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へんな子たち  作者: 楠羽毛
台風の魔女
19/103

台風の魔女(7月10日 吉田美緒) ①

挿絵(By みてみん)

「──暴風警報が出たってサ」

 とんとんとん、と階段をあがる。母の声が追いかけてくる。はぁいと生返事。あしたは休みになるだろうか。それとも、夜のうちにいってしまうか。

 9時のニュースでは、台風は、まだ太平洋上だったはずだ。直撃コースとはいえ、もう警報が出るなんて。雨戸をしめているので、外の音は聞こえない。自室に入って、ベッドのわきに腰かける。かるく、伸びをする。

 10時。まだ、寝るにはすこし早い。

 宿題はとっくに済んでいる。勉強机にすわって、ちょっと教科書をひらく。すぐ、閉じる。日曜の夜に予習なんか、がらでもない。

 ふと、古い落書きノートが目にとまる。ぱらぱらと開く。なんとなく恥ずかしくなって、閉じておく。

 壁に耳をつける。弟は、もう寝たようだ。

 そっと、少しだけ雨戸をずらす。

 すぐに、風の音が入りこんでくる。風圧がカーテンを吹き飛ばして、ばさりと顔にかかる。空は曇っていて、月も星もない。街灯のあかりが、まいい上がるつむじ風をうっすらと照らし出している。

 もう少し、開く。

 顔を出す。動くものはなにも見えない。ただ、雨が降り出す前の独特の臭いが、街じゅうをおしつつんでいるのがわかる。

 ぶわりと、また突風。

 前髪が巻き上げられて、大きく跳ねる。ぴん、と音がして、なにかがはじけとぶ。髪がぶわりと広がる。ヘアゴムがちぎれたらしい。触ってもいないのに。

 ぱちぱちと、静電気が走る。


 ──ねえ、と誰かの声がきこえた気がした。

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