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アイスクリーム(7月12日 松浦真優) ③
「……うげ、」
午後8時。
いつもの……いや、最近、後ろめたさからさぼりがちな習慣。風呂あがりの体重計。脱衣場から出てすぐ、リビングで。
「姉ちゃん、太ったん?」
ソファに座っている弟が、さして興味もなさげに、まんが本から顔をあげる。
「……ちがう」
「え?」
二人で、デジタルの数字を見下ろす。それから、顔を見合わせる。
「……壊れたんじゃね?」
「そうかも、……」
一週間ばかり前の数字を思い浮かべて、比較する。さすがに、ありえない。
まさか、肉をそぎ落としたわけでもないのに。
*
さかのぼって、夕方。
「……ちょっと、舐めすぎたかなぁ」
保健室のドアを、からりと閉めて。
赤い髪留めをした、背の低い少女が、ちょっと眉をひそめてつぶやいた。
白い舌を出して、はぁっと、バニラの香りをするため息をついて。
(アイスクリーム 了)




