の瞬間に気づく。裸だ。

 それから、夢ではなかったのだと思い知る。

おかさん、大丈夫?」

 真っ赤なスニーカーが目に入る。それから、ワンポイントの入った白い靴下。

 見上げる。ふわふわと撥ねるように癖っ毛に赤い髪留かみどめをのせた、小柄な少女。顔にはなんとなく見覚えがある。たしか、同じクラスの。ええと、誰だっけ。

 吊り眼ぎみのまぶたをぎゅっと細めて、かるく膝をまげて目線をあわせて。


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