表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
へんな子たち  作者: 楠羽毛
巨人
44/103

巨人(9月10日 岡くるみ) ②

『大』のボタンをおして、流す。水だけ。

 トイレを出て、手を洗う。水音にまぎれて、ため息。

 今日も、出ない。もう一週間だ。

 それなのに、体調はとてもよい。下腹部を触ってみるが、溜まっている感じはしない。どこかに消えてしまったみたいだ。

 とにかく、体重ばかりが……、

「ご飯だよ、」

 と、母の声。あわてて廊下をぬけて、ダイニングへ。席につくと、珍しく姉が先に座っている。「ねえ、」と目の前に置かれた茶碗に、姉が文句をつける。

「ちょっと減らしていい? 多いよ」

「えぇ?」

 母がすっとんきょうな声をあげる。父は、軽く眉を動かしただけ。

「いつも、そんなこと言わないじゃない」

「ダイエット!」

「だめ、成長期なんだから」

 ぐいと、茶碗を押しつけるように母が動かす。姉は一瞬だけ、ぎゅっと唇をかむようにして、それから、はぁい、と小さな声で返事をする。

 くるみは、気づかれないように唇をすぼめて、ため息をつく。

 姉は、ぜんぜん太っていない。すらりと長身で、姿勢よく椅子にかけている。肩幅は狭くて、手首だって、くるみの半分くらいの太さしかない。

 姉妹なのに、似ていない。顔も、体も。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ